第8話 キワダ

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 丁度そのころ、キワダのグラウンドGコントロールC(以下G・Cと略す)は少々慌てていた。


 種別・型式・国籍不明のラージLフライングFパワーPトランスポーターT(以下L-FPTと略す)六隻が今にも、領空空域に侵入しそうな状況にあるのである。


 泣くなといっても、無理な状況であった。


 そのうち五隻から、キワダG・CにキワダのコントロールCタワーT(以下C・Tと略す)に連絡が入る、「補給したいのでキワダに侵入しても良いか?」という連絡だった。


 所属もしっかりしている。


 キワダC・TはキワダG・Cにそのやり取りを伝え、進入許可を出す旨を連絡していた。


 そして、もう一隻の所属も、この時点で判明する。斑鳩イカルガ国、スクーデリア皇国所属、艦名アストライアと。


 キワダG・C内に安堵あんどのため息がれて聞こえた。



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 それから、グラーシェンカ殿の部隊はキワダの町中に繰り出したらしい、という連絡が入ってきた。


 こちらからは特に何もないので、「こちらは特に異常なし」という連絡を返したのみであった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 グラーシェンカは一人、美味いと評判の酒場に入っていった。


 さすがこの時間だけに人は少ないのかバーテンが一人カウンターでグラスを磨いていた。


「何になさいますか?」とバーテン、「旨いものを貰おうか」とグラーシェンカ。


 摘まみと酒を出しながら。


「ここから先は私の独り言なのですがね」とバーテン、「街の片隅に廃城がありましてね。そこに住み着いた傭兵団が居ましてね。街の者が不安がっとるんですわ……、おかげでこの店もこのありさまで……ほかの店も閉まっていたでしょう……誰かなんとかしていただけると助かるのですが……」と呟いた。


「面白い話も聞けたことだ、挨拶あいさつに行ってみようか」と席を立つ。



 廃城、確かに廃城なのだがそこかしこに目張りがされ穴がふさがれ修繕された跡が、目立つそんな廃城ではあった。


 現在は天幕も張られているらしい。


 一人で正門から入っていくと上から声がした。


「どちら様で? まあ女の子が一人で来る場所じゃないですよ?」と上から声が聞こえた。


「グラーシェンカだ、ウチの旅団がキワダに寄ったのでな。挨拶に来た」とグラーシェンカはいった。


「そうですかでは、一番奥の扉の右側がそうですよ」と上から声が聞こえる。


(どうやらグラーシェンカを知らないらしかった)



 奥まで行き右側の扉をノックする。


「何者か?」中から声がする。


「カチューシャ・グラーシェンカだ、ウチの旅団がキワダに立ち寄ったのでな。挨拶に参った」というと少し静かになって、


「どうぞ開いてますよ」と中から声がする。


 中に入るとレースであろうと思われる男たちが、四人ほど居た、「じゃあ団長、邪魔になりそうなのではずしましょうか」といって三人が席を立った。


 各々魔導光剣は下げている、ナイツらしかった。


 団長は一目で優男だった。




「グラーシェンカ殿初めまして、私はケリー・ヴィクソンともうします。我々は鷲の団ワシのだんと言って旗揚げしたところなんですよ。新品で十二機四個小隊分の定数はそろえたんですがね、仕事が無くてね」といいつつ目が泳ぐ。


 グラーシェンカは「新品では経験は付かないぞと」告げた。


「この廃城すらも満足に維持できない有様でして、そんなところに胡散臭うさんくさい連中から仕事は依頼されたんですが、あまりにも胡散臭かったので受けてないんですけどね……」と鼻は効くようだった。



「でも仕事を受けないと、この廃城も維持できなくってですね、先ほどはその話を中核メンバーとしていたところなのです」といってグラーシェンカに回覧板(小さな督促とくそく状が付いた)を見せてくれた。


 つまりこの廃城を管理しているキワダ市からまだ今月分が、払われてないぞ、といった内容の督促状が付いていた。


 グラーシェンカは即答した「戦場があれば来るか?」と、「あるならば行きますとも」と、ケリーも答えた。


 グラーシェンカは続けていった。


「街の者が、お前たちを見て不安に思っているものが、多いようだ。酒盛りでもするか? 街の者とも仲良くなっておくほうが良い」それとこれは預からせてもらおうといって回覧板を持って行った。


「その胡散臭い者たちとの縁は、切って置け」といい残して……。

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