第15話 密室
書庫に着く。
鍵をまわして扉をあけると
ホコリっぽくて咳が出る。
「ありがとう。ここに置いて。
あとは私がやるから立花さんは戻ってね」
「わかりました」
さて。
前期までの書類を保存箱に入れて…
黙々と作業していると
突然扉が開いた。
「おつかれー!」
「わ!坂下さん!」
手にはミルクティーを持っている。
「1人で頑張ってるって聞いたから、さしいれ」
「わー!ありがとうございます!」
満面の笑みで駆け寄り、ミルクティーを受け取る。
「昨日は遅くまでありがとう」
「…いえ、私こそ…」
昨日のことを急に思い出し、ぶわっと赤くなる。
「仕事モードの邪魔しちゃ悪いよね」
「…そんなことは…」
バン!!!!
言いかけた時、突然風で扉が勢い良く閉まった。
「ひゃあっ!」
「うわっ!!!」
「びっくり…したぁ…」
思わず坂下さんの腕にしがみついてしまった事に気づき、ばっと離れた。
「…いいのに」
「や、会社なので、その…」
「あやなはしっかりしてるね。
俺なんてもう全然ダメだわ」
「???」
意味がわからずにいると、坂下さんは笑った。
「今日何回もあやなのこと仕事中に探して
どうにか会えないかなって考えてて、無理やり事務所に用事作って行ったら、書庫にいるって聞いたから、下心丸出しで来たんだよ」
最後の1文に思わず笑ってしまった。
「だめですよ!仕事してくださいね!」
「ははは!りょーかい!」
じゃっ!とそのまま扉をしめて行ってしまった坂下さんを見て、ぎゅっと両手を握った。
ほんとはもっと話したかったなぁ…
やっと書庫の整理を終え、
時計を見ると30分を少し過ぎたところだった。
早く戻らないと…
ガチャ。
あれ?
ガチャガチャ…
うそでしょ。
扉が開かない…!?
古くて前から開けにくい事もあったけど
まさかこのタイミングで…
どうしよう…
スマホもデスクに置いたままだし
建物自体が離れているから声もきっと聞こえない。
窓は棚でふさがっていて開けられないし…
「閉じ込められちゃった…?」
扉はすりガラスになっているから
辺りが暗くなれば、明かりに気づいてもらえるかもしれないけど…
まだ15:30
暗くなるにはまだまだかかる。
ドンドン!!!
何度か扉を叩いてみたり
ガチャガチャとノブを回すけど
一向に開く気配はない。
…裕貴、気づいてくれないかな…
30分で戻ると伝えているから、
あまりに遅ければ見に来てくれるかも…
このまま誰も気づかないかもしれない。
どうしよう…
突然不安が大きくなった。
「…坂下さん…」
一瞬、外で誰かの笑い声がした。
「!!」
ドンドンドンドンドン!!!!
「助けてぇー!!!!」
精一杯の声で助けを呼んでみたけれど
すぐに笑い声は聞こえなくなってしまった。
どうしよう…怖い…
泣きそうになるのをぐっと堪え、
辺りを見回してみる。
ガラスを割れそうなものは…
書類をぶつけてみた。
バサッ…だめだ。
さっき整理したばかりなのに
一瞬で紙だらけになった。
「あーあ…」
その場にへたり込む。
誰か…
誰かが来てくれるのを
ただ信じて待つしかなかった。
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