第4話

 私の中の私が檻に入ってから、早一ヶ月。世間は夏休み真っ只中だ。でも、吹奏楽部員とあればそうはいかない。

 ––––––そう、夏のコンクールだ。

 この時期の吹奏楽部員は、朝から晩まで、譜面と向き合い続ける。グラウンドから響く運動部のむさ苦しい掛け声をよそに、私たちは合奏に励む。

「そこ、ユーフォ、もっと出して。フルート、もっと軽く。ホルンとチューバ、噛み合ってない。もう一回同じところ行くよ」

 顧問の声にも熱がこもる。奏でる、止められる、ダメ出し。また奏でる。止められる。時々褒められて、またダメ出し。その繰り返し。

「はい、今日はここまで。七時までは各教室を空けておくので、自主練は可能です。みんな、家帰ったらもう一度音源聴いて、よく譜面見直しておいてね。」

 終了が告げられた部員はそそくさと動き始める。自主練に向かうもの、帰宅の準備を始める者など、さまざまだ。

「聖良〜、一緒に四階で自主練しようよ」

「うん、いこ。Dのクラのメロディと、ホルンのオブリガードで合わせたい」

「あぁぁぁ! 私もそこやりたいと思ってた!」

 他愛ない会話と、わたしたちの足音。今日はまだ日が残っているから、教室は十分明るかった。

「よし、始めよっか!」

 咲の声を合図に、私たちは再び奏で始めた。

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