第11話 聖女様の苦労

「おはようー音絃。今日も来ちまったか……」


「おはよう蓮。なんだよ、来ちゃダメなのかよ」


「ダメじゃないけどさ、なんて言うかこう……また一週間が始まるんだなって思ってさ」


彼の名前は華園蓮はなぞのれん

この学校で唯一の友人……なのだろう。

部活には所属しておらず、成績も真ん中辺りと普通だ。

明るい性格でぞくに言う陽キャという分類に属していると言っていいだろう。

そしてもう一つ、蓮は彼女持ちだ。


「自覚が遅いんだよ。んで……教室のドア半分から顔を出している謎の生命体がずっとこっちを見てるんだが、あれは蓮の彼女か?」


「ん?ああ、杏凪居たのか。こっち来いよー」


「れ、蓮くんがそう言うなら……」


ドアの陰に隠れていた少女は、姿を見せてオロオロとしながらこちらに歩いてくる。


髪を二つ結びに結っているうえに眼鏡姿とくれば、誰もが大人しそうだという印象を持つだろう。

音絃自身も最初はそう思ったし、大方間違えではない。

一人前を除いては。


「蓮くんおはよっ!今日も蓮くんは世界一かっこいいよっ!」


「おはよう杏凪。今日も世界一可愛いよ」


「蓮くん……大好きっ!」


「俺も……大好きだよ杏凪」


とまあ、こんな感じで場も時間も気にせずに二人の世界に入っていく始末だ。


紹介が遅れたが彼女の名前は都魅杏凪みやびあんな

蓮の彼女で人見知りは激しいが、勉強は出来る方で成績も常に十番以内に入っている。

見た目も性格も大人しいが、このように彼氏の蓮がいる時だけは激変する。


この二人は学校でも有名なバカップルとして有名で、校内のほぼ全員が知っているだろう。


「イチャつくならとりあえず他所よそでしてくれないか?イチャつき病に感染したくはないんだ」


「音絃はしたくても出来ないだろ」


「うっせ」


「黒原くんもちゃんとしたらかっこいいのに……」


「面倒臭いし、目立ちたくないからこうしてんだよ」


高校では静かに目立たず生活をしていこうと思っている。

目立つ事はストレスの元であり、人気者になろうとする意味が理解出来ない。


このバカップルもまた二人の世界へ入っていき、やっと落ち着いた頃に教室に例の少女が入ってきて空気が変わった。


「おはよう白瀬さん」


「おはようございます。みなさん」


「おはようございます白瀬さん今日も美しいですね……よかったら今度食事でもどうですか?」


「いえ……お断りしますね」


遥花が教室に入ってくるやいなや、食事のお誘われてそれを断って、とても忙しそうだ。

普通の学校生活を送っていれば有り得ないだろうが『聖女様』や『女神様』と言われるような存在になればこれが日常なのだろう。

ひじをつき遥花を遠目に見ながら、また他人事のように考えていた。


「なあ音絃さんやー。さっきから聖女様の方を見てるようだけど気になるのか?」


「黒原くん……まさかだよね?」


杏凪が目を輝かせてこちらの返答を期待しているが別に言う必要がない為、適当に返そうと思う。


「あ、そんなに見てたか?」


「見てたよ!ガン見だったよ!」


「おう、さっきからチラチラ見てるのが俺には分かるぜ。まあ、お前の事を見る奴なんてこの教室にはいないだろうがな。後、杏凪はあんまり言ってやるな……可哀想だろ?」


「悪かったなボッチで。聖女様の周りがやけにガヤガヤしてるからちょっと気になっただけだよ」


聖女様を二日間も家に泊めたなんて言える訳がないので軽く誤魔化して答えておく。

いくら蓮が友人でも言えないことがあってもいいはずだ。

友人との上手い付き合い方が分からない以上、下手に話せないしそもそも音絃と遥花、二人の秘密だから話す必要もないだろう。


「だよなー。音絃が女子に、しかも聖女様に目をつけるなんて有り得ないよなー?」


「あの群がる男子のハイエナと一緒にするなよ。て言うか、女子も混ざっているんだが……」


「あの女子は聖女様と仲良くしようとしてるけど、本当の理由は意中いちゅうの男子が奪われないようにする為の牽制けんせいだろうな」


「さすが蓮くん……当たりだよ!」


「蓮ってさ……よく見てるよな」


いつもぽやっとしている蓮だが、多分このクラスで一番周りが見えているのはきっと彼だろう。

こうして音絃が静かに生活出来ているのも、もしかしたら彼のおかげなのかもしれないと考えたり考えなかったり。


「ん、そうかー?こんくらいは普通だろ。でも杏凪に褒められると嬉しいよ」


「蓮くんは私以外見ちゃやーよ?」


「あの……イチャつかないでくれるかな?それに蓮のその洞察力が普通だったら怖ぇーよ」


「音絃が無さすぎるだけだろ。この鈍感野郎が」


「うっせ」


始業の予鈴よれいが鳴ると杏凪は自クラスに戻り、蓮は自分の席に着いた。

音絃は元から自分の席に座っていたので動いていない。

さっきから動いているのは多分、心臓と目線だけだろう。

聖女様の席の周りにはまだたくさんの人が集まっていて各々で駄弁っていた。

当の本人である遥花にとってはいい迷惑だろう。


「邪魔になってるからどけよ」と言えればいいのだが生憎そんな勇気も気力もない。

学校では他人のフリをしなくては行けないのだ。

そう言う約束をしているからしょうがないのだと自分自身に言い聞かせた。


「授業を始めるぞー席に着け」


一校時目の数学の教師の一声に群がっていた生徒は各々の席へと戻って行く。


チラッと斜め前の方に座っている遥花を見る。

小さく溜め息をついているのが分かったが、すぐにこちらに気付いて、優しく微笑んでくれた。

家で見せてくれるあどけない笑顔ではなく、聖女様としての笑顔だったのは見て直ぐに分かる。

少しでも遥花の気が休まる場所にしようと音絃は決意しながら黒板に書き出された文字を板書した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜後書き〜


こちゃーすー廻夢です。

学校生活も書くようになります。はい。


失恋という文字はこの作品にはないです()

幸せな世界です……本当に幸せな世界です。

作者は頭お花畑なので、イチャイチャシチュエーションしか思い付きませんのでご了承ください。


クーデレ、ツンデレ、デレデレは大好物です〜

デレしかないのも乙な物ですよԅ( *´~`*ԅ)グヘヘヘ


じゃあここら辺でまた次の話でお会いしましょう

アバッヽ(´・∀・`)ノヨッ

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