第9話 酒盛りと偵察

 ほどなくしてキワダ市役所で、グラーシェンカが市長に督促状の話をしていた。


 彼らと街の者との間のわだかまりを取ろうという話を、持ち込んだのである。


 つまり酒宴を開こうではないかと、街の広場の使用権を一時得て、酒を用意させるなどの手配やらと、彼らを一旦ウチの旅団で預かるむねの話をしていた。


 鷲の団を一時期のみグラーシェンカの旅団に編入させるということを、市長とも話し税金もグラーシェンカ自らが支払ったのである。


 市長としても問題が、カラッと消えたので町の広場を貸し出しましょうと、直ぐにそういう話になった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 街の力自慢の者や建築関係で働いている者、グラーシェンカ殿の旅団の隊員、そして傭兵団のメンツ最初はグラーシェンカ殿のほうで相手をしていたが、そのうちエクレール殿に変わったらしかった、ロック様も混じってくだんの依頼の話を聞き出し大体の地図上の場所が判明したのであった。



 但し地図上の場所は丘陵地帯であるのだが、地上から行くには渓谷地帯を抜ける必要があり偵察そのものに難があった。


 偵察役はロック様が行うことになったが、そのロック様を載せて渓谷地帯を抜ける役目を私が受けたのである。


 ロック様を乗せて、渓谷地帯を低く飛び抜けたのだ。


 しかし渓谷を前に、嫌な予感がしたので、艦周囲に光学迷彩を展開させておいたのである。


 ロック様を渓谷を抜けたところで下ろし、偵察任務は開始されたのである。


 そして偵察から帰ってくるロック様を待つために、私は影の出ない位置まで上昇し、待機することを指示していた。



 そして、偵察から戻ったロック様を回収、移動しながら話を聞き、映像の解析を進めると形式不明機がそれぞれ二機と、輸出型らしいD型サイレント十六機ほどの規模の集団らしかった。


 そこそこの規模の部隊であるが、その割にはフローティングFパワーPトロリーT(以下FPTと略す)の数が少ないような気がするが、見えていないだけで杞憂きゆうであると思ってしまった。


 別の場所にも陣を張っているかもしれないのだろう程度に、気の抜けていたことを考えてしまっていたらしい。




 もっとも不明機の識別が一番厄介やっかいであった。


 片方は完全にアーマーすらも見えない。


 砂漠用のローブらしきものをまとっていた。


 もう一機は騎士型らしいが、魔動機なのか魔導機なのかの見当がつかないカスタム機だったのである。



 正直一見で魔動機と魔導機の違いを見抜くことはできないことが多い、例えそれが元の設計者であっても……。



 剣を交えるまではわからないことのほうが多いのである。


 一度設計者の手を離れてしまえば、改造はかなり容易であるとしかいいようがないわけだし。



 正直、私は戦略的に迷っていた。



 相手の数は約十八機、これが定数だとしても。


 奇襲に対応されたら終わりだと、こちらの定数は四機プラス十二機プラス四十七機プラス一機だが、しかも内十二機は初陣だという、四十七機も輸送形態となっており完全展開するのにはそれなりの時間を要するのだ。


 直ぐ動けるのは十七機、それしか居ないのである。


 完全殲滅せんめつするには機数が足りない、相手が奇襲の対応に遅れてくれればこちらの勝ちだが。


 とはいっても相手は正体不明二機と輸出型と思われるサイレントが、約十六機、正体不明は気にかかるが、奇襲にかかれば不意討でどうにかなるかもしれない。


 初陣組の様子が気にかかるが、現状戦意は高揚しているらしいので戦力の数に入れて考えた。


 お兄様も魔導機、それも聖階位ホーリーランク持ちのケルビム乗り(この広い世界で十一機しかいない)であるからして多少の不利はなんとか持ちこたえてくれるだろう、そういう私も魔導機に乗っている。


 それに今回はカチューシャ・グラーシェンカ殿の旅団もいる。


 グラーシェンカ殿の旅団には、エクレール殿もいると聞くそれにロック・バルダー様の指揮の元である、彼はギルディアスからのお目付け役上司でもあるが、腕は良いと思われた。多少増えてもなんとかなる……そう思ったのである。


 この時点では、私の一機プラス旅団の四機プラス初陣の十二機、相手と一機こちらが少ないが、腕で押せるはずであった。

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