去年の君にさよならを
けいくん! けいくん!」 「あっ、ごめんぼーっとしてた笑」
「もー何ぼーっとしてんのこれから楽しい楽しい遊園地デートだよ?」
「うんそうだな!」 「早く行こ!」
僕の名前は渡辺啓介何か特徴があるわけでもない高校一年生だけど彼女のことが大好きな男だ!
昨日の夜は今日の遊園地デートが楽しみすぎて寝不足だ
彼女の名は、絵里、賢くて可愛い俺の彼女。
彼女とは幼稚園から一緒で中学生の頃に付き合った。彼女はしっかりものでみんなから頼られている。
成績優秀、スポーツ万能、そして何よりかわいいときた
そんな子が特に顔がかっこいいわけでもない俺と付き合ってくれているだけで幸せだ。
昔、なんで俺なんかと付き合ってくれたの?と質問したら、
またそんなこと言って!けいくんはかっこいいよ?と言ってくれた。
具体的に教えてと言うと調子乗るから嫌と言われた
そんな可愛い彼女と夏休み遊園地に向かう途中事故は起きた。
「はっ!」
「またこの夢か・・・」
あの日俺の人生は終わった。
彼女は信号無視をしたトラックに轢かれて死んだ。
本当なら彼女は死なないはずだった。
彼女は俺を助けるために俺を押して身代わりになったのだ。
あの時の光景が今でも鮮明に記憶にある。彼女は俺を押した後悲しそうな顔で笑った。
それと同時にさよならと言った気がした。
その後のことはよく覚えていない。気づいたら自分の部屋にいた。
それからの俺は親に学校はしばらく休みなさいと言われ、そうした。
いくら時間が経っても彼女を犠牲に生きている自分が許せなかった。
自殺も考えた。でも、それは俺を助けてくれた彼女の行動を無駄にする行為だと
思いできなかった。
俺は今後まともに生活できるだろうか・・・
そのぐらい俺には絵里が大切な存在だった。絵里がいないのに生きてなにがあるのだろう
そんなことをずっと考えていた。
そんなことを考えているうちに数日が経ち担任の先生が来た。
「彼女の分までお前が生きるんだ。絵里だってきっとそれを望んでる。」
そう言われ俺は絵里が助けてくれたこの命を無駄にしないと心に決めた。
学校へ行くとみんな事故のことを知っているのだろう優しく接してくれた。
でもその優しさが辛かった。絵里がいればみんなと遊園地の話をしたかった。
夏休みの出来事をみんなで話したかった。
そう思うとどうしても心から笑えなかった。作り笑いしかできなかった。
もう絵里はここにはいない、もう会えない。
その後も心から笑えることができなく、次第に人と距離を置くようにもなっていった。
何ヶ月か経つとクラスの友達も俺から距離を置くようになっていった。
何かをするわけでもなくただ生きるだけの人生。きっと俺はこのまま死んでいくのだろう
絵里は許してくれるだろうか、でも俺も早く絵里の所へ行きたい。
もっと絵里と楽しいことをいっぱいしたかった、もっとありがとうを伝えたかった
そんな後悔だけが何ヶ月も続いた。
いつしか俺は高校2年生になって仲のいい後輩が入学してきた。
中学で同じバスケ部だった東條ももかだ。
この子は絵里とも仲が良かった気軽に話せる後輩だ。
入学早々彼女は俺の所へ来た「お久しぶりです先輩!」
「ももかかお前もこの学校に来たんだな」「そうなんですよ!これからまたよろしくお願いします!」
「なんか元気なくないですか?」「あぁお前は知らないよな・・・」「何の話ですか?」
「実は絵里が死んだんだ」「えっ?冗談ですよね?」
「こんな冗談言うわけないだろ」ももかに事故のことを説明すると
またあの事故が記憶に蘇る。
「先輩そんな顔して、まさかまだ引きずってるんですか?」
「俺の彼女だぞ忘れれるわけないだろ!」「何怒ってんですか!絵里先輩のためにも過去を引きずってないで前に進
べきなんじゃないんですか!」ももかが涙を堪えながら悔しそうに俺を怒った。
「そんなこと分かってるよ!でも・・・仕方ないじゃないか」
「絵里の分まで前を向いて頑張ろうとしたよだけど・・・どうしても絵里がいたらもっと楽しいだろうとか
頭に浮かんでその度に辛いんだ。せめてさよならの一言が言えたらよかった。」
「そうですか、この時のためにあるのかもしれませんね。」「何の話だよ」「放課後話したいことがあるので私の家に来てください。」
真剣な表情でももかはそう言う。「わ、分かったよ」ももかの真剣な表情を見てそう答えた
〜〜放課後〜〜
放課後ももかに連れられて家に行く
「どうぞ入ってください。お茶とってくるので部屋で待っててください。」
そう言われ部屋で待っていると小さくて不思議な機械が置いてあった。
「何だこれ」こんな機械見たことない。
「お待たせしました。今日呼んだ理由がこの機械のことです。」
「何なんだこの機械は」「これは過去戻ることができる機械ですです」
「過去に戻る?そんなことできるわけないだろ。」「実際にやってみた方が早いですね。」
そう言われると小さい機械を頭につけられた。
「これから今日学校で先輩に会ったときに時間を戻します。」真剣な表情で言うからもしかして
本当に過去に戻るのか、半信半疑の気持ちで頷いた。
「10分にタイマーをかけるので10分経ったら自動的に戻ります。」そう言ってボタンを押す。
「先輩?先輩ってば!」
「はっ!」
「久しぶりに会ったのに何ぼーっとしてるんですか?」
「あっあぁ・・・ごめん」
どうやら本当に過去に戻ってきたようだ。さっきまでももかの家にいたはずなのに
気づいたら学校にいた。ももかのやつすごい機械持ってるな・・・
「で、絵里先輩はどこですか?ずっと会いたかったんですよ!」
「あっあぁ・・・絵里は・・・」また一から説明していると。
「はっ!」
「お帰りなさい先輩。どうでした本当に戻れたでしょ?」どうやら目の前のももかは
現在のももかのようだ。
「おまえすごいなこんな機械どうしたんだ?」「作りました。」
「お前機械とか作れたんだな、でもこれさえあれば絵里を救えるかもしれない」
「ただ一つ欠点があります。」「欠点?」
「はい、実は過去にはいけても過去を変えることはできないんです。」
「それじゃあ絵里を助けることはできないのか?」
「はい、でも過去を乗り越えることはできます。」
「どう言うことだ?」「最高一時間しか設定できないので時間内に絵里先輩に
さよならと言ってきてください。」
ももかは俺の過去を乗り越えさせようとしてくれたのか。
「わかった、ありがとう。」そう言うとももかが一年前の事故の日に設定してくれた。
「いってくる。」そう言って過去に戻ろうとしたときももかが泣いているように見えた。
「けいくん・・・けいくんってば!」聞き覚えのある俺を呼ぶ声が聞こえる
心地いいのになぜか涙が溢れてくる。
「絵里・・・」「そうだよ、絵里だよ?」俺は泣きながら絵里を抱きしめた。
「絵里!絵里!」「急にどうしたのけいくん!」
「ごめんな!本当にごめんな!」「ちょっとほんとにどうしたの!?」
俺を助けてくれたこと、もっと絵里を大事にしていたらと謝った。
「ちゃんと後で説明してよ?」と言いながら絵里はやさしく抱きしめてくれた。
だんだん落ち着いてきてももかが作った機械で未来から来たこと、過去は変えれないこと、
このあと絵里が俺を助けて死んでしまうことを話した。
「そっか未来からね・・・」「信じるの?」「一度でもけいくんを疑ったことある?」
確かに絵里はいつもそうだった、そんな優しさに何度救われたことか。
「私もう少しで死んじゃうんだね・・・」そう言う絵里は泣かなかった
これから自分が死んでしまうが分かっているのになぜ泣かないんだろう。
「でもいいの!けいくんが生きているなら私はけいくんを助けるよ
たとえ自分の命と引き換えになったとしても。」
「ごめん・・・。」「そう言う時はありがとうだよ!」
「でも、絵里は俺を助けなければ生きれたんだよ?」
「まぁ、けいくんと一緒に歳をとって生きていきたかったけど
でもけいくんを助けれるならいいんだ。
私ね、けいくんにたくさん助けられたからずっと私がけいくんを助けたかったの。」
「俺は何もしてないよ助けられていたのは俺の方だよ。
絵里はバイトでミスをして落ち込んでいたら次はミスをしないように頑張ろうと励ましてくれた。
学校のテストが近い時は自分の勉強をしないで俺に教えてくれた。
特に何もなかった日でも絵里が笑わせて楽しい1日にしてくれた。」
思い返せば返すほど絵里にどれだけ助けられていたかがよくわかる。
「そうなんだ私けいくんの助けになれてたんだ。」嬉しそうに絵里は涙を流した。
「でもね、これだけは知っていてほしい。けいくんは中学校の時友達ができなかった
私に話しかけてくれたんだよ。」
「そんなことかよ」「そんなことじゃないよ、けいくんが話しかけてくれなかったら
ずっと一人だったと思う。」
確かにはじめて話した時は一人で本を読んでいて雰囲気も今とは全然違った。
「私はね、けいくんとずっと一緒にいたいから自分を変えてけいくんに
相応しい人になろうと頑張れたんだよ
その努力もあって今はこうして付き合ってる、まぁもう死んじゃうみたいだけど。」
「そうだったんだな。」俺に相応しい人になろうなんて思ってたのは知らなかった
俺が絵里に相応しい人になろうと考えていた時絵里は同じことを思っていたのか。
「ねぇけいくん、まだ聞いてなかったけど、どうして過去を変えることは
できないのに過去にきたの?」
「俺は絵里の死を乗り越えることができなくてずっと一人でいたり笑えなくなっていた
そんなときももかが過去を乗り越えるために
過去の君とも一度会ってさよならを言ってこいって言ってくれたんだ。
だからさよならを言いに来た。」
「そっか、私はけいくんとお別れするのは悲しいけど区切りをつけなきゃね。」
優しい目で俺を見ながら絵里はそう言った。
「最後にけいくん、わたしのお願いを聞いてくれる?」
「もちろん、俺にできることなら何でも言ってくれ!」
「ありがと、私のお願いはね、私を忘て自分の人生を生きてほしい。」「えっ?」
「けいくんは優しいから約束しないと私が望んでるとか言って自分のために
生きようなんて思ってなかったんじゃない?」
「・・・」「やっぱりね」そう言って絵里は笑った。
「そう思ってくれるのは嬉しいけど私のせいでけいくんの人生を無駄にさせるのは嫌なんだ。
だからさ、約束して?」絵里はそう言って小指をこちらに向けた。
「嫌だ・・・」「えっ?」「嫌だ!」「俺は絶対に絵里を忘れたりしない!」
絵里は自分を忘れてと言ったでも、俺はこんなにも大好きな絵里を忘れたくはない
忘れれるとも思わない。忘れることを過去を乗り越えるとは言わない。
絵里の頼みを断ったことなんて一度もなかったでも、忘れるのは絶対に嫌だった。
「けいくん・・・」
「俺が絵里のことを忘れたら楽しかった思い出も全部消える、そんなのは嫌だ!
だから俺決めた・・・
いつか俺も死んだ時、絵里との思い出とこれからの俺の人生頑張って楽しかったことをこんな事あったんだぜって話すからさ、それまで信じて待っていてくれよ。何日経っても終わらない
ぐらいすごい話持っていくから、またいつもみたいに聞いてよ。」
俺は、絵里との思い出を大切にしながら次に会える時までに自分の人生をたくさん頑張って
面白い話をいっぱい持っていこう、そう決めた。
「うん、待ってるね」そう言って絵里は嬉しそうに泣いた
もうすぐ事故が起きる時間になる。お別れの時間だ。
「絵里大好きだよ。」「私もけいくんのことが大好き。」
これから絵里は俺を助けるためにしんでしまう。俺は絵里に助けてもらう命を大切にし、絵里の分まで思い出を作り、また絵里に会う。
「そろそろけいくんを助ける時間だから。」
「あぁそうだな。」
「うん。」
「俺を助けてくれえてありがとう。」
「うん、楽しい話待ってる。」
「「またね」」
未来人 @vantan6
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます