第六部 『タランチュラ殲滅』編 国に巣食う

第一章 情報収集

第1話 通達

 イカルディア連合共和国としては収拾がついていなかった。


 連合共和国の一国家であるカイラズ国が暴走し、ギルドの部隊と睨み合っているのだから。


 しかも隣国に該当するグランシスディア連邦共和国ともすでに交戦を引き起こし、対立しているのであるから。


 共和国の音頭を取るはずのワイブスュート国、サメルティア国はお互いに戦闘を放棄するように、カイラズ国に働きかけたが跳ねつけられ途方に暮れていたのであった。


 その内情を、ギルドの諜報部隊が素っ破抜いたのである。


 そして、ギルド側からの打診を通達したのである。


 その打診とはイカルディア連合共和国から、カイラズ国を外し連合に組み入れさせないことが条件として盛りつけられたのだった。


 当然最初はその要求を跳ねのけたものの、事態を重く見た連合共和国会議からカイラズ国を外す話が当然採択されてカイラズ国の大使以外が多数決で圧倒的多数でカイラズ国を外すという採択を取ったのであった。


 よって、カイラズ国の大使は「覚えて置けよ、必ず後悔させてやる!」と毒を吐くようにして、会議場から立ち去ったのであった。


 この採択はギルドことギルディアスにも送信されていたため、イカルディア連合共和国には干渉しないというギルドの誓約があったのである。


 これによってイカルディア連合国家は安泰のように思われたが、カイラズ国の手のものによると思われるテロが各地で発生して一部の国は内戦状態にまで崩壊していったのであった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 一方その頃、キワダ市の市長は迷っていた。


 カイラズ国国家元首としての立場は分かるが、ギルディアスとの関係を崩すのは今は難しいと。


 キワダ市だけがカイラズ国国内で離反勢力とみられるのは不味いが、いままここで手の平を返すと前からも後ろからもグサリとヤラレル可能性がテキメンにあった。


 よってキワダ市がとった行動は完全中立を保ち、ギルディアスと組むことにしたのである。


 カイラズ国から危険視はされているが、旅団規模の軍隊を前に一旦白旗を上げたという呈を取ったのであった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ふと私は、時間を確認した。


 物思いにふけっている間に、どれほどの時間が過ぎたか確認するためである。


 まだ私たちは、遺跡の前に陣取っている。


 遺跡内でロック様が交渉されている最中なのだ、安全を期すために神像殿ごとギルディアスに預かれないか対話しているらしい。


 それが成功すればまたとない機会になるし、私たちも遺跡から離れられるのだ。


 遺跡攻防戦の後、敵本陣を叩いてその戻りで今遺跡にいるわけだ。


 お兄様とグラーシェンカ殿の旅団はワシの団と共に、先にキワダ市に戻って要衝を抑えている状況なのだ。


 それ以外の部隊が、遺跡の前に陣取っている状態なのだ。


 陣取っている部隊は、スクーデリア皇国旗下三隻、叢雲国一隻、ギルディアス国四隻と師団規模まで勢力が膨れ上がっているのだ。


 今のところの所属はギルディアスに招請されている身なので、国の識別はあるもののギルディアス国八隻といえなくもないが。


 M・M数も、優に二百を数えている。


 一戦闘集団として見ても、つわものどもが揃っている状態であったのだ。


 ただ、ロック様がいない間にギルディアスからもたらされた情報もすごいものが並んでいた。


 まず、カイラズ国をイカルディア連合共和国の会議の採択でカイラズ国を連合共和国から締め出したこと。


 第二に、カイラズ国内のキワダ市が離反して、ギルディアス側についたこと。


 第三に、イカルディア連合共和国内部に潜んでいたカイラズ国の手先が、連合共和国の各国をテロの標的にして暴れまわっている事である。


 キワダ市には剣聖候補生のお兄様も居るので、戦力的には問題ないであろうことは分かっている。


 ロック様が引き上げて来るのを確認できた、周辺警戒は厳になっている。


 交渉成立を示すサインを上げられたので、私たちは安堵することができた。


 神像殿はギルディアス国に運ばれることを、良しとしたらしい。


 ただ神鉄の鎖が邪魔をしているそうなので、それをM・Mで叩き切って欲しいという旨の返答を得られたようだった。


 各機の武器で対応できそうなのは、エクレールの姫機の持つ銘入りの太刀と、私のファランクスFXの持つヒヒイロカネ製の新たな剣であるらしい。


 エクレールの叢雲むらくもと私のファランクスFXで行くことになり、途中まで交渉人のロック様を運ぶことになった。


 ファランクスFXの手の中に乗っていただき、揺らさないように綺麗に運んで行き神鉄の鎖がどんなものかロック様の目で確認してから断ち切ることになった。


 神鉄、神の力で織られた鉄との異名だが、遺跡が造られた際にそのようなものがあったのか疑わしいかららしかった。


 ロック様が実際に見てみると、鉄ではないが斬れぬものでもなさそうだという判断になった。

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