第40話 Xmasへの準備 遥花の場合②

「まだ目が回ります……」


「はるっち車酔い大丈夫?」


「アンちゃん……それとはまたちょっと違うみたいだから、そっとしておいてあげましょう」


「へっ?そうなの……?はるっちは遠慮しないでゆっくり休んでいいからね!」


遥花たちはあの後すぐにデパートに辿り着いていた。

だが、遥花は相変わらずノックダウンしている。


「大丈夫です。少し楽になりました。その……"︎︎じょしとーく︎︎"︎︎てハードなんですね……」


女性同士のお話、もとい︎︎"︎︎じょしとーく"︎︎が全てこれだとしたら私、絶対に付いて行ける気がしません……。

音絃くんのゆっくりとした落ち着く低い声に慣れてしまって、女性の高い声は耳にキンとくる。

でも、二人の声が嫌いだという訳じゃないんです。

ただ……やっぱり音絃くんがいいな……って私、な、ななな、何を考えてるの!ううぅ……恥ずかしい。


「遥花ちゃんはさっきから感情の変化が忙しないねー」


「具合悪そうだったのに寂しそうな顔をしたと思ったら、次は顔を真っ赤にして恥ずかしがり始めて……はるっちはほんとに好きなんだね」


「違いますよ?!べ、別に音絃くんの事を考えてた訳ではありませんからね?!」


――私……そんなに顔に出ていましたか?!


「誰もねおっちの事だなんて言ってないよ?」


「え、あ、その……違いますから!それより早く行きましょう。音絃くんが帰って来ちゃいますから……」


「いやいや、遥花ちゃん。話を逸らせてないからね?それに帰ってくるって……付き合ってないのに同棲しちゃったりしてるの?!?!」


「ママー!落ち着いてー!」


車の中は色々な感情や表情が入り交じっている。

まさに……


「もうカカオだよー!」


……すいません。私のナレーションを取らないで頂けますかね?因みにカカオではなく、カオスです。


「す、すいません……」


「分かればいいのです。では、私は戻ります」


「はい。本当にすいませんでし……た……?」


私も戻ってナレーションを続けましょう。

杏凪はなぜか、なぜか慌てふためいている。


「わ、わわ!今、私……天の声が聞こえましたよ?!」


「アンちゃんは何をバカな事言ってるの?」


「杏凪さん……面白いです……クスッ」


颯葵も遥花もいつの間にか落ち着きを取り戻していた。


―――私……狐にでもつままれちゃったのかな。


杏凪は頭を抱えながらも二人の後を付いて行った。


デパートの中は暖房が効いていてとても暖かい。

クリスマスも近付いているので、店内はクリスマスムード一色になっているらしい。

至るところにクリスマスツリーが立っていて、売店では「XmasSALE」の文字が掲げられている。


「それで二人は彼ピに何を贈るのかな?」


颯葵は非常に機嫌良さそうにニヤニヤとしながらこちらに聞いてくる。


「私は蓮くんに……財布を贈るの!」


「そっかー。アンちゃんらしいわね……。遥花ちゃんは彼ピに何を贈るのかな?」


さっきよりまして颯葵はニヤニヤとしているのだが、遥花は全く気にも止めない。

というよりは真剣に考えていて颯葵を見ていない。


音絃くんが貰って嬉しいものって……なんでしょうか……?

音絃くんが欲しがるもの……。


「遥花ちゃん!」


「はいっ!」


「私とアンちゃんはとりあえず財布を見に行くけど……付いて来る?何かいいものあるかもよ」


颯葵は微笑みながら手招いている。

遥花もなんとなく颯葵に付いて行けば、それが見つかる気がした。


三階のブランド店に来た遥花は相変わらず頭を抱えているのと対照的に、杏凪はどの財布にしようかなと、とても楽しそうに悩んでいる。


音絃くんが欲しいと思うものって本当になんだろう……。

いつだって優しい音絃くんなら、「俺は何も要らないよ」って言っちゃいますよね……。

いつも一緒にいるのにそんな事も分からないなんてダメですね。


「遥花ちゃん……私に悩んでいる事、相談してくれない?遥花ちゃんは悩みをすぐに背負い込む頑張り屋さんみたいだけど、分からなかったり、困ったりしたら誰かに相談する事も、時には大切だよ」


いつもは明るくて元気な杏凪さんのたまに見せるあの天使のような包容力は母親譲りなんだと分かりました。


親子揃ってとても仲が良く、そして優しい。

そしてそれはまた辛い気持ちに変わってしまった。


「颯葵さんは杏凪さんと仲がいいんですね……」


「そうよ。私は自分の娘である、都魅杏凪を心からの愛しているわ。こんなに身体も心も成長してくれて可愛くない訳がないじゃない……。私にとって自分の子供を愛せない親は、親失格だと思うの。どんな理由があろうと産まれてきた子には罪はないもの。それを子供に八つ当たりする親はもう親とは呼べないと思うわ。でも、これは一人の女子高生の親としての感想であって、これが必ずしも正しいとは限らないのは覚えておいてね。そしてこれを聞いてどう思うかも遥花ちゃんの自由だから……」


そう言って杏凪にそっくりな顔で微笑みかけてくる。

本人の杏凪は目を輝かせながらさっきと同様に蓮へのクリスマスプレゼントを選んでいた。


――温かいな……


遥花は心が自然と温まるのを感じながら、颯葵に相談をした。


「分からないのが当たり前じゃないかな?」


「え……?」


「一番近くにいるからこそ知らない事はいっぱいあるよ?だから落ち込まないでいいし、全てを解ろうとしなくてもいいの。誰にでも秘密にしたい事はあるし、遥花ちゃんにも心当たりがあるんじゃないのかな?」


その意味を理解した遥花は恥ずかしさを感じ、顔がまた急激に赤くなった。


「遥花ちゃんはほんとに可愛いね……。私からのアドバイスは相手が欲しいものじゃなくて、遥花ちゃんが相手に渡したいと思うものを選ぶといいかもね!」


「私が音絃くんに……渡したいもの……」


いつも格好良くて、いつも優しくて、いつも私の事を一番に考えてくれて、いつも私を守ってくれて、いつも私の隣で笑ってくれる音絃くんに、私は何を贈りたい……?

そして強欲な私が辿り着いた結論、音絃くんに贈るプレゼントは――――――


「颯葵さん。ありがとうございます。私……音絃くんに贈りたいプレゼント決まりました!」


「そっか……因みに私が聞いてもいいのかな?」


「勿論です!」


遥花は颯葵に耳打ちで伝える。

そして……赤くなったのは颯葵の方だった。


「遥花ちゃんとてもいいよ……!私……不覚にもキュンと来ちゃった」


結局、その後各自買い物が終わり、家路についた。

音絃はまだ帰ってきておらず、家は静まり返っている。


「音絃くんの為に、温かいコーヒーを入れないと!」


遥花はせっせとコーヒーを入れ始める。

音絃くんが帰って来るまであと少し。


――早く帰って来ないかなー!


幸せな鼻歌を唄いながら、愛おしい彼の帰りを待つのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜後書き〜


遥花さんの音絃くんに贈るプレゼントは如何に?

颯葵さんは私の母をモデルとして使っています。

次話からはクリスマス編です!お楽しみに(o´罒`o)


今日の雑談タイム〜


遥花さんのプレゼントを読者のみなさんも是非予想してみて下さい!コメント欄に書いていただければ答えはお教え出来ませんが、何らかの反応をしたいと思います!

因みに音絃くんも、買うものを決めてらっしゃいます……。


余談ですが……★400突破しましたm(_ _)m

滅茶苦茶嬉しいです!

今後とも二人を温かく見守って頂けると幸いです!

ではまた次話でお会いしましょう!

(´Д`*)ノ

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