第35話 生ける姉妹の熱い眠り
「今日もまた、日々の糧を得ることができました。叡智の殿堂・神聖教会は偉大なり」
「「「神聖教会は偉大なり」」」
ビアンキの両親とローザ。そしてミーナは食事の前の祈りを捧げる。まあ、生活習慣だ。
侯爵家時代は贅沢で食わず嫌いが激しかったが、脱穀もしてない稗を食べるようになったあたりから、金属じゃなければ何でも食べられることに気付いた。姉様は金属でも食べられる。
「……なんだか久しぶりだね。ミーナちゃんと食事をするのも」
久しぶりの人間らしい食事を堪能していると、ビアンキの父は照れ臭そうに笑う。
そういえば、結構な期間山や洞窟で冒険者的なことをやり、その後は気づいたらビアンキの水槽に一ヶ月ほど浸かっていた。
水槽とは臍の緒で繋がり色々と変わった。主に体内の構造が。なにより5キロも体重が増えたりとか、散々ですわ。
「でも良かったわ……元気になって」
「最初は冒険の過労が祟ったんじゃないかと心配でなあ」
「そうだ、ビアンキの水槽はどうなってますか?」
ミーナはどこが悪いわけでもないのに、オーバーホールのために水槽の謎機能の実験台になっていた。
「ビアンキの水槽なら……明日搬出して水族館に移すよ」
ビアンキの父は言った。
「ミーナちゃんが入ってる間はほとんど大きくならなかったんだけど、急に成長し始めてね」
「じゃあ、魚とか水草を入れて、成長を止めなきゃねえ……ビ……なんとかって言うんだったかしら?」
「ビオトープなの!」
「魚とかは調達の目処が立ってるんだ。入れるとこは見るよね?」
自慢の水槽をお披露目するところを見せたいようだ。それもそのはず、ビアンキの父は自分が思い付いたと思い込んでるからだ。
「……う〜ん、微妙なの」
「説明させてください、ローザはわたくしと一緒に、珍しい水棲生物の捕獲に向かうからですわ」
ガッカリしたビアンキ父にはミーナがそう告げる。
「ローゼスの屋台のみんなには、何日か仕入れに行くって言っといてなの」
ローザはビアンキ母にそう告げる。
食事を終え、ビアンキ総業の倉庫に置かれた水槽は、やはりミーナが抜けて大きくなっていた。ローザとミーナは、盗賊やゴブリンの襲撃計画を練る。
当たりをつけた拠点にはハエ・ガ・ゴキブリ・アリなどが先行で監視体制を敷いている。
新魔法を活用した戦術の指針も万全だ。
「……こんなところか。だいたいブリーフィングは終わりですわね」
「だね! ミーナ、そろそろ寝よっか?」
屋根裏部屋で手を繋いで姉妹は眠る。
眠りは虫たちが送ってくる情報の整理のためにも必要不可欠だった。夜明けには、最初の標的の解析は完了。どこに誰が居るかという配置まで分かっている。
罠、脱出口なども把握済みだ。武器庫や兵糧までお見通しだ。さらに、人質もいない。
ミーナとローザは、人通りの少ない大通りを抜けて門へと向かう。途中、何人かの屋台の顔見知りと出会い、仕入れに行くことを告げて門の外へと出向いた。
「あれ? 姉様ミツバチの巣は?」
「馬車の巣は置いてきたの」
「取りに戻りましょうか?」
「ううん、これも意味があるのなの」
そうですか、ミーナはそのまま馬車を進めた。
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