第2話『B247』
手早く自己紹介しようか。
俺はシロネズミ、名前はB247。カールって人間の男がそう名付けた。
突然だけど、俺には前世の記憶がある。
人間の言葉が分かるなら前世は人間かって?
残念だけど違う。俺の前世はネズミだ。前世もそのまた前世も俺はずっとネズミだった。しかも同じ研究室で生まれ同じ餌を貰って大人になった。
研究室の外の人間が見たら、俺と前世とそのまた前世、さらにもっと前まで遡っても同一の個体だと勘違いするんじゃないかな。
まあ、その勘違いはある意味で正しい。同じ環境で育ち、同じ見た目をしていて記憶までそっくりなんだ。
見分ける方が難しいだろう。俺だって自分が誰だか分からなくなる時がある。
そして俺は床に置かれた大きなチェス盤に見覚えがある。もちろん前世の記憶でだ。
あれは楽しいゲームをするためのものじゃない。俺を処刑するデスゲームの舞台だ。
悲しいことに、俺の前世は何度もあのチェス盤で死んでいる。俺も同じ運命を辿ることだろう。
だが希望が全く無いわけではない。前世はその前世より2マスも多く進んだし、その前はなんと3マス増えた。
俺はそれより多く進める自信がある。ゲームをクリアするまではいかないとしても、最低1マスは前世より多く進んでみせる。
どんなに小さくても進歩は進歩だからな。
カールの手が伸びて俺はスタート地点に置かれた。
ずうっと前の前世は仕組みが分からずスタート地点で適当に足を踏み出してあっさり死んでしまったが、記憶が蓄積された俺にとっては慣れたもんだ。
前世の記憶によれば、右に4つ進むといいらしい。
その次は左右どっちもトラップは仕掛けられていないけど、左は行き止まりだ。俺のいくつもの前世の記憶がそう告げている。正解は右に3つ。
それから俺は順調にチェス盤を進んでいった。
――さて、次は4つ進んで左だな。
デスゲームとはいえこの辺りは前世で攻略済みだ。命の危険はまだ無い。足を踏み外しさえしなければ。
その時――
うぎゃああああああああ!!!
俺の体に電流が走った。
俺は自分の身に起きたことが信じられなかった。
何故だ、この足場にはトラップは無いはず…まさか新手のトラップか!?
そんなの、前世の記憶には無かった――
俺は大した成果も残せずあっさり死んだ。
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