第14話 友人のいい思い出

「音絃くんやー話を聞いてくれないか?」


「どうした?遂に世界のことわりでも理解したか?」


「それを理解出来たら人類は苦労してないよ。そんな事よりダブルデートしたい……早く彼女つくれ。十秒以内に」


「それ下手したら世界の理を理解するより難しいかもしれんぞ。てか無茶振むちゃぶりすんな」


時刻は正午

昼食を取りながらいつものように蓮とどうでもいい事を駄弁だべっていた。


「最近持ってくるようになったその弁当って自分で作ったのか?」


「まあ、そうだな。自分で用意して来た」


言っている内容自体は大方おおかた間違ってはいない。

詰められている料理を作ったのは遥花だが、詰めて持ってきたのは音絃自身である。


「俺にも準備してくれよー頼むー」


「そんなにお人好しじゃねーよ。てか都魅に作って貰えし」


「一回だけ作って来て貰った事あったじゃん。覚えてないんか……」


「そういえば確か……」


あれは入学してから一ヶ月が過ぎようとしていた頃、当時は付き合いたての二人に音絃はまだ遠慮していた。



◆◇◆◇◆



「杏凪の作った弁当食べてみたいな」


「私が作ったので良ければ明日持って来ましょうか?」


「いいのか?やったー!楽しみだな」


音絃は二人のイチャイチャ会話を眺めていたが、この時止めておけばあんな事にはならなかっただろう。

今でもほんのわずかだが後悔している。


次の日の昼休み


「めっちゃ美味そうっ!食べていいのか?いいんだよな?」


「その……お口に合うかは分かりませんが、どうぞ召し上がって下さい!」


弁当の中身を少し覗くと、とてもいろどりが良く美味しそうだった。

ほんのり黄色く焼きあがった玉子焼きに、枝豆の串刺し、紅じゃけといった内容になっている。


蓮は嬉しそうに杏凪が作って来た料理を口に運ぶ。

蓮は今、人生最良の時を過ごしているのだろうと思っていた……が次の瞬間、地獄の底に落ちたようだ。


「ぐっ……う、う、う、美味いよ……ちょっとトイレ行ってくる……」


「行ってらっしゃい!」


顔を大量の汗を流しながら蓮は教室を出ていった。

杏凪は相変わらずニコニコとした顔をしている。


音絃は静かに蓮の今の状況を察して胸の前で手を合わせた。


(短い間だったが楽しかったぞ。安らかに眠れ)


そしてその日、蓮は教室に戻って来れずに早退し、学校を三日程休んだ。



◇◆◇◆◇



「まさか料理食べて死にかけるとは思わなかったよ」


「あの時は災難だったな。ほんの少しだけ同情した」


その後の事だが、杏凪は蓮が学校を休んでいる理由に気付いてめちゃくちゃに落ち込んでいた。


蓮が学校を休んでいる間は音絃が代わりに杏凪を宥めていたが全く意味がなかったらしく、結局蓮が直接 なだめて事は落ち着いた。


「まあ、なんだ。彼女持ちの宿命なんだよ(一部)。それを乗り越えて今があるならそれも良い思い出だろ」


「そうだけどさ……死にかけた事を良い思い出にするって……頭のネジ四本くらい抜けてるだろ」


「なんだ……今更自覚したのかよ。四本どころじゃない気がするけどな」


「このやろっ」


蓮は立ち上がったと思うと音絃が最後の楽しみに取っておいた玉子焼きを箸で掴み、そのまま口に放り込んだ。


「おまっ……やりやがったな」


「何これ……美味……」


それはそうだ。

遥花が作った料理はなんでも美味しいに決まっている。


音絃は遥花が作る料理のとりこになっていた。

もっと言えば遥花の料理がないと生きていけない身体になりつつある。

ついこの前までは家に帰れば電気ポットに水を入れカップ麺を食べるか、買ってきた弁当や栄養補給ゼリーを食べるのが普通だった。

最近は栄養バランスの良い食事をさせて貰っているので、身体も健康その物だ。


「音絃……お前こんな料理上手かったか?」


「まあな……」


「じゃあ今度食べに行くわ」


「却下だ。お前に食わせる飯は無えよ」


音絃が作っている訳じゃないとは言えず、遥花に作って貰う訳にはいかないので断っておく。

だからと言ってこれからも音絃の家で遊ぶ事を断り続ければ、何かと察しのいい蓮には勘付かれかねない。


「ケチー!いいじゃん少しくらいさ」


「飯はダメだが、遊ぶだけならいいぞ」


「しゃーねーな。飯は我慢しようじゃないか。んでいつ行っていいんだ?」


「ちょっと待て、予定を確認する」


そう言って音絃はスマホ取り出し、カレンダーを開かずにメールを開いた。

遥花に今週日曜は友人が家に来ると伝えておかなければならないからだ。

勿論、友人が一人しかいない音絃に予定なんかは無い。


「今週日曜なら空いてるがその日でいいか?」


「いつでもいいぜ!」


「じゃあ決まりな……日曜こそスマフラでボコってやるよ」


「やれるもんならやってみなっての」


そのまま昼休みを終わりを告げるチャイムが鳴り、各席に戻った。

授業中に少しだけスマホに目を落とすと遥花から返信が返ってきていて、『分かりました!楽しんで下さいね』との事。


遥花には友人がいないと前に聞いた事はあるが、心から信頼出来る人が見つかる事を切に願う。

一人というのはやはり心細いものだ。


それは世の中探せば一人がいいと思う人もいるだろうが遥花はおそらく違う。

一ヶ月程は一緒にいるがそう願うような人だとは思えない。


遥花にとって音絃は同居人に近い存在だと思われているのだろう。

だから遥花にとって友人に値していないんじゃないかと音絃は思っている。


遥花は授業を熱心に聞きながらノートに板書している。

あの成績だって人一倍努力した結果だろう。

首席を遥花に奪われた時の悔しさは今でも忘れていない。

だが今まで行われた三回のテストで毎回二位と悔しい結果に終わっている。


いや今はそんな事はどうだっていいんだ。

自分の意地を優先する癖をいい加減に治さないといけない。


結局、遥花の事ばかり考えていて全く授業に集中出来なかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜後書き〜


皆さんお楽しみ後書きコーナーの時間です笑

これを何人の人が見てくれてるのかな……

どうでもいい話でもいいので誰か話そう 泣


今回は遥花さん出てこなかったけどたまには男二人の会話もいいよね!?

ありゃ……ダメだったかな……?


次回、何か起きる…………?

次話でまたお会いしましょう!

ばいなら〜Bye(´・∀・)/

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