第19話 震える土、蠢く岩達19



 岩人形達が降って来たり、飛んできたりすること十数回。




 すると、急に空が暗くなったり、飛んできたりしなくなった。




 念のため、辺りを見回すがそんな気配は無い。




 やっと、一息つける。深呼吸して、息を整える。




 こんなに空気が、おいしいなんて知らなかった。




 山人形の方を見ると、体がガリガリになっている。




 考えなしに体をえぐりすぎたせいのだろうなぁ。




 まるで、人形の骨組みに手足をつけたみたい。




 山人形が急に膝をついて、横に寝転び始める。




 山人形が疲れたのかな? そんな訳が無いか。




 なんか急に遠くから、地ならし音と岩が砕ける音が聞こえる。




 しかも、徐々に音が大きくなってきてる。




 気のせいか、音と共に岩人形の体が太くなっている。




 もしかして、寝る山人形は育つ? 聞いたことないなぁ。




 じゃあ、地ならし音と岩が砕ける音が聞こえるのはなんなんだろ?




 ともかく、山人形が育つ前にやっつけなきゃ!! 



 でも、山人形が弱ってるから楽勝でしょ。




 私は山人形の方へ走り出した。






 近づくにつれて、岩が砕ける音が激しくなってる。




 再び山人形を見てみると、元の半分くらいの太さになってる。




 しかも、こっちに転がって来てる。




 私の三倍くらいの大きさの岩を何事も無いように抉り、踏み砕く。




 ここの地形がゆるやかなな斜傾せいか、どんどん加速している。




 私は身を翻して、走り出す。




 幼い子供がゴロゴロと転がるのはかわいいけど、




 巨大な山人形がやると醜悪なパロディでしかないのよ!!




 なおも、山人形は加速し続ける。




 本当にかんべんしてよ…………。




 誰か……助けて……もうこんな生活は嫌……。




 私の心の叫びとは関係なく、山人形が迫り来る。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る