第20話 漠寂たる丘の頂に、佇む少女
次にミーナが向かったのは、またしても帝宮の丘だった。妙な植物が芽吹き、若干標高が増している。
「あらあら、よっぽど上手く商売敵を誘導したみたいですわね、成金は」
たぶん成金は他のヤクザをここにおびき寄せ、蟲の餌にした。
ソレが外宇宙生命体の特徴だからだ。
『……ミーナ、認識できる?』
頭全体に、ぼんやりと声のような思いが届く。
「誰?」
ミーナは周囲を見渡す。帝宮を見渡せる青黒い筒状の草の原が、一面にたなびいているだけだ。
『ローザだよ、なの』
「姉様! 夢じゃないのね!」
『地球の虫に模した生体ドローンは役に立った? そんなものしか生み出せなかったけど。よかった、よかった』
蝶と蜂はヒラヒラぶんぶんとミーナの廻りを飛ぶ。
「じゃあ合流できるということね!」
『……ローザはね、ここでもう少しだけお休みなのね。大人になるための準備、ハイヴとグローヴを作らなきゃなんないの』
簡単にいうとハイヴは巣になるけど、グローヴは生態系そのもの。もちろん外宇宙生命体にとっての、になるけれど。なんで敵対してこないのか? 意味が分からない。
「じゃあ、わたくしミーナもローザ姉様と一緒に居ますわ!」
『いいえ、わたしは侯爵令嬢・ローザというか、ジェルソミーナとあなた達が所属していた宇宙海兵隊が戦っていた、一緒にはいられない外宇宙生命体のハイヴクイーンなんだよ』
「でも!」
蝶と蜂は、クルクルとミーナの廻りを飛ぶ。
『まあ、有機リソース不足を定期的になんとかするように取り計らってくれたのはミーナでしょ? でしょ?』
確かに、例の成金を操ってごろつきや強盗団を定期的にこの丘に行くように仕向けている。
生贄と呼ぶには少々ガラが悪いが、ガラの良し悪しが味や栄養価には影響がないと、宇宙海兵として叩き込まれている。
……元々は、
宇宙海兵が外宇宙生命体を用いたレシピを開発して糧食を嵩増ししていたように、外宇宙生命体も人類を兵装ごと捕食していた。
不倶戴天でありながら、長い戦いの間に持ちつ持たれつの奇妙な共生関係が出来上がっていたのだ。
『やっぱり少し余裕があるから、ローザも緒に行くの!』
飛来した蟲が一塊になり、やがて荊の茂みに消えていく。
その後に残ったのは、見紛う事なきミーナの小さな姉・ローザだった。全裸の亜麻色の髪の少女が、歩み寄ってくる。
「これからも一緒だよ! ミーナ。よろしくなのね!」
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