第41話 蛮勇の領主の教訓
国内の領主が帝都の不満分子を糾合してて帝宮の丘を攻略してた頃には、ザンパーノはそれを止めも支援もせずに帝宮跡の整備をしていた。
水族館は役人とビアンキ総業に任せきりに近い。
壮大に成長したビオトープの水槽も、隠しようがないほど巨大化している。他の色鮮やかな特定侵略型外来種に紛れて、決して目立たないが中のビアンキっぽい何かも成長している。
そして蛆の噴き出す大爆発の後に元の木阿弥に戻った帝宮の丘は、たなびく異形の草原に生える奇妙なバオバブを残し、何事もなかったかのような涼しげな雰囲気を醸している。
ローザはローゼス加盟店には、帝宮の丘の入り口の交易所までしか行かないよう厳命していた。それゆえに、被害も最小限で済んでいた。
ミーナは剣の師範について型稽古をみっちりと行い、基礎体力の向上に努めていた。ある程度、剣も自由に扱えるようになってきている。
お陰で体重も元どおりとはいかないものの、3キロの減量に成功している。
そして帝宮の丘から僅かに距離を置いた臨時交易所跡地。
結局数万の人的資源と莫大な造反領主の物資を呑み込んだ帝宮の丘に、これだけの犠牲を出したのにまだ生きている造反領主を、
投石器の廻りには貴賓席をしつらえ、貴族や軍人はオペラグラスを渡されて
「なぜ私が死刑にならねばならないのですか!」
神聖ヴァチカニア帝国の臣民と物資を大量にすり潰した造反領主は叫ぶ。皇帝の意に背いて国家にこれほど大損害を与えれば、普通にどう考えても極刑は免れない。
「ボクは丘に行けば絶対に死ぬと言ったよね。なのにあたら有為な人員物資を無為に丘に送り、自分は保険をかけて丘には行かなかった。
……皆まで言うな、キミが何を言わんとしてるかは分かっているよ!」
ザンパーノは一切表情を変えずに芝居がかって朗々と宣言する。
「な、ならば!」
蛮勇の造反領主は一縷の希望を見出し、頬が緩みかける。
「分かっているとも、キミ自身の身をもって
『
んだよね?」
ザンパーノは掲げた手を振り下ろし、巨大投石器は造反領主を丘に撃ち込む。
丘に着弾し、体のあちこちが奇妙な方向に折れ曲がりつつしばらく動いていた造反領主を見て、帝国の重鎮たちは天を仰ぐ。
「いま目を背けてはいけない、領主の彼が分かって欲しいのは
衆人環視のもと、領主は奇妙な触手めいた草に絡め取られ、丘の地面に飲み込まれていく!
完全に手の先まで飲み込まれ、丘は平静を取り戻した。
ザンパーノは貴族と軍人に訴える。
「……コレが、ボクが帝宮の大爆発後に見た風景だ。
ただちに侵入禁止にしろ、という声が上がる。
しかし、ザンパーノはそれも首肯しない。
「帝宮の丘の怒りに触れさえしなければ、入るぐらいは自由さ。単に、傷をつけたり欲を掻くのがいけないらしい」
ザンパーノは手ずから腐葉土と水を帝宮の丘に運び、バオバブの根に与え、葉と実を持ち帰る。
「恵みに感謝し、頂く。
実も葉も食用可能なただのバオバブだけど、成長に数千年かかる樹が数時間で成長したんだ。思うに、ヴァチカニアへの贈り物だろうね、教会の管轄すべき奇跡だよ。
来るのはいいけど罰当たりな失礼は御法度。そう解釈していますがどうでしょうか? 司教」
「……検討すべき現象ですな、陛下」
誰もその場で答えが出せるような問題ではなかった。
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