第12話 味方陣地

 私が目覚めた時には、ほぼ戦いの勝ち負けが決まっていた、後は残敵掃討といったところだった、私が話せるようになったころには、その残敵掃討の任もどこの部隊がやるかといったことが決められていたのであった。


 そして私の部屋に客人が訪れた、総大将だと名乗り神楽耶かぐや長政ながまさと名乗った偉丈夫だった。


 アリーシャが少し席を外した、つやのある黒い髪に黒い瞳、私の年からすれば父かそれに類する年よりも少し若い位であろう。


 長政様は、『人の配置と陣の配置を合わせられず、すまなかった』、と私に対して謝ったのであった。


 それに私が答えた「将を補佐すべきものが足りず、起こってしまった事態に申し訳なく思います」と。


『アイツは私の従兄弟にあたるモノだったのだが、私の配慮が足りなかった。前線に置くべきでは無かったのだ、そして補佐は通常二人以上で年の若いものがするものでは無いのだ。そこのところの、人の配置はすまなかった』と拳を下に握り込んでおられたのだった。


『御三家の姫に対して申し訳ない、無礼を働いた。私が罰せられても文句はない私は百家の出、どうか部下には寛大な処置を願う』といわれ土下座までされたのであった。


 要するに嘆願である。


「私が率いていたのが、義勇兵のみなでなかったので私自身はほっとしております。義勇兵であれば、皆を巻き込んでしまっていたところ。事実、私が命を預かった者たちは、誰一人戻ることができず、言霊を伝えたくともできないモノになっているかもしれませぬ。無礼はこの際置いておきましょう、かのものの配下は真面な者たちでした。かの者たちの部下に、塚を造ってやってくれませんか?」と私の気持ちを素直に述べた。


『それでよろしいのですか、私はあなた様を危険にさらしたもの。斑鳩国王家の采配に、任せてもおかしくない事態です』と事態を重く見て考えておられたのである。


「確かに今回の配置の甘さは詰められるべきことかもしれませんが、それは私の役目ではございません。私はせめて供養塔を立ててもらえればいいのです、わが命欲しさに情報を売ってそのまま斬り倒されたものでは無く、その部下に居た真面な者たちのために。私の甘さかもしれませんが、申し立てるところが違いますよ、私に申し立てても私は権力を振るえません。しかるべきところにお伺いを立ててください」と静かに伝えたのであった。


 事実、私に訴えても嘆願書は出せてもそれ以上のことはできないのである。


「貴方の部下に非は無かったと、斑鳩王家に嘆願書を出しておきましょう」という通達をする。


『それでどうか、お願いつかまつる』と土下座モードはやはり変わらないのであった。


「アリーシャ書をお願いします、嘆願書を書きましょう」とこの場で書き渡すことにした。


 アリーシャに書のセットを持って来てもらう間に、「書くからには、王家に対して報告をしていただくことになります。そこから先は私では判断が及びませんので、なんとも言えないのですが。それでよろしいですか?」という通達をした。


『それに問題は御座いません』と土下座のまま答える。


「私の機体の状況報告書やその他のデーターをデータパッドにまとめお送りします。そのものの言質や言動や行動まで、すべて王家に抜けますがよろしいですね」と伝えながら、アリーシャに持って来てもらった書のセットで書き出した。


 そして書き終わって、封書に納め封蝋を施した、神楽耶長政の部下には非は無いという旨の嘆願書である。


「私はまだ起きられません、受け取っていただけますか?」と長政様にいった。


『ありがたく頂戴いたします』と受け取り、再度深々と腰がし折れそうなほど深く一礼し戻って行ったのである。




「周辺の部隊の動きをもらえますか?」とアリーシャに言ったデータパッドに経由してもらうのである。


「姫様、今は動くことのできぬ御身、ご自愛くださいませ」といわれたが、データーがデータパッド経由で渡された。


 半身をベッドの上で起こし、各部隊の現状を知る、さすがに無傷の部隊はほとんどいないが幸いながら誰も死んではいない。エクレールの部隊は流石無傷で残っている。


 そしてフォルテに繋いだ、「フォルテは大丈夫ですか?」と聞く、返信が来た『大丈夫です! 私は、なのですが姫様はご無事ですか?』と心配そうに聞かれてしまう。


「半身は起こせるようになりましたが、まだ半身だけですね。体が疲れているようです」と答えた。


 心配してくれているのは分かったのであった、そして無事でもある。


 パートナーを失って辛いのは私たちも同じなのだ、無傷とはいかんまでも無事であってくれればいい、そう思うのであった。

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