第25話 聖女様と友人とハロウィン②

こうして無事始まったハロウィン仮装パーティーだったがやはり遥花は恥ずかしいらしく毛布にくるまったままでいる。


「音絃のゴーストフェイスの仮面取ったらそれに見えないから笑いそう」


「意味分かんねーよ。てかそれってなんだよ。大体あの仮面は外を見る為の穴もないんだぜ?」


この仮面には息を吸う為の通気孔もなく少しつけているだけで息が苦しくなるのだ。

おまけに前まで見えないとくればそりゃー外していたくもなる。

現に何も出来ないのでこうして外しているのだが。


「都魅のその仮装服凄い作り込まれてるな」


「黒原くん何言ってるの?これははるっちが作ったんだよ?」


「あ、そうなのか?」


「そういえば言ってなかったが白瀬さんが作ったのは音絃と杏凪の仮装服で、杏凪が作ったのが俺と白瀬さんの仮装服って訳だ」


要は遥花と杏凪がそれぞれの仮装服を作ったという事になる。

遥花の今の現状を作り出したのは……


「都魅……お前の仕業しわざか」


「そうだよー!はるっちなら絶対似合うって思ってた!」


「じゃあ……なんで私の色々な情報を知ってるんですか?」


「ん?あ、それは抱きついた時には大体全部分かったよ?」


その杏凪の一言に色々な情報の意味を音絃と杏凪は理解した。

この会話を男子が聞いてはいけない気がするのだが気のせいだろうか。

そんな事を考えている音絃と蓮を置いていくように話はどんどん進む。


「え?!そうなんですか?」


「えへへ……私の特技」


音絃は女子二人に聞こえないように蓮の耳元で話す。


「お前の彼女は変なところで逸脱いつだつした才能を持ってるな……」


「そこも可愛いだろ?」


「いや褒めてないから……」


こちらの会話には全く気付いた様子はなくガールズトークを繰り広げていく。

魔女の格好をした杏凪と露出の多い黒猫の格好をした遥花のたわれる姿は見ていけないものを見ているような気がした。

簡単に言うと大変いい目の保養ほようになったと言う事だ。


「いや……やっぱりダメだ」


音絃は遥花に再び毛布をかける。

こんな姿を男子の前ではさらしてはいけない。

女子同士ならまだしもここには男子が二人もいる。


「そんな格好をしてたら風邪をひくからな……」


「音絃くんやーこの部屋暖房のおかげで暖かいから風邪は引かないんじゃないかな……?」


「やかましい……とにかくダメだ。遥花は上着があるから着て来てくれ」


「音絃くんがそう言うなら……?」


音絃に言われるがままに立ち上がりリビングを後にした。

また少しだけ寂しそうな横顔をしていたので、二人が帰った後に誤解を解く事にしよう。

さっきから蓮と杏凪の視線が痛い。


「黒原くんは過保護だね……」


「俺も杏凪と同感だ。白瀬さんは愛されてるねー」


「お前らなんの話だ?」


話の内容がいまいち掴めず聞き返すが返事はなく代わりに満足気な表情をした二人が首を縦に振っている。

結局二人の真意はよく分からないまま遥花がリビングに戻って来た。

その後は四人でトランプやテレビゲームをして楽しんだ。



◇◆◇◆◇



音絃が画面から目を離して壁にかかっている時計に目を向けると時刻は十二時を示していた。

遥花もそれに気付いたようで音絃と顔を見合わせる。


「皆さんそろそろ昼食にしませんか?」


蓮も杏凪も手を止めて振り向く。


「待ってましたー!はるっちの手料理食べたい!」


「今日のメインイベントだな」


「おい、お前ら。今日は仮装がメインじゃないのかよ……」


遥花は「お口に合うといいのですが」と言いながらキッチンへと向かう。

音絃も遥花を手伝う為にキッチンへ向かった。


「なんか俺に出来る事はないか?」


「そうですね……取り皿とかコップの準備をお願いしてもいいでしょうか?」


「了解だ。じゃあやっとくから……」


「もう一ついいですか……?」


「おう、なんだ?」


遥花は下を向きながらうじうじしている。

自然と表情が緩んでいるところから初めての友人との集まりを楽しんでいるのだろう。

今年になってから何度か集まった事がある音絃でさえ今が楽しいと感じるのだから遥花はそれの倍以上に楽しいと感じているのかもしれない。


「また今度も集まりたいって言いたいのか?」


遥花はコクコクと頭を縦に小さく振る。

音絃の衣装を軽く掴む遥花の手はいつまで経っても離してくれそうにない。


「二人がお腹を空かせて待ってるから行こうぜ」


「そうですね……音絃くんの胃袋を掴んだ料理を堪能して貰いましょう!」


「事実だから否定はしないが少し恥ずかしいからやめてくれ……」


異世界に転生する主人公は無自覚チート無双をよくしてるが遥花の場合、無自覚クリティカル無双をしていると言っていい。

だから音絃の中で遥花は異世界に転生した主人公となんら大差がないと個人的に考えている。


「うお……ピザじゃねーか。それに南瓜かぼちゃ?」


「はるっち……さすがにその南瓜は飾りだよね?」


「いえ……食べれますよ?ほら!」


そう言って南瓜のへたの部分を持ち上げると頭が外れて中にはグラタンが入っていた。

見た目もそうだが漂ってくる美味しそうな匂いに思わず三人は息をむ。


「まだまだ持ってきますねー」


「これだけでも豪華なのにまだあるの?!」


「あと三品ほどありますよ?」


遥花が作った料理を音絃は次々と運んでいく。

机の上に一品増える度に二人の瞳も期待の光が増していった。


三品目は南瓜の形にかたどったオムライスで見た目も香りも完璧。


四品目はハロウィンサラダで乗っているトマトに顔のデコレーションがしてあって可愛い。


最後の一品を取りにキッチンに向かうと遥花は先に料理の内容を教えてくれた。


「最後の五品目は音絃くんの大好きなロールキャベツです!」


「これを作る為に出ていかせた訳だな」


「その……すいません。寒い中外に出てもらって」


「なんで謝る?俺、今めちゃくちゃ嬉しいんだ。本当にありがとな」


「そ、そ、その……良かったです。音絃くんの笑顔が見れて……」


心から嬉しい時に遥花が見せる二ヘラとした笑顔を見せてくれる。

今回の音絃は遥花の言葉を聞き逃さなかった。

急激に体温が上がるのを感じると天井を向く。


純粋な笑顔と相手への気持ちは人の心に真っ直ぐ伝わる。

遥花はそれが出来る人間らしい。

箱入り娘だった遥花は純粋無垢、それ故に傷つきやすく誰でも簡単に信じてしまう。

それが分かった瞬間に音絃はどうしようもなく悲しくなった。

遥花を大切にしようと思う気持ちが一層高まった音絃だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜後書き〜


音絃くんスマイルが見たいと思う人いないかな?

作者の頭の中ではこういう感じっていうイメージはあるけど……

いつもは前髪が目まで隠れるくらいの髪の毛を伸ばしてるけど笑った時に髪の間から見える笑った目には魅力があります。


爽やかです。とにかく爽やかです。

音絃くんは気付いてないかもしれないけど遥花さんの前でしかその笑顔は見せてません。

二人だけが知っている素顔っていいですよね……


今日の雑談タイム〜

作者はDBDやってるんですけど好きなパークは貪られる希望です……

略のデボアホープってかっこよくないですか?

ではまた次話で( ー̀∀ー́ )

(^o^)/( ᐛ👐)バァァァァァ

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