第21話 ローザの色々日曜細工

ローザは馬車に乗り込みながら、積んであったフワフワのブランケットを羽織る。

「えへ、わたしローザ。ロバさんよろしくなの!」

ローザが乗り込んでもほぼ負荷が変わらないことに、ロバは満更でもなさそうな雰囲気で鼻息を立てる。


「ねえ、どこに行こっか!」

のどかな丘の上の小さなロバの馬車。ローザは歌いながら言う。

「そうね、姉様のお洋服とか、身の回りの品が必要かな」

「うんうん」

「あとは拠点ね」

「それは、丘のハイヴでよくないかな」


ローザとミーナは、帝都城壁の近くで野営する。ローザは小さな馬車を外宇宙生命体のテラリウム。極小の移動式生態系グローヴに改造すべく、さっそく馬車を改造している。

全裸で改造するさまは、御伽噺のエルフのようだった。


「姉様、小さくてもいいから、おうちを借りましょ。もう侯爵家の帝都ヴァチカニアのおうちもないから」

「やっぱり無くなっちゃったんだ」

「それよりも、帝宮の丘の地中にハイヴなんか作っちゃって、大丈夫? 今までに増して泥棒や冒険者、下手したら軍まで来るようになるかも」


「その防衛の為のグローヴとハイヴを作るために、純粋知能生命のオーバーマインドを多めに作ってガッチリ固めといたの。余った個体は、この星の魔法と生態系を研究中。大丈夫大丈夫」

「オーバーマインドって外宇宙生命体でも上位種だからマトリックス……作らなきゃなんないんでしょ? 厄介なオーバーマインドがいっぱいいるんだね、攻略が大変そう」


「ハイヴ攻略は、今のミーナには関係ないでしょ?」

「あ、そうでしたわ」

「それに地上作業は、知能はないけどたくさん増やせるこの星の蟲に下請けに出したから平気平気」

「下級種族は、現地任せ……地球の時と同じパターンだ……のね」

「うん、それが産卵するだけのインキュベーターを使わずに最初に生まれ育った、この世界と外宇宙の子たち。

ハチミツ集めと遠距離単独での見張り用。たくさん増えると1ヶ月ぐらいでヴァチカニア全領土をカバー出来るようになるかな」

「空は分かった。でも陸はどうするの? 家屋内とか、どんな虫でもあやしまれるでしょう」

「ハエとアリとゴキブリは強い必要は無いから、見た目も同じままなの」

「その口ぶりだと、このドサクサで既に撒いてるのね」

「オーバーマインドは既に情報の収集活動を始めてるよ?」


「じゃあ姉様本体も……まさか」

「ローザは、心はもともとオーバーマインドの連結体で、この身体は人類世界風に言えば人間型クライアント。ローザの本体は丘の土中で屍の山を餌にサナギになって眠っているなの」


ローザは手を払い、土汚れを落とす。

「さあ行こうミーナ! だいぶ前から帝都は監視してたけど、こうなってからは行くのは初めてなの!」

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