第9話 震える土、蠢く岩達9 シェノールの過去2 

 あの後、なんとかゴールにたどり着くことができた。




 そうやって、私は姉と妹に助けられながら、養成所での生活が二年を過ぎる。




 二年も居ると養成所の中に友達ができて、生活は楽しかった。




 しかし、その間にも戦況がどんどん悪化していた。




 この時期に敵が戦争の原因である動物を兵器として、




 大量に投入されたため、私達は窮地に追い込まれ始めている。




 訓練が不十分な私達を戦場に送りこまなけれならないほど、




 圧倒的な戦力差だった。




 その場しのぎみたいに養成所の仲間達は次々と、




 激戦地へと送り込まれいく。




 私達も例外ではなく、送り込まれた戦場はひどいものだった。




 草木は朽ち果て、水は腐って濁り、




 大地には屍と血の跡が一面広がる。




 まさに地獄絵図と呼んでもいい光景。




 私は初めてこの光景を見た時、気を失いそうになった。




 一緒に来た仲間も吐いたり、気を失った人が三分の一近くいたと思う。




 それだけではなかった。




 いざ、戦いとなると敵側の武装した動物達が凄い。




 今や、敵側の主力は動物達だった。




 私達の可愛らしい動物とは違う、禍々しいというか、毒々しいという姿。




 戦うために産まれてきた、生きた兵器そのもの。




 ある動物は超スピードで、相手の体の急所を貫くものもいるし、




 また別の動物は周りの風景に同化し、不意を突いて攻撃するものなど。




 敵側の動物達は少なくとも、私達と同等かそれ以上の力をだった。




 その上、戦うたびに強くなっていて、徐々に戦術も使い始めるタチの悪さ。




 こんな物を大量に送り込まれれば、窮地に追い込まれても仕方がない。




 この頃から、私達の戦況は圧倒的不利な状況に追い込まれていた。






 私達はこの状況を打破するために、“ソウルブラッド”を使うことをなった。




 “ソウルブラッド”とは持ち主に無尽蔵にエネルギーを供給し、


 能力を強化する道具。




 さらに、能力の発動過程や制約を取っ払うことができる。




 普通、能力の発動にはいくつかの制約や過程がある。




 一、能力発動前に必要なエネルギーを溜める。




   そうしないと能力発動しない。複雑な能力ほど時間が掛かる。




 二、その中にイメージを込めて、その形を構築する。




   能力によっては構築が難しいものもある。


   また、複雑な能力ほど高い集中力が必要。 




 三、それらのエネルギーは何らかの形で、


   必ず何かに接触・放出しなければならない。




   それをしないと、そのエネルギーの消失・暴発を招く危険性がある。




   複雑な能力ほど、その危険性が高い。




 (例外として、ある一定の条件・制約を満たすと、


  必ずしも接触・放出しなくてもよい。)




 “ソウルブラッド”を使うと、これらの制約や過程を無視して、


  能力を発動することができる。     




 つまり、能力をやりたい放題使いたい放題にする道具である。




 ちなみに私は気が乗らないので、使わなかった。




 しかし、友達の使う所を見ると凄かった。




 あの数百体もいる動物達を一瞬で、全滅させる圧倒的な力。




 まるで、大津波で家や人々飲み込んでいく様な感じに似ている。




 その後で、友達に使ったときのことを聞くと、




「根性さえあれば、制御できる。使った時は、自分の感覚が世界に広がるみたいだ。




 まるで、空を飛んでいるみたいだったよ。」




 まあ、周りからは“ソウルブラッド”の制御がかなり難しいと聞いているのだが。




 その友達は妙にハイな状態で、


 参考になるようなならないようなことを言っていた。






 そんな物を使い始めると、あっという間に戦局は逆転した。




 いくら、敵が数の上で有利だろうが、


 こんな物をぶっぱなされると、そんなことは関係なくなる。




 万能の力を持っているような状態の私達に、敵に勝ち目は無い。




 そのおかげで、この戦いが終わるのにはそう時間は掛からない。




 全く関係がないが、この戦いの間に私は変なあだ名が付けられた。




 あまりいい名ではないので、言わないが。




 ともかく、あっという間に戦争は終った。


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