第51話 友達
「『ミユキィィィッ‼』」
そこまでは同じだったが。
その後の行動は逆だった。
「撤退!」
隊長代理の
『よくもォ‼』
対して
「なにやってる、カズト‼」
自機を海面スレスレで低空飛行させながら背後を振りむき、
なぜなら〝この戦いでは5機中2機までやられたら撤退する〟と事前に伝えてあったのだから。そうなったら戦況にかかわらず各機ただちに退避行動に移れと。
だから、もう潮時なのだ。
5機中2機とは全体の4割。それだけの損失を出せば軍事的には──全てが滅びたわけではなくとも──全滅と表現される。
戦闘の続行は自滅行為。
敵の損失はそれ以上で、戦えば勝てる場合もあるだろう。だが本当にそうなるか知れたものではない。勝てると思って続けたら敵にだけ増援が来て負けたりしたら洒落にならない。
そんな危険は冒さず、あらかじめ決めておいたタイミングで迷わず撤退して、残った3機は確実に生還する。そう言いふくめたのに──
『ワリィ、フヒト‼』
「カズト‼」
『先に行っててくれ! すぐ追いつく‼』
「カズ──ええい!」
現在の最優先事項は最低1機でも生還すること。そして自分がこのまま母艦に帰投すれば、その条件は確実にクリアできる。
だが自分が
だから、戻らない。
この判断は正しい。
軍事的には……だが、それが〝命惜しさに戦友を見殺しにする言いわけ〟に思えて、それへの反感から機首を返しそうになる衝動を、
『……モチ、
「ッ、サ──
サナト──と
撃墜された〘
その
『
「想像のとおりだ。撃墜され、
『あ、ああ……!』
「そして、わたしは即時撤退したが、
『~ッ‼ ……承知、した!』
隣を見ると、巡航形態では露出した互いの機体のキャノピーごしに、
「
『……うむ、操縦席の後ろに』
「そうか、よかっ──」
『……だが、死んでいる』
「な⁉」
『脱出ポッドが落ちた先で地域住民からの私刑を受けていて、救出したが、もう手遅れだった。報復を頼まれ、手前がそれを叶えたのを見届けたあと……事切れた』
「そう、か……っぐ、ああああああ‼」
『
もう押さえられなかった。
泣きわめいた。
「わたしのせいだ!
『
「そこを押して、マミヤの許に全員で駆けつけるよう命令すべきだったんだ! そうすればマミヤも、ミユキも! 死ぬことはなかった‼」
『フヒト……』
「すまない、マミヤ、ミユキ‼ 死ぬな、カズト……!」
¶
「先に行っててくれ! すぐ追いつく‼」
だからもう、この空飛ぶ双胴船の敵艦を倒して安全を確保してからでないと撤退できない。なに、それなら、そうすればいいだけの話だ。
ガガガガガッ‼
ビィィィィッ‼
「でなきゃアイツだって!」
「やられたりしてねぇ‼」
そして充分に引きつけてから、敵艦が空中に浮くための主翼の役目を果たしているであろう、2つの船体を繋ぐ橋の部分へと、肩に担いだ
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