第30話 球技大会ですっ!①

「おはようございます。音絃くん」


「ん……おはよう遥花」


音絃は身体を起こして目を擦りながら意識をしっかりさせようとする。

遥花は音絃の前だけで見せる柔らかな微笑みを浮かべながらベットの上に座っていた。


「それでさっきから気になってるんだが……なんで遥花は俺の上に乗ってんだ?」


「音絃くんを近くで感じたくて……」


遥花の悪気がない純粋な表情は注意する気を喪失させる。

寝ぼけていてあまり重要視していなかったが、この状況を健全な男女の関わりとは誰も思わないだろう。

いつもなら動揺する音絃だが、今日はまだ完全には覚醒していない為か、自然とそういう事はない。

いつも小悪魔な遥花にやられっぱなしでは割に合わない。

ここらで仕返ししてもバチは当たらないはずだ。


「遥花さんお願いがあるんですがよろしいでしょうかね?」


「はい……?どうしましたか」


「俺はまだ寝ぼけているらしいから手でも握ってくれませんか?」


幾ら遥花でも恥ずかしくて出来る筈がない。

少し恥じらう顔が見れればそれで満足なので、そこで冗談だと言えば問題はないだろう。

そう思っていたのだが、音絃の思惑は大きく外れて遥花は音絃の手を両手で握った。


「音絃くんの手……大きくて温かくてとても安心します」


恥じらいの顔を見せたのは音絃の方だった。

遥花の顔を見るに恥じらいの様子は少しもなく、おそらくは自分がやっている事の恥ずかしさを理解していないのか、あるいは分かっていてからかっているのか。

どちらにせよ音絃が完敗した事は間違いない。


「その……悪かったよ。こんな事言って……」


「音絃くんが望むならいつでもいいですからね」


どうやら答えは前者のようだ。

この現状を遥花に説明したら顔を熟した林檎のように赤く染めるだろうが、そんな事をしたら今日一日は話してくれなくなる。

夕食も作ってくれなくなる可能性もあるのでそれは却下だ。


「とりあえず今日は球技大会だから早く学校へ行こう」


「身体を動かしておきたいですもんね」


「いきなり身体を動かすのは怪我の元だからな」


そして二人でリビングに向かう。

その間、遥花は手を離してはくれなかった為、心臓の方はいきなり激しい運動を強いられる事になった。


学校のグラウンド

音絃と遥花は朝早くに学校に登校した。

まだ誰も来ておらずグラウンドも空いている。

コートはもう既に準備されており、対戦表も掲示してあった。


「遥花たちは勝てそうか?」


「勝ちます。いえ勝たないといけません。勝たないと音絃くんのご褒美が貰えませんから!」


「そっちが理由かよ……それでなにをお願いしたいんだ?」


確かに勝負をするなら勝ちたいとは思うがそこまで熱くなる必要もないはずだ。

熱くならないといけない程のご褒美だと考えると不安になってくる。

叶えられる願いなら叶えたいが、無茶なものは断らざるを得ない。


「それは……勝ってからお伝えしますね」


「余計心配になってくるんだが……じゃあ俺も勝ったら伝えるわ」


「心配しないで下さい。大したお願いじゃないですから」


「まあ、勝つさ。今はこれから始まる試合に集中しようぜ」


勝ったら伝えるというフレーズは告白フラグにも聞こえて少し気が引けた。

これ以上この話を聞いていたら本当に負けそうなのでここで切り上げておく。


「誰も居ないし練習しようぜ」


「はい!学校で音絃くんと関われるだけで嬉しいです」


「なんでそうなるんだよ……。少しは自重してくれ……」


遥花の不意打ちを連発されながらもギリギリまでグラウンドでの練習は続いた。

やはり文武両道と言われるだけあってボールの止める蹴るは完璧でうちの女子チームは勝てそうだ。


そしてグラウンドに人が集まりだして開会式の時間が迫ってきた。

生徒玄関から女連れの男子が出てきたと思えば見慣れた顔のあいつだったのでは気付かないふりをする。


「いやこっち見てたのバレバレだからな……てかなんで目を逸らすんだ?見慣れてるだろ」


「いや……仲睦まじいなと思ってな」


「あれー黒原くん……はるっちとなにかあったのー?」


「なにもねーよ……」


二人はよく訳の分からない邪推をしてくるが、遥花と出会ってからはその邪推もよく当たっている。

当たっているからとあった事を話す訳はないのだが。


「まあ、とりあえず今日は頑張ろうぜ親友」


「機嫌いい時だけ親友使うのやめろ」


蓮は杏凪に良いところ見せようと張り切っている。

杏凪も蓮に良いところを見せようとしているようだがそう上手くはいかないだろう。


「皆さんおはようございます」


「白瀬さんおはよう」


「はるっちおはよう!もふもふしていい?」


「もふもふってなんだよ……」


四人での邂逅もハロウィン以来で久しぶりの顔ぶれだ。

だが今回は前回とは少し違う。


「杏凪さん……今日は勝たせて貰いますよ」


「言うね……はるっち。悪いけど手加減は出来ないからね!」


遥花と杏凪の睨み合う目線の間には火花が散っているように見える。

負けられない女子同士の闘いって感じだ。


「白瀬さんは誰の為に勝とうとしているのやらー」


「誰の為とか遥花にそういうのはないだろ。都魅は違うんだろうけどな……」


「あれだよ。勝ったら音絃になにかして貰うつもりとか?」


「……ないない。遥花がそんな事ある訳がない」


どこまで知っているかと聞こうとしたがなんとか踏ん張る。

また自分から墓穴を掘るところだった。

蓮の勘が妙なところで鋭いのは相変わらずのようだ。


『開会式が始まりまーす。整列をよろしくお願いします』


「もう始まるし、整列するか」


「そうですね。私も頑張って来ますね」


各自で荷物を置きにいった後クラスに集合する事になった。

荷物と言っても水分補給用の水筒に汗を拭く用のタオルだけしかない。

早々と荷物を置いてからクラスの列に並んだ。


その後すぐに開会式は始まった。


『選手宣誓 宣誓者 白瀬遥花』


「はい」


クラスだけでなく同席している全学年が騒めきだす。

勿論、音絃もこの事は知らなかった。


「宣誓 我々選手一同は、楽しむ事を忘れずフェアプレーでそれぞれの目標の為に闘い抜く事を誓います。代表 白瀬遥花」


遥花が宣誓を終えると雷鳴の如く、学校中の男子生徒が咆哮する。

これを見れば遥花の人気っぷりは一目瞭然だろう。

こうして球技大会が幕を開けた。



◇◆◇◆◇



「絶対に奴を潰してやる……いやそれだけじゃぬるい。半殺しにしてやる……」


音絃や遥花以外にも別の思惑が動いている事は知る由もない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜後書き~


球技大会の競技自体は次話からです……すいません

遥花さんも日を重ねていくに連れてどんどん大胆になっていきますね……音絃くんは耐えられるか?

別の人の思惑も入り交じる球技大会編開幕です。


今日の雑談タイム〜


あと十人でフォロワー千人だァァァ

さてと……次の目標は2000人

レビュー星500

布教よろしくお願いします(>人<;)


最近少し疲れました……

物語を描くことは楽しいですけど、一日2500文字はきついです。

投稿ペース少し遅れる事もあります……

ご容赦ください……

では次話でお会いしましょう~

.(ε`*)♪βyё-βyё☆

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