第15話 大規模改良

 姫機ひめきファランクスFXの成功を見て気をよくした私は、次なる目標に手を付けた。


 旗機はたきサイファードの、改良である。


 旗機サイファードはライガーフレームSを使用している、B+級標準型標準級のバランスがとれたいい機体である。


 ただ惜しむらくば、そのバランスの良さが非凡に見せてしまっている機体なのだ。


 旗機としては、少々頼りない感じがするのである。


 王宮警護機としては若干どころか、防御性能に不備があるようにいわれてしまっている。


 この二つの問題を解決すべく、私はサイファードの改造に乗り出したのだ。


 私は根本的に発想の違う二つの要項への適応をあきらめ、二種の機体を作り上げることにしたのである。


 発想の違う二つの要項とは何か、それは旗機として攻撃力が必要な機体と王宮警護機という防御力が重視される機体への全適応をあきらめたのである。


 この相反する二つの要求がより一層サイファードを非凡にしていっているということである。


 よって私がとった方策は同じライガーフレームでも攻撃性に富んだⅮ型を旗機に採用したのである。


 これにより多くの現在稼働中の旗機が整備場に殺到したが、仕方がない事態であった。


 ただこの改良により旗機としての性能は、前の汎用型のS型フレームの時よりも二十五%もアップしたのである。


 逆に王宮警護機のほうにはD型やS型ではなくN型を採用し防御性能を大幅に向上させたのであった。


 一見するとただフレームを切り替えただけに思えるかもしれないが実際にはフレーム上の各機材やモーションデーターなどとの整合性を取って最適化した結果であるのだ。


 一般的にすでにある機体のフレームそのものを変えることは、大規模改良であってもそこまですることは無い。


 だが私は一計を案じ非凡である現在の形よりも、確実に上を目指せる機体を作ることを念頭に置いて小規模改良ではなく大規模な改造を行ったのであった。


 後はモーションデーターの改造や、機材そのものの性能向上などを行った結果である。


 それ以前に各位の協力あっての物種であったということの表れでもあり、いかに人望があったかを物語る一大改革であったのだ。


 人望なくしてこの計画は成功しなかったであろう、そう思えるのだ。


 アストライア姫の人望に感謝せねばなるまい、そしてこの秘密を一生抱えて生きることになるそれにも精進せねばならないのだ。


 学業のほうも様々な分野を広く有効に学習することができるのも、エクレールの家の特殊性からくるものであったので有効活用させてもらっているのであったりする。


 デザイナーとして公務で腕を振るうのも悪くはない、と考えていたころそれは起こった。


 唐突に起こったため、前情報も何もなしに戦に駆り出されることになったのだ。


 以前は微量ながらも噂話やそれに類する情報として前情報があったのだが流石に真南の国が興したことであるので国境線の警備や帰ってきたM・M魔動機の整備などに追われたのであった。


 とはいえ整備ばかりやっているわけにもいかない、私も国境線突破を試みる敵M・Mに対して戦の構えを取った。


 南の国は腹斑ハラマダラ家である、斑の紋を持つその国はそんなに嘆き悲しむような序列でも格でもなかったはずである。


 突如として本家に反旗を翻し戦いを挑んだのだ、本家までの距離よりも御三家であるスクーデリア皇国のほうが近いので直接の討伐命令を受けたのである。


 そして叢雲家や腹斑家の周辺国家にも、討伐命令が下ったのである。


 反旗を翻したのが腹斑家一国であるため、そのような判断になったものと思われた。


 流石に国力がそこそこある腹斑家とはいえ家の序列は百家、格はH格であるためスクーデリア皇国と比肩することにはならない。


 スクーデリア皇国の序列は御三家、格はAである。


 負けてはならない戦いを背負わされた、というのが正しかろう。

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