第28話 遥花の策略
「それで音絃くんやー
「まあ、それなりに?」
「そか……もう心配なさそうだな」
後日
昼休みに蓮と駄弁っていると先日の事を思い出したようで聞いてきた。
本当に心配をしてくれている事に少し胸が熱くなるのを感じる。
「蓮に心配されるとかこの世も世紀末を迎えそうだな……」
「音絃にそんな事言われたらもう世界の終末だよ」
「返しが独特なんだよな……」
「表し方が独特なのは誰だよ……ったく」
あれからあの胸のつかえは無くなりもう気にならない程度になっていた。
学校での噂はまだチラホラと聞くがそこまで気にならなくなり、遥花もいつも通りの生活を送っているようだ。
「そんでさ……球技大会が近々あるじゃん?」
「そういえばそうだったな……」
球技大会
それは毎年この学校で夏休み前と冬休み前に開かれているレクリエーション的な催し物だ。
今年の冬休み前の球技大会は急遽、早めに行われる事になった。
運営しているのは生徒会なのだが、早めた理由は特に発表されていない。
音絃に取って運動はそこまで苦痛なものではないのであまり気にならないが、運動が嫌いな人は文句を言っているようだ。
「種目を何にするかって話か?」
「そうそう。俺はサッカーにしようと思うんだが一緒にどうだ?」
種目は三つでサッカー、バスケットボール、卓球に分かれる。
音絃がどれに行くかと言われるとサッカーだ。
遊びではあるがよく公園でボールを蹴っていた事もありそれなりに得意な方だと自負している。
「俺もサッカー行くよ。でも蓮は中学時代バスケしてたって言ってなかったか?」
「そりゃあ勿論、杏凪がサッカーに行くからそれを見る為に決まってるだろ?」
「ごめん……聞いた俺がバカだったよ」
結局その後は蓮と杏凪の惚気話を聞かされた。
見ているだけでお腹いっぱいだというのにその上で甘々な話をされて胸焼けしそうだ。
「噂をすれば……」
蓮の目線の先には杏凪の姿がある。
杏凪も蓮に逢いに来たようで姿を見つけるとすぐに駆け寄って来た。
「すまん……ちょっと飲み物買ってくるわ」
「おう、行ってらっしゃい」
音絃はこの場を早々と離脱し、校内に設置してある自動販売機に向かう。
一階まで降りると自動販売機の前で遥花が飲み物を選んでいた。
学校の中では他人のフリをしないといけないので自然に遥花の横に並んで飲み物を選ぶ。
「こんにちは……」
「どうも……黒原さん」
「今は誰もいないから改めなくていいよ。だけど声は小さくしてくれ」
遥花も周りに誰もいないのを確認すると表情と口調を緩める。
その聖女様の仮面は見事な物で音絃の前でも他人を演じきっていた。
「分かりました。学校でこうして話すのは二回目ですね」
「ああ、あの屋上の時以来か……」
「それと今日の夕食は何がいいですか?」
「ハンバーグ……がいい」
音絃は一瞬、ロールキャベツを頼もうとしたがやめておいた。
あのハロウィンの日に遥花と約束した内容を今果たすべきじゃないと思ったのだ。
遥花とは既に深い繋がりがある事は音絃自身も分かっているが、関わりを繋ぐ約束を一つも手離したくないという気持ちになった。
「ハンバーグですね、分かりました。とびっきり美味しいのを作りますね!」
「ありがとう。それと球技大会は種目は何にするんだ?」
「そうですね……音絃くんの姿が見たいので音絃くんと同じ球技に行きたいです」
また平気で恥ずかしい事を言う遥花を微笑ましく思いながら自動販売機にお金を入れる。
外では聖女様の仮面を付けているのでボロが出る心配はないが仮面を外した遥花は何を言い出すか分からない。
「その……遥花。もう少し発言する内容は考えような?」
「音絃くんだから言うんですよ?」
学校でも問題なく遥花の小悪魔モードは発動するらしい。
この可愛らしい笑顔が学校でも見られた喜びを噛み締めながら缶コーヒーのボタンを押す。
微糖にしようと思っていたが遥花に逢ってからブラックに変更した。
甘い砂糖の後はブラックじゃないと流せないだろう。
「とりあえず恥ずかしいからやめてくれ……」
「また家に帰ったらたくさん言いますね!」
「もう勘弁してくれ……」
そのまま昼休みは終わり授業開始の予鈴五分前のチャイムで二人は教室に戻った。
五校時はLHRで丁度話していた球技大会の種目振り分けがクラスで行われた。
聖女様と一緒の種目に出ようとまた遥花の周りを囲んで屯っている。
「白瀬さんが行く種目に俺たちも行くぜ」
「白瀬さんはどこに行くの?」
「私はバスケットボールに行こうと考えていますよ」
その遥花の一言でクラスの半分がバスケットボールに移動した。
勿論だが音絃と蓮は最初からサッカーを選択している。
「誰かー!卓球とサッカーに移動して頂ける方はいませんか?とりあえず今、卓球とサッカーにいる方は確定にしますねー」
これで無事に音絃と蓮は無事に確定したが、サッカーに行きたいと言っていた遥花は未だにバスケットボールから動いていない。
「俺、バスケから卓球に移動します」
「私、バスケットボールからサッカーに移動します」
バスケットボールを選択していた人が少しずつ移動をし始めて女子サッカーの定員が残り二人となった時に遥花は動き出した。
「私がサッカーに移動します」
突如、手を挙げた遥花にクラスの全員が驚いていた。
バスケットボールに重い腰を下ろしていた陽キャ組の男子たちも慌ててサッカーに移動しようとするが時既に遅し。
男子サッカーは既に埋まっていて移動出来る状態ではなかった。
「皆さんよろしくお願いしますね」
遥花は聖女様の微笑みを浮かべる。
これが最初から遥花の予定通りだったとしたら末恐ろしい聖女様だと音絃は密かに思った。
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〜後書き〜
次々と押し寄せてくる行事ラッシュです……
ちょくちょく日常回も挟んでいきます〜
毎話甘いです。
砂糖が日に日に増し増しになりなりますます。
二人の甘い物語で読者の気持ちが甘くなると嬉しいです……!
今日の雑談タイム〜
文量はこのまま変えずに行く事にしました〜
皆さんコメントありがとうございました!(´▽`)
作者は文を考えるのに糖分を使い過ぎるので皆さんのレビューやいいねという名の糖分を下さい笑
最近の新規の方が少なくなっています。
皆さんで広めて頂けたら嬉しいです……
本当にいつも温かいコメントをありがとうございます。
作者の生きがいにまでなっていますよ(笑)
ではまた次話でお会いしましょう~!
(^o^)//
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