第3話 戦術情報

 別に私たちは、カイラズ国という国を滅ぼしたいわけでは無い。


 これは、先にいっておかなければならない。


 国に巣食う蟲である、タランチュラという猛毒を除去したいだけなのだ。


 国そのものの戦術情報を引っこ抜いてはいるが、だからといって国を滅ぼしたいわけでは無いのだ。


 本当のところは戦術的に牽制している横をすり抜けて、国に入ってもらいタランチュラだけを抹殺できればそれでいいのだ。


 だがそうは問屋が卸してくれない、だから戦うのだが見ている前だけ戦って気持ち引き付けて置ければそれでいいのだ。


 難しい話だが、そうする他に手はないと思われる。


 だが潜入工作員は厳選せねばならないし、目立つ奴が潜入するわけにもいかない。


 そういう意味で私やエクレールは向かないのだ、目立つのだ。


 ただ首都潜入する手前、首都の目の前で派手に戦闘を行う必要が出てくる。


 そういったところに、私は配置されるのが好ましいと思ってはいるわけではあるが。


 私が出るとなれば、近衛や王宮警護隊の皆はついてきてしまうであろう。


 そこは、避けられそうになかった。


 潜入するのは多分ロック様旗下のギルドナイツの部隊であろうと思われた。


 私ができることは戦略偵察という情報収集や、目立つ場所での立ち回りが主であろう。


 国境沿いに展開し、相手が危険地域に出て来たら順に叩いて行く作業になると思われた。


 それでタランチュラの遊撃隊でも罠に掛かれば、しっかりと叩き潰す。


 これが得策のように、思えた。


 むしろカイラズ国のC級機体クロッティアラントが罠にかかるようなら、中破させて機体を後退させてやるくらいでいいと思われるのだ。


 むしろ後退して交代し出て来るようなら、それを繰り返すことで戦闘への疲弊が見られればいいわけではあるのだ。


 タランチュラの遊撃隊と思しき機体は情報が出ているだけでも、二機種ユーレイとシリョウのみであるからして。


 ユーレイは私が相手をしないと厳しかろうと思われた、一応B級に該当する機体であるからだ。


 シリョウのほうはCからD級とのことなので、サイファードで相手ができると思われた。


 ユーレイもシリョウも、外観の一部のみしか判明していない。


 しかも半身のみの情報であるため、全てを鵜呑うのみにすることはできないが貴重な情報だけにそこから推察する他なかったといえた。


 ガワで判断することができるのは、私がM・Mデザイナーであるからだ。


 内側は捕えて見るしかない、そこから判明するものもあるだろう程度には考えていた。


 少し見積もりの甘かった面もあったのだと思う、だが戦場ではその誤差でも変わってくるものなのだ。


 そしてもう一つ、派手に暴れるのと共にそれを継続戦闘しなければならないこと。


 コレも、重要な要素だった。


 それは何故か、継続戦闘させることで首都の警備状況を減らそうとする目的もあるのである。


 警備とM・M戦闘では、違うのではないか? と思われる方もおられるかもしれないが、M・Mを警備に駆り出せなくすることも陽動任務の要でもあるのだ。


 議会議事堂や主要な建物に回る警備M・Mといった不安要素も、私たち陽動部隊は取り除かなければならないのである。


 カイラズ国が大統領制度の国であるからして、必要なのは議員への賄賂わいろの情報や贈賄ぞうわいの情報、それを基にした情報の精査をやって初めて誰が黒幕か炙り出せるのだ。


 それをできるのが潜入ミッションへ行くものたちであり、それを支援する部隊が私たちのような派手なものたちであるのだ。


 その辺りは私にはお任せすることしかできないが、吉報を待ちながら戦をするとしよう。


 そのようにしか、思えなかった。


 私自らが、暗殺だの謀略だの潜入だのをするわけにはいかないのだ。


 仮にできるとしても、やって見せてはいけないものというものもある。


 私は姫であるのだ、国際的には。


 姫機を駆って戦場に赴く、そこまではいいそこから先はできれば傷つかないことそして派手に立ち回って国民を沸かせること。


 それが目的になるのだ、都合私が動く際にはカメラが回っていることが多い。


 それが宣伝になるからだ、皇家にとっても斑鳩国にとっても。


 だから倒れることは許されない、そういう意味での手助けはあまりない。


 後は侵略者にならないことも、一つ重要な条件であろう。

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