第4話 思い返す、そして心に刻む

 先にいっておかなくてはならないが、私はアストライア姫の影武者にして特種Ss新人族NRではある。


 そしてID登録自体は、新人族ニューレース・ナイツとして登録されているのだ。


 そしてこれは固定されており、他の何が見てもそのようにしか見えないようになっている。


 さらにこれはもう極秘事項となってしまったが、稀代きだいのエルフ・デザイナー種フローライト・マックス侯爵に創られた経緯を持つ。


 そのことを口にすることはもう絶対に無いが、侯がよくいわれていた言葉が心にみついていた。


「経験とは自らの得るものでは無く、与えられることのほうが多いのだ」


 またフローライト侯爵が、信念のように貫きとおされていることが一つあった。


 PNR原種ニューレース種やEvNRエヴォリューションニューレース種は良く姉妹や兄弟で創られたりすることが多いのだが、フローライト侯爵は姉妹や兄弟とせず個性のある一人として創り、自分の持てる経験と技をしみなく引き継がせてくれるとても良い親父殿であったのである。


 そのためか私は剣聖技ソード・セイクリッド・スキルをいくつか使え、深奥奥義ディープ・ミステリーにも触れることができていた。


 こんなことは普通、ありえないのである。


 至高の存在を作り出すために、尽力じんりょくしていた証拠ともいえるものではある。


 旅立ちの日にも残った全ての知識を教え込まれ、夜分遅くに巣立った覚えがある。



 彼是かれこれ別れてからもう十二年ではあるが、噂で聞くところによるとまだご健在らしい。


 エルフ種であるため長命種であるのは確かなのだが、一所ひとところには収まらず型破りな行動が目立つため、本来はギルドなどのサポートがあって初めて成り立つことを、一人で良くやってのけているそうである。


 通常の錬金アルケミー設計者デザイナーは自ら創り上げたPNR種を銘入りと称して誇らしげに発表儀礼はっぴょうぎれいで世間に披露するのだが、フローライト侯爵は違って発表儀礼には出さず、情報を公開せずに世に放つのを常としているのだ。


 多分、好みなのであろう。


 そして風の便りで世に解き放った者の噂を聞くのが、趣味なのだそうである。


 自分の主は自分で探せという、PNR種にあって本来はあるまじき命令を下し世に放つのである。


 さすがに工場ファクトリーや他の工房ワークショップでは無理な話だがギルドはこれを容認しており、「こんな方法もあるのか?」と他の設計者から私にはできないと絶賛されていたりする。


 私の場合は「自分で好きなように生きよ!」といわれて世に放たれたのは確かに覚えている、五歳の時の話だ。


 それはとても新鮮な感覚であり、これが外の世界かと、いうにいえない気持ちを抱いたのも事実であった。


 それからしばらくは、外の世界を堪能たんのうし装備や資金もしっかり揃えてくださったので、実戦を経験すべく登録の一番簡単な冒険者ギルドにダイアモンドステータスで登録し、様々な依頼を受けていったのである。


 もちろんそれを広められるような依頼ではなく、極秘でお願いしたいといった依頼を常に違う仮面で顔を隠して受けていったため私の噂は広まらなかった訳ではあるが、着実に一部の者たちに有名になりつつあったので、最後の依頼と称し『こたびの真実』の一件前に超高額だが超極秘の依頼をフードを目深くかぶり仮面を付けローブ姿で性別を意識させないように注意しながら受けてそれをこなし着実に人に言えない名声を重ねて『こたびの真実』に触れてしまったわけではある。

 

 少し話の軸線がずれてしまった、元に戻すことにする。


 こうやって現在の私があるわけではあるがそれだけでもないのが真実であるその、『こたびの真実』はいずれ話されることになるということにしておいて、ヨナ様の話に戻ることとする。


 つまり、ヨナ様には「PNR種こそが至高の存在ですよ、少し揃うまでに時間はかかりましょうが、それを補って余りある大切なものを彼ら彼女らは伝えてくれます」と意見具申した後に、追加としてそれを伝えたわけではある。


 ヨナ様からは「遠いところをすまなかった、旅の疲れをギルドシティーで癒して帰っていっておくれ。と言いたいところじゃが、最高評議長も何か用事があるといっておった。疲れているところ申し訳ないがそちらのほうも聞いてやってくれぬか」と、おっしゃったのであった。

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