第12話 告白
「近くに着いたら連絡するから」
そう言って電話は切れた。
あーどうしよう!
お化粧落としちゃった!
前髪もあげちゃった!
部屋着にも着替えてる!
なにやってんの私!!!
一人暮らしは怖い。
どんなに凹んでいようが
どんなに浮かれていようが
全部無意識でやってるんだから。
メイクして前髪直して着替えて
未だかつて無いほど高速で支度できた。
私こんなに早くできるんだ。
…それなら毎朝早くしろよってな。
なんとなく落ち着かなくてウロウロしていると
電話が鳴った。
坂下さん…!
「もっ、もしもし!」
「もしもし?駅に着いたけど、遠いよね?」
「いえ!徒歩で10分くらいなんで、行きます!」
「10分?!だめ!」
「え?」
「夜道を女の子ひとりで危ないから、だめ」
「え、そんな…」
「マンションまで行くから、待ってて」
「はい」
女の子扱い…
もうすぐ来てくれる。
ふと、窓に映る自分と目が合う。
…うまく笑えるだろうか。
ドキドキしすぎてもう、よくわからない。
ドアにカギをかけて、マンションの下に降りた。
ちょうど1台の車がハザードを点滅させて止まった。
助手席の窓があいた。
「おまたせ」
いつもより少し雰囲気の違う、坂下さん。
「わざわざすみません。ありがとうございます!」
「乗って」
助手席に乗り、シートベルトをする。
まだ出発しない。
「あの…?」
顔をあげると、
こちらを見て微笑んでいる坂下さん。
…どきっ
「…なんかごめん、会いに来て」
「いえ、そんな!…嬉しいです」
「いこっか」
「はい…!」
動き出した車内は、坂下さんの香りがする。
「いい香りですね」
「あ、加齢臭してない?」
「あはは!全く!坂下さんのニオイです」
「え?俺の?」
「せっけんみたいないいニオイですよ」
「よかった。臭くなくて」
ほっ。いつも通りだ。
うれしい。
「居酒屋でもいい?ノンアルだけど」
「はい!もちろん!」
20分ほどでお店に着いた。
予約していてくれたみたいで個室に案内される。
「予約、してくれてたんですね」
「入れないことも多いから」
「さすが、仕事が早いですね」
「はは!仕事じゃないから早いのかな~」
坂下さんはノンアルビールを、私はサワーを注文。
すぐに届いて、乾杯する。
「おいしい」
「上野さん、おいしそうに食べるよね」
「よく言われます」
「見てて幸せになるよ」
坂下さんの一言一言が、本当に優しくて
胸がギュッと締め付けられる。
早く続きが聞きたくて、ずっとドキドキしてる。
でも坂下さんは本当にいつも通りで
まるでさっきの電話は何もなかったみたい。
私ばっかりドキドキしてるのかな…。
いつから私、
こんな風に考えるようになったんだろう。
やな女だなぁ…。
「……上野さん?」
「あっ…え?」
顔をあげると、坂下さんがじっと私を見ていた。
「…どうした?」
「…すみません、なんでも…」
「もしかして迷惑だった?」
「!そんなわけないです!」
思わず声が大きくなった。
「…それならよかった。
俺だけがドキドキしてるのかと思って」
「え?」
うそ…うれしい……。
「さっきの電話、続きがあって」
「はい…」どきっ
「おれ、上野さんの事、好きになりました。
付き合ってほしい」
じっと目をそらさずに伝えてくれた言葉。
私も固まってしまって逸らせない。
「…はい。私も、坂下さんが好き…です…」
だんだん超えが小さくなっていくと共に顔も俯く。
あぁ、見れない~~~~~
「ほんと?」
「……はいぃ…」
「ほんとに?」
「はい…ほんと…」
「マジで?」
「…もぅ……何回聞くの…」
いたたまれない。
「上野さん?」
「…なぁに…」
「顔あげて」
「や、今はちょっと…」
「…あやな」
「!!!!」
「ふふふ。ひっかかった」
思わず顔をあげた私が見たのは
真っ赤な顔でとびきりの笑顔の坂下さんだった。
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