第19話 友人へのカミングアウト②

「音絃……嘘だろ?そんな訳ないよな」


「ああ、ほんとだ。てか現実を見ろよ」


「黒原くんって……意外とモテるんだね」


「おい……バカにしてるのか?」


一昨日おとといの一件で遥花との関係を蓮と杏凪に話したのだが、この通り遥花に来て貰ったにも関わらず信じて貰えないというよりいじられてしまっている。


「なんだ……そのつまり音絃の隣に聖女様が住んでいてほとんどの時間一緒に居ると?」


「あの……聖女様呼びはやめて欲しいです……」


そういえば遥花は聖女様呼びされるのが嫌いだったのを今更思い出した。

長い事口にしていなかったから忘れていた。


「すいません、不快な思いをさせてしまって……」


蓮の真剣な態度を久しぶりに見た気がする。

普段は周りがよく見ていて気が利く奴だから滅多にそういう事はなかった。

謝られるよりありがとうと言われた方が嬉しいと思うだろというのは蓮の受け売りだ。

前に何かのアニメキャラの受け売りだと蓮は言っていたが音絃はそれを見た事がないから分からない。


「もうほとんど同棲してるようなもんじゃないですか?お二人さん!」


半分興奮状態の杏凪がニヤニヤしながら言う。


「……違うって!ただ一緒にいるだけだ……」


「そ、そ、そうですよ!音絃くんの家によく居ますけど……」


音絃と遥花の回答は全く同棲を否定する事になっていないのに気付いていない。


「白瀬さんはこっちで話しよ!」


「ちょっと……都魅さん?!」


遥花は杏凪に手を引かれて校舎の中へと入っていった。

少し心配だが相手は杏凪だから大丈夫だろう。


「料理も作って貰ってるんだろ……もしかしてあの弁当ってまさか……」


「そうだよ……遥花に作って貰ったんだよ……」


「毎朝弁当作ってくれるって……奥さんかよ」


「ち、ち、ちげーよ!そりゃ……遥花の作る料理は美味いけど……」


確かに遥花の料理を毎日食べてすっかり胃袋を掴まれているのは事実だ。

だが関係上は利害が一致して成り立った訳で、いくら特別な感情を持とうがそこへの干渉は出来ない。


遥花自身が周りの人の事を知らないせいで音絃の事だけしか見えていないらしいが、じきに離れていくだろう。

遥花は魅力的な女性だ。

だからこそ、それに釣り合う相手がいるはずで、出会えば音絃の存在は邪魔になる。

その時までは一緒に居るつもりだ。


「遥花はさ……社会の事を全くという程に知らない箱入り娘なんだよ。だからさ……都魅と仲良くして欲しいって思ってこの事を打ち明けたんだ」


「なるほどな……余程白瀬の事が大事なんだな」


「ああ、大事だ」


もう迷う事なく自信を持って言える。

自分でも分かっている隠す事のないまぎれもない事実だ。


「そっか……音絃にも俺以外に信用出来る人が現れたんだな。ほんとに良かったぜ」


「……蓮を信用した事なんて……あったかな?」


「真面目な話をしてる時に茶化ちゃかすなや……ったく」


「蓮くーーん!」


校舎から手を振りながら杏凪が出てきて、その後ろを遥花が付いてきていた。


「どうしたんだ杏凪。やけに上機嫌じゃないか?」


「蓮くんよく分かったね!杏凪ね……今とっても嬉しいの!」


「遥花もどうしたんだ。口がふにゃふにゃになってるが?」


「い、いえ!なんでもないんです……でも嬉しい事はありました!」


杏凪は遥花の手を取り満面の笑みを浮かべる。

遥花もそれを照れながらも受け入れていて、とても楽しそうだ。


「私たち友達になりました!」


「もうなってたのかよ……遥花良かったな」


「はい!今とても嬉しいです……音絃くんありがとう!」


そう言い放ち見せた笑顔は最早もはや、聖女様ではなく青春を楽しんでいる一人の女子高生のそれだった。

この笑顔を誰にも見せたくないというこの気持ちの名前を音絃自身も理解している。


「それは遥花が頑張った結果だよ。俺は何もしていないしな」


「そういう謙虚けんきょなところも……その…好き………ですよ」


「そっかありがとな……俺は謙虚なんかじゃないけどな」


音絃は言いたい事をはっきりと言えない方が多い。

遥花こうやって褒めてくれたがお世辞として受け取っておこう。


「音絃……お前まじか」


「はるっち……確かにこれは手強いね。長期戦の覚悟をしよっか」


「はい……」


「お前らなんの話を……」


「うっせーこの鈍感野郎が。行こうぜHRが始まる」


結局、音絃は蓮が言った事の意味を理解出来ず教室に戻った。

教室に戻ったからといって遥花と話すようになる訳でもなくいつも通りの生活を送る。


もし、あの日に遥花を受け入れていたら俺だけを見てくれたのだろうか……甘える遥花も、小悪魔みたいにイタズラな遥花も、恥ずかしがって顔を真っ赤にする遥花も……って何を考えているんだ俺は……


気をしっかりさせて授業に戻った。


授業が終わり音絃は家に帰ってきていた。


「音絃くんおかえりなさい。今日はグラタンを作りますね!」


「グラタンか……美味しそうだな」


「楽しみにしていて下さいね!」


今日の一件で友人が出来てやはり嬉しいのか、話す言葉も弾んで聞こえる。

グラタンはその嬉しさの表れだろう。


「遥花の作る料理ならなんでも美味しいよ。もう胃袋は既に掴まれてしまってるからな……」


「えへへ……もっと私から離れられなくしちゃいますからね」


「お、おう……心臓に悪いから程々に頼むよ」


「はーい」


幸せは伝染すると言うが本当にその通りだろう。

より一層の明るくなった遥花を横目に、今日残りの時間を過ごしたのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜後書き〜


ゆるふわ甘々な展開になって来ましたね〜

私はこの子たちを生み出したある意味で親ですが、羨ましすぎて泣きそうです……

最近は寝ている間の夢によく音絃と遥花が出てきます。私は管理者みたいな位置にいて見守る事しか出来ないこのもどかしさが……

音絃くん学校では前髪を下げて目立たないようにしていますが髪を上げると超イケメンです……

蓮くんはそれを知っています〜


てなここらで雑談タイムなり


アニメイト行って、本買ってきました……


東 ふゆ先生の

『顔に出ない柏田さんと顔に出る太田君』

が最高過ぎて悶絶してました( ´•ᴗ•ก)

あのラブコメは反則級です!


後、前回返信ありがとうございますm(*_ _)m

主の推しキャラは

『とある魔術の禁書目録』の一方通行です!

共感者いたら語り合いましょう笑


ではまた次話でお会いしましょう🎶

バイバイ(ヾ(´・ω・`)

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