第11話 後退撃破

 一応私が突撃位置ということで、納得してもらった。


 エクレールがすぐ後ろに付くという条件だ、だがソレはこちらにとっては問題ない、むしろエクレールでないとタイミングが合わないだろう。


 そう思えた。


 後退する振りをして突っ込む、そういう作戦である。


 逆ブイ字陣形を組んで前進する、フリを見せる。


 そして全機反転し、光速戦闘を開始した。


 一糸乱れぬ光速戦闘である、私はひたすら出てくる敵を薙ぎ払い、叩き潰し踏み潰していった。


 逃れてもすぐ後ろにエクレールが居るので、そのまま斬り裂かれるそういう運命だ、とでもいわんばかりに。


 私はひたすら叩き潰し続けた。


 むろん固まっていれば薙ぎ払った。


 そうして敵陣が切れた。



 そのまま突っ込んでいく、味方陣に食い込んでいる敵機を見つけた、そのまま食い潰していく。


 むしろ我々が突っ込んできたことも分かっていないか、のようにふるまう敵機を見てその敵機の得物をいただいた大剣であったからである。


 自分の刃を納刀し、いただいた刃でさっきよりも早い斬り込みで敵を斬り潰していく。


 敵の大将が見えた、後ろから打ちかかる、我々を見ておびえたような雰囲気があったが問答無用、砕くそして斬り刻む。




 手応えがあった、問答無用で中隊が散って再び気鋭を吐く。


 味方陣に合流したのだ。


 私も振り向いてエクレールと位置を交代し、今度は正面を砕いて行く。


 大剣がソコソコ切れるので、まともな活躍になっている。


 エクレールが白銀に輝く信号弾二発を打ち上げる。


“白亜の神姫”というフレーズが広がる、味方を鼓舞できている。


 そういう感覚が剣にも伝わったのか、さっきよりキレ味は良くなっていた。


 実際には、フォルテのコントロールのおかげでもあるのだ。


 わずかに元の大剣とは形が異なるので、バランス調整やキレ角度なども異なっているのである。


 それを補正していってくれるので、私が自由に斬れているのである。


 それを知ってはいるが、今は身をゆだねるかのように振りのコントロールを任せていく真の切れ味が解放されていく。


 そのまま相手が居なくなるまで、振り続けた。


 さすがに関節類が悲鳴を上げている、そこまでは分かった。


 だが体が、力尽きる寸前だった、エクレール機に支えられるようにデッキポートに機体を横たえる。


 直ぐに整備にかかってもらえた。


 私のスタンダードSタイプTフライングFパワーPトランスポーターT(以下ST-FPTと略す)は来ていなかったので、エクレールの部隊に厄介になった。


「そのまま崩れてもおかしくない」といわれた、私も改めて機体の状況チェックをしていく確かにギリギリで耐えているそんな感じだった。


 綺麗に減ったヒールや重心コントロール用の錘が、それを大分痛ましくさせていた。


 直ぐにウチのST-FPT-スタンダードSタイプT[標準型]が呼ばれて、魔導転移してきた。


 そして整備にかかってもらう間に眺めていると、フォルテに「今は少しお休みください、いつ倒れてもおかしくないのはアストライア姫も同じですよ」と気を張っていることに気付かれてしまうがそういう仲なのだ。


「少し休みます、フォルテも少し休んで……」といってそのまま崩れかけてエクレールに支えられた。


 それを最後に意識は暗転した。


 ST-FPT-STの内部で、自室で目が覚めるまで三時間ほどを要した。


 部屋の中で目覚めた、アリーシャが付いていてくれていた。


 目が覚めても体力はしばし戻らなかった、というかギリギリで戦っていたのだと改めて気づかされた。


 目が覚めてものどが潤いを求め、体には優しくない状態だった様で声が出なかった。


 それに気づいたアリーシャがすぐに水分を用意してくれた、話せるようになるまでにかかった時間は小一時間だった。


「あまり無理はしないでください、御無理を承知で……」とアリーシャが言葉を詰まらせた。


「ありがとう。でもね、みんなのところに行こうとしたら、私しか残らなくて……」と口惜しやという声が聞こえてきそうな気がしたが、そういうものでは無かった。


 こういう時に持ってない、そういう自分が恨めしいのだ、言霊は私には伝えられないと散った皆に祈った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る