第20話 震える土、蠢く岩達20



「この役立たずが。大きな石っころの一つも倒せないのか」




「あんた、囮すら満足にできないの」




 突然私の横からお姉ちゃんとラーフィが、走りながら冷ややか口調で話しかける。




 おそらく、どこかに岩陰に隠れて岩人形や山人形の様子を伺い、




 スキあらば先に進もうしていたんだろう。




 多分、山人形がゴロゴロと転がって来た時に隠れていた岩陰に接近したので、




 そこから逃げ出したのだろう。




「簡単に言わないでよ!!!! 勝手に私を囮して、先に行こうとしたくせに。」




 私は今まで、胸の溜まった想いを二人にぶつけた。




「円滑に仕事を進めるための最善だっただけだ。役に立たずの脳無しが。」




「それに調査の後で、あんたを助けに来る予定だったのよ。死んでない限りは。」




 それがさも当然だと言う口調で、二人は言う。




「やっぱり、そうだったんだ。 



 私の事なんてどうでもいいんだ!! そうなんでしょ!!」




 二人の態度に、私は頭に来た。




「あんたが山人形に追いかけられる前に逃げないから、悪いでしょ!!」




「なぜ、あのでかぶつ(山人形)が目覚める前に私達と一緒に来なかった?」




 二人は私がすぐに逃げないのが悪いと言う。




「あんなのが動き出したら、気が動転して急に動けるわけないでしょ、フツー」




 私は世間の一般論を述べる。




「そんなことはあの戦争(天逆大戦)じゃ、幾らでもあったじゃない」




「周囲が不自然な現象があり、



 かつソウルブラットや神機が関わっている可能性があるなら、




 ともかくすぐ逃げる。これはあの戦争では常識だ」




「あの戦争から、何年たっているのよ!!




 だいたい、なんで岩人形や山人形が追いかけて来る理由すら判らないに、




 そんなに二人は落ち着いて居られるのよ!!」




 岩人形が追いかける理由をあの非常識な戦争の事で説明されても、



 わけわかんないわよ!!




「そんなことも判らないの? そんなの判って居るに決まってるじゃない」




 お姉ちゃんは私を見下した眼で答える。




「お前のスカスカの脳味噌でも判るように簡単に説明するぞ。




 恐らく、あいつら(岩人形達)は眼に入った動く物体に対して、




 追いかけて捕まえるかじゃれてくる習性がある」




 ラーフィは何事も無いように淡々と説明する。




「要するに、生まれたての雛が初めて見た物を母親と思い込むことか、




 犬や猫が転がるボールを追いかけるのと一緒よ」




 お姉ちゃんはおばあちゃんの知恵袋を言うような口調で私に言う。




 二人の言葉に私は唖然とした。




 私はそんな子を産んだ覚えはないぃぃいい!!




 どうやっても産めないし、そんな母親にはなりたくないいいいい!!




 それに私はボールじゃないぃぃいいぃぃいい!!!




「そんなのわかるかあああああ!!! っていうかどう考えても絶対無理!!」




 アア、ワタシノジョウシキガクズレテイク。




 でも、あの戦争では似た状況あったけど、ここまで酷くは無かったなあ。




 一瞬でもそう考えることで、この状況に慣れようとする今の自分が嫌になった。






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