第2話 カイラズ国

 神鉄の鎖を断ち斬る作業は驚くほど手早く実行され、神像殿を繋いでいた両の鎖を断ち斬ることができていた。


 神像殿は、従者級の鎖も斬ってくれると助かるというのでそれも断ちにいって問題なく断ち斬ることができた。


 ギルディアス国から輸送用のノンNスタンダードSフライングFパワーPトランスポーターT(以下NS-FPTと略す)(NS-FPTとは全長二千メートル以上の長大さを誇る規格外の空中機動艦船である)が来るのはどうやら一日後らしい。


 可及的速やかに、魔導転移して来るそうである。


 それまで私たちは暇になるわけでは無かった、情報をロック様に伝えて、その采配で動くのである。


 ロック様は情報収集で出来るところから始めよう、とおっしゃった。


 私はまず、カイラズ国そのもののデータを入手しようと考えた。


 ギルディアスまとめのデータバンクから、分かっている情報を引っこ抜き始めた。


 カイラズ国、元イカルディア連合共和国に属していた小規模国家である。


 二九〇四〇年時点でのM・Mの総機数は一千五百五機を示している。


 最新情報である、ただ小規模国家とはいえ国境線を三国に接しているので国境線のほうもおろそかにできないはずである。


 国境線は北西側をサメルティア国と隣接し、南西側をバンホール国と隣接させており、南東側をサイセィス国に隣接されている。


 唯一、北東側だけが大きく危険地帯に接しており国境線の外側に危険地域が広がっている。


 危険地帯、危険区域、危険地域とは、読んで字のごとく物凄く危険でどうしようもない地帯のことを指し示すものである。


 大雑把にいったが、その三つはどれも同じ意味で要するに危険な場所や危険な生物がすんでいることからそのように呼ばれる。


 またそれが大国の間に緩衝地帯として広がっているところもあるので、国同士のいざこざは少ないが小規模国家群は別であるとされる。


 小規模国家群はたがいに隣接し合う性質があるため、どうしても緩衝帯を置かないことが多い。


 カイラズ国はカイラスリーを首都として持ち、そこに五百機のM・Mが集結しているという情報もある。


 諜報ギルドの情報網なので、ほとんど合っていると思われる。


 現在の私たちの戦力は凡そ二百機、だが各国ので分けるとスクーデリア皇国百二十八機、叢雲国五機、ギルディアス国六十七機となっている。


 基本戦力のクラスはB+級が要で、A級以上に分布する。


 カイラズ国の主戦力はC級との報告であるが、侮れない戦力であるといえる。


 それにA級やS級が隠れていないとはいえないのだ、X級以上はいないと思えたとしても油断は禁物である。


 さらに数だけは測れても、搭乗員の練度までは分からないからである。


 後はギルディアス国が観測した地形データなどの詳細データの裏合わせであるが、こればかりは偵察機を飛ばさないとはっきりした情報は取れないのであるのだった。


 地形データは二九〇三五年のものであるため、ここ五年で変わっているところもあるかもしれないからである。


 又、地形データは荒い目で、細かなデータを取ろうとするとやはり偵察機が必要になるのである。


 諜報ギルド部門から上がってきているデータでは首都カイラスリーから西側にあるゼムハ市に百機、南方の山岳地帯を迂回してさらに南にあるカイゼル市に百機と首都の近傍に数多いM・Mが配置されていることがうかがえる。


 ただし、内首都配備の二百機ほどはペテラネグロ鉱脈でグランシスディア連邦共和国と戦の真っ最中だそうであるので、実質戦力は首都に三百機程といえるかもしれない。


 そしてキワダ市が中立宣言をした上に、グラーシェンカの旅団と鷲の団と剣聖候補生を要する部隊を市内に入れているがゆえに首都北西の要衝を抑えられてしまっている状態になっている。


 このため北西にも、部隊を割かねばならないものと思われる。


 今私たちがいるのは危険地域ではあるがキワダ市に比較的近い遺跡にいる、とはいっても浮遊推進型陸上艇フローティングパワートロリーを使っても一日半かかる場所にいるわけだが。


 飛行艦艇フライングパワートランスポーターで動けば、数十分といった場所であるのは間違いないのだ。


 それもそのはず、飛行艦艇は標準型スタンダードタイプを使用した場合、マッハ五十くらいの推進速度があるのだから。


 浮遊推進型陸上艇は様々な要因から、時速三百キロメートル程度が最大速度であるといわれる。


 地上スレスレを走ることから対地高度の限界、空圧の限界そして周囲を巻き込むことへの注意を怠ってはいけないという制約が付くからである。


 その点飛行艦艇では空中衝突を防ぐための高度分けなどの住みわけがなされているため、基本的に空中衝突は起きないとされる。


 また軍用機は高度な連携を可能とする能力が備わっているため、基本的に無事故であるといわれる。


 完全手動マニュアル操作時のみ危険だといわれるが、それでもよっぽどよそ見をしていないと接触事故すら起きないといわれるわけだ。

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