第20話 友人の救援

音絃と遥花は今日の夕食の買い出しの為、近所のスーパーに来ていた。

今日の夕食はロールキャベツを作るらしく音絃の好物なのでひそかに楽しみにしている。


スーパーはすっかりハロウィンムードになっていて、いたるところに顔の形にくり抜かれた南瓜かぼちゃが置かれていた。


「そっか……明後日あさってはハロウィンだったか」


「そうですね。食材が安くなって助かります」


「どう考えても高校生が言う台詞セリフじゃないんだが……」


「だって事実ですし……それに音絃くんにたくさん料理を食べてもらう方が私は嬉しいですから」


「そうか……ありがとう」


たまに遥花から放たれる無自覚クリティカル攻撃に音絃は苦しんでいた。

当の本人が気付いていない事が一番の問題なのだが、言おうとするにもこんな内容では言いづらい。


音絃は自分と葛藤していると見覚えがある服を着た集団が目につく。


「遥花隠れろ!」


「えぇ……いきなりどうしたんですか?」


「あそこに同じ高校の制服着た集団がいる」


「あ、ほんとですね……気付きませんでした」


学校内では勿論だが学校外でも二人の関係は秘密の為、こうして常に周りに気を配らないといけない。


やはり外出時は個々にした方がいいのだが遥花にそうしようと言ってもよく断られる。

なんでも「音絃くんと過ごせる時間を無駄にしたくないです」との事。

そんな事を言ってるが荷物持ちがいないと大変だからみたいなそういう理由だろう。


「暫く動けそうにないな……」


「このまま待機するしかないですね」


まだ打開策はあるにはあるが、遥花は嫌がるかもしれない。


『そんでさーあいつの好きな人が……』


『まじかよ……てかそれ俺らに言っていいのかよ』


話し声はどんどん近付いてくる。

どうこう言っている暇は今の音絃にはないらしい。


「遥花は買い出しリスト持ってるか?」


「え……あ、はい!これです……」


「よし……じゃあ遥花は本屋で本でも見ながら待っててくれ」


「え……その大丈夫ですよ。じきにあの人たちもどこかに行きますよ」


「そんな事を言っている暇はない。すぐそこまで来てるんだから急いでくれ!」


「分かりました……」


遥花は音絃に買い出しリストを手渡して店を出ていった。

しょんぼりとした表情を見るのは少し痛々しかったが致し方ない。

何事もなかったかのように音絃は買い物を続けた。


「お?黒原じゃねーか?」


「おーまじか!偶然じゃん。何してんの?」


「見ての通り買い物だが……何か用でもある?」


よりによって出くわしたのがうちのクラスの陽キャ組だった。

この集団には聖女様こと白瀬遥花を狙う奴が多いと蓮からは聞いている。

早めに遥花を脱出させて良かったと心底安心した。


「これはこれは……誰かと思えばクラスの陰キャ、腹黒くんじゃないですか」


「なんだよ。会っていきなりそれかよ江口……」


こいつは江口雄人えぐちゆうと

なぜか分からないが入学した頃から音絃の事を目のかたきにしている。

ついこの前、朝っぱらから遥花に食事のお誘いを入れていたのは彼だ。


「用がないなら行くぞ……」


居心地が悪くその場から早く離れようと背を向けたが肩に手を乗せられ強制的に止められる。


「ちょっと待てよ……勝手に話を終わらせるんじゃねーよ」


音絃の肩の上に乗せられた手に力が入り、じわじわと痛みが伝わってくる。

雄人は元柔道部で握力も凡人とは比べ物にならない程強い。

おそらく肩にはあざが出来ているだろう。


「やめろよ……その手離してくんないかな?」


かなり痛いが顔には出さない。

音絃の中のプライドがそれを許そうとせず、ひたすらに我慢する。


「お前なんだよその目は……調子に乗んなよ」


「お客様の邪魔になる事くらい高校生なら分かるよな?ここはお前の支配する土地でもないんだから他の人の事を少しは考えてくれ」


「少しだけ痛い目見ないと分からないらしいな……ちょっと店の裏に来いよ」


「なんだよその昭和のヤンキーの体育館裏に来いみたいな台詞は……あ、勿論 丁重ていちょうにお断りします。買い物の続きもあるので……」


一刻も早くこの手を離してもらわないと痛すぎてさすがに顔に出そうだ。

雄人は赤鬼の如く顔が赤くなり、分かりやすく怒りを露わにしている。


「くそがっ……一度 粛清しゅくせいしてやるよ」


雄人は時と場も考えずに殴りかかろうと手を挙げる。

避ける気はなく殴られればその場で警察を呼んでもらうまでだ。

だが雄人が殴りかかる前にある少年の手によって静止された。


「おい……雄人。お前……俺のダチに手出したら許さないと言ったよな……?まずはその汚い手を音絃から離せ」


その少年の一言に雄人は素直に手を離し、そして一歩二歩と退く。


「なんでお前が居るんだよ……華園蓮」


「うるせえ。俺の勝手だろ。よう音絃!大丈夫か?」


「大丈夫だ。全く……現れ方格好良すぎるだろ」


「なんたって杏凪の前だからな……少しは格好付けさせろよな?」


蓮の指差す方向には確かに髪を下ろし眼鏡を外した杏凪が、隠れたところから手を振っていた。

驚いたのは杏凪の陰に隠れているが遥花がそこにいた事だ。


「本屋に行っとけって言ったのに……遥花がお前らを呼んだのか?」


「そうだぜー!たまたま近くまで来てたからな……」


「なんかこの前も同じような事が……ってまあいいや」


雄人が手を引いたところから蓮のクラスでの力の大きさが分かる。

音絃の方を向く時はヘラヘラとしているが雄人の方を見る時の蓮の表情は背筋が凍る程の冷たいものだった。


「雄人くんさすがに今日は引こう……」


「華園はやばいって……」


雄人の付き人たちはもう逃げ腰で形勢は完全に逆転した。


「黒原……次は覚えとけよ」


「雄人知ってるか?その台詞を吐いて逃げていくやつは大抵、モブキャラか雑魚キャラなんだぜ?」


「黙れ華園!次は邪魔すんな……」


雄人とその付き人たちはぞろぞろとスーパーを出ていった。

それを確認すると緊張が解けて身体に入っていた力が抜けると同時に肩に激痛が走る。


「くっ……」


「音絃……お前本当に大丈夫か?」


「遥花には内緒にしてくれ……」


「いや……ダメだ。というか多分バレてる」


遥花と杏凪が駆け寄って来てなんとか危機を脱却だっきゃくしたのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜後書き〜


蓮くんの現れたタイミングは本当に偶然です……

手を出されているのに助ける事が出来ない遥花さんは辛かったでしょう……

音絃くんはよく耐えた!偉い!


今日の雑談です〜


最近、新規さんがいないです……

レビュー数も増えてきて作者は喜んでいます


異世界転生系の小説も書いてみようと出しています

『劣等種に転生したので神々に叛逆します

〜最弱の成り上がり英雄譚〜』です……


是非呼んでください😝


告知になりましたすいません……


読んで下さる人がいると思うだけで生きる目的になります✨

これからも御愛読の程よろしくお願いします。

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