最も醜い現代人の苦悩

@pollute

最終話

私にとって最も屈辱的で最も避けたい事というのは上に立たれることで、ましてや友人だと思っていた人物に指図されるなどそれはもう腸の煮えくり返る心地なのです。

ここで問題となるのは心配と指図というのが私の言語観ではほぼ同じものであることで、そのため心配されている身ながら友人に怒りを感じ"心配するな"と怒号を上げてしまう。

私は心配というものをされたことがない、というより心配をさせたことがないからきっと慣れないのでしょう。

これは私の虚言癖にも通じるもので、強くあらねばならぬ、誰にも負けてはならぬというプライドによる。

小学校の同級生の一人はよく泣く子で、ことあるごとに心配をかけるので私は陰ながら弱者とはこんな人を指すのだな、と思い……ああ、また虚言だ。

私の虚言癖にも呆れたもので、たったの5文も真実を書けやしない。

今の嘘はなんの為…?

もうわからない。

私は呼吸のごとく嘘を吐く。

癖になってしまっている。

本題に戻ろう。

私の虚栄心が心配をかけることを嫌ったというのは真実であるはずだ。

結論はもう出た。

こんな文章にも何かしら意味を持たせたいので私が心配を受け入れる方法を考えよう。

そもそも心配とは何か?何故人は私を心配するのか?

理由は私を弱いと思っているからに違いない。

もう駄目だ。

もう一度理由を考えよう。

私に好かれたいから。

私を心配することでどうにか私との距離を近付けようとしているのか、あなたは。

例えこの仮定が間違えていて相当に気持ちの悪いものだとしても、私はそう考える他ない。

そうでないとこの優しすぎる社会で生きていけない。

優しさは私を惑わせる。

優しさには必ず隠すべき理由がある。

元来人間は欲望のままにしか行動できない。

こんなことを言うとボランティアの例をしばしば出される。

ここで言っておこう。

ボランティアが社会全体の役に立つ以上、相応の快楽が支払われる。

社会動物を取り纏めるための遺伝子の選択である。

社会動物はそう進化してきた。

人間は感情も行動も思考も、あらゆるものが欲望によって形成されている。

逆に言えば欲望さえ作り出せればAIに感情をもたせることなど、3年程の人間社会での経験により会得できるだろう。

さて、何の話だったか。

振り返るのはもう辞めよう。

こんな性格だから孤独なのでしょう。

孤独とは人間としては悪いものだ。

しかし私が大成さえしてみれば、地道な努力によって成功しました、と言えるわけだ。

例え私が数年間独りでゲームを遊んでいたとしても、それを知る人は私しかいないのだから。

これを読み返す私が何歳かはわからないが、私は今人生で最も孤独である。

今の年齢は伏せよう。

私は友人への年齢詐称を1年以上貫き通しているのだ。

もはや自分の年齢を言うことに違和感を覚え始めている。

少しだけ、自称世界一の嘘つきたる私による嘘のデメリットをまとめてみようか。

きっと滅多に嘘などつけない凡人は嘘がバレたらどうのこうのと言うだろうが、現に私の嘘は殆ど全くバレていないので論外である。

そうは言っても嘘をつき続けるというのはそれはそれで難しいものなのである。

嘘を隠すためにまた嘘をつき…ということを続けると当然嘘が積もる。

相手がどの嘘を覚えているかわからない状況で話をするのだ。

例えば相手が"君はAだったよね"と言い、私が"そうだよ"と返し、相手は家に帰り"そういえばこの前はBだと言っていたな"と思ったとする。

ここで相手が狡猾な人間であれば"きっと彼は嘘つきだ"と考えカマをかけようとするだろう。

こうなってしまえば私に逃げ道はない。

バレてしまえば詰みであり罪である。

よって私は私の作ったあらゆる嘘を覚えている必要がある。

それだけじゃない。

私が50歳の電気通信主任技術者だとすれば電気通信系の技術者検定に値する知識と50代の共通認識、かつて流行った歌などに関する知識を持たねばならない。

ここは嘘ではまかり通らない。

誰が真実を知っているのかわからない。

私はよく雑学に精通していると評されるがこれは紛れもなく私が嘘をつき続けた証である。

それにしてもなんだか今日は正直だ。

正直な文章が書ける。

心地よいか?

別段心地よいものではない。

虚言の鎧を捨てた私は誰よりも弱い。

だから怖い。

なんだ、現代病じゃないか。

私は一介の一般人で凡人でつまらないありふれた一人の現代人に過ぎないのだと、やっと今気付いた。

きっと正直な私は人気だろうな。

現代における人気の鍵は"共感"にあると言っても差し支えないだろう。

私のような奇を衒った生き方は好まれない。

大衆はきっと全員で"僕も凡人、君も凡人、みんな凡人。凡人だけどみんな違うね"と合唱できる空間を追い求めている。

ああ気持ちが悪い!

気持ちが悪くて書きながら吐き気がしている。

なぜこうなのか。

一人で生きたらどうだ、私のように。

私を見習って孤高を極めたらどうだ。

そんなすぐに諦めず個性というものを磨いたらどうだ。

人生80年の時代に若者が何をしているんだ、みっともない。

ああ気持ち悪い。

私は今自分の内面に気付いた。

私は辛かったのだ。

同情を求めていたのだ。

辛かったね、苦しかったねと、そう言ってくれれば…ああ、そんな自分が気持ち悪くて最高に吐きそうだ。

私は強くなければならん。

同情など得たところで一銭の得もしない。

さあ勉強をしよう。

勉強をして大成をして、人と同じようでは大成できんよ、とそう言い切ってしまおう。

そんなことに意味はあるの?

意味はある。

私と同じ生き方をする全ての同士に向けて私の人生をかけた一言を送ろう。

送ろう…

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