第2話 地下牢に独り咲く紅蓮の百合
目が覚めると、底冷えする石造りの地下牢の床に転がっていた。
妙に
ブリタニア王国農業公社、ジャガイモ(醸造用)という刻印がわざわざ入っている。
こんな服を着ている人間は見たことがない。河原に捨てられた浮浪者の遺体でも、もう少しはマトモな服を着ている……
やけに視界が狭い貌に恐る恐る手を触れる。
……金属の仮面、いや貌まで覆う兜が被せられている。手触りからして最低級の
鉄格子もなく永久に光が差すこともない牢の前に、帝国の軍装をこれ以上ないほどヨレヨレに着崩した番兵がフラフラと怪しい足取りで歩み寄る。
ミーナがいま着ている麻袋の元の中身であろう、ブリタニアのジャガイモ製の
「……なあ、嬢ちゃん。いったい侯爵家はどんな大それた事をやらかしたんだ?」
「お答えしかねます。当家の顧問弁護士を要求致します」
くたびれた兵士は最低の臭い安酒を呑む。
「……うー、まずい。
「腐ったジャガイモには毒があります。死にたくなければおやめなさい」
「はは、そうだな。そのうち死ぬな」
そう言ってまた
「親切な嬢ちゃんに、皇子殿下からプレゼントだそうだよ。ほら、開けてみな」
兵士は投げようとし、思い直して直接重い麻袋を手渡した。
麻袋には、『
「嬢ちゃん、いや侯爵令嬢ジェルソミーナ、
最初の一輪だが、最後の一輪ではない。これから世界に咲き誇る、紅蓮の百合の楽園の始まりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます