第24話 普通の人は死にますよ!?

 火の神様の神託を受けた後、一カ月が経過していた

 俺はその間にパーティで淡々と依頼をこなしていた



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 ―――――

 ―――

 ―


 今日は遺跡の整備依頼をこなしに来た


 発掘済みの遺跡は整備されており、照明や看板などが設置されている

 それを魔物に壊されていないかの確認をするのが主な依頼内容だ


「メリーさん、そっち側どうですか」


「問題ないわねー」

「グルドの方はー?」


「大丈夫そうだよ」


「ヨシ!」

 メリーさんが独特な指差し確認をしながら遺跡の整備を進めていた


 ―――――――

 ―――――

 ―――

 ―


 今日は遺跡のマップの再確認の依頼だ


「遺跡の地形って変わったりするんですか?」


「たまに変わるみたいだね」

「それ以外にも崩落して新しい道が出来たりするらしいわ」


「特に変わった場所もなさそうね」

「マップ通りだったわね」

「マップの確認ヨシ!」

 メリーさんが独特な指差し確認をしなが(以下略


 ―――――――

 ―――――

 ―――

 ―


 今日は遺跡の生態系調査の確認だ


「この遺跡にはスケルトンとかゾンビとかの人型の魔物が出るっぽいですね」


「ゾンビ嫌ねぇ」

「グロいしキモイわ...」


「二人とも、前から敵来てるよ!」


 ・

 ・

 ・


「見事にグロとキモしかいなかったわね」

「まぁ、生態系リストと相違なさそうね、ヨシ!」

 メリーさ(ry


 ―――――――

 ―――――

 ―――

 ―


 といった感じに、依頼をこなしていたら一カ月が過ぎていたのだ



 そして、今日も今日とて依頼をこなしにギルドに足を運んだのだが...

 なにやら様子がおかしい


 一階ロビーの一カ所に人だかりができている

 その中にはグルドさんと、グルドさんに肩車されたメリーさんがいた

 何をやってるんだあの人たちは...


 とりあえずメリーさん達のところへ行ってみた

「なにしてるんですか、二人とも」


「あら、来てたのねタダノ」


 肩車されたメリーさんはこちらを見下ろすように顔を向けてきた

 この角度から見るメリーさんは新鮮だ


 俺を発見すると、メリーさんはグルドさんの肩かピョンと飛び降りた


「なんなんですか、この人だかりは?」


「それがね、ロビーに特級発掘家が来てるのよ!」

「しかも二人もよ!二人も!」


 なぜか滅茶苦茶テンションが高いメリーさん


「あのサデス様とベルティア様を生で見れるとは感激だぁ」


 グルドさんがいつもより息が荒くになっていた

 なんだ、ベルティアさんとサデスさんが来てるのか





「タダノ探したぞ、ちょっと付き合え」


 気付くとすぐ横にベルティアさん達が来ていた

 さっきまで溢れんばかりだった人だかりは、綺麗に真っ二つに割れていた


 ・

 ・

 ・


 特級発掘家専用の3階ロビーのソファーに俺は座っていた

 前に通ってた頃と違うのは、隣にガチガチに緊張しきったメリーさんとグルドさんがいることだ


「すまないな、無理に呼び出してしまって」

「詫びの代わりの茶だ」


 ベルティアさんは俺たち3人分のお茶を出してくれた

 するとメリーさんが

「ひゃ、ひぁい!、あああ、あ、ありがとうございます!」


 いや、緊張しすぎだろ


「メリーさん、グルドさん大丈夫っすか」

「なんか緊張してるようですけど...」


 メリーさんは俺の首根っこを掴んで俺の耳を口元にまで持ってきた


「むしろ何でアンタは平気なのよ!」

「目の前に大英雄が二人もいるのよ!!!!」

「あのサデス様とベルティア様よ!?!?!!?」


 最初はコソコソ話のトーンだったが、後半からは大音量の声を耳元で叫ばれていた


「不思議に思っているようだが、我々からすると彼らの方が普通の反応だよ」


 サデスさんが口を開いた


「むしろ君が、特殊だ」

「君は発掘家になる前から私たちと交友があるわけだからな」


 まぁ、確かに

 というか、俺がこの世界であった発掘家関係の人って一般人より英雄の方が多いよな

 普通の知り合いはメリーさんとグルドさんだけだし


 なお、サデスさんの発言を聞いて、隣の二人がとんでもない顔でこっちを見ている


「タダノ君のパーティーのお二方」

「初めまして、私はサデスだ」

「こちらの女性はベルティア」

「まぁ、知っているようだが改めてね」


「ぞ、存じ上げております!」


 筋肉粒々のモヒカンに迫られて、委縮する外見小学生

 この場面だけ切り取ったら事案でしかないな


 俺は茶を啜りながらそんなことを考えていた


「今回君たちをよんだのはね」

「タダノ君のことを2週間ばかり借りたくてね」


「うえ⁉ ゴホッゴホ」

 突然すぎて思わず変な声をあげてしまった

 啜っていた茶が思わず気道に入りせき込んでしまう


「「どうぞ、どうぞ!」」

 いや、二人ともノータイムで承諾しないでくれ


「よし、タダノ」

「今日から訓練するぞ」


 可愛がりの時に見せた怖い笑みを浮かべるベルティアさんがいた


「あのー拒否権は...?」


「「受け(るんだ)なさいよ!」」

 メリーさんもグルドさんも声をそろえていた


「いや、まずなんで二週間も拘束されるんですか?」

「それを聞かないと俺も受けようにも受けれないんですけど」


 メリーさんとグルドさんがハッとした顔で、「確かに...」と呟いていた

 俺をノータイムで売った事は今後忘れないぞ



「要件をまだ話してなかったね」

「実は二週間後に交流試合が開かれるんだ」

「それに君も出場してほしくてね 」


 ・

 ・

 ・


 概要を聞いた

 毎年中央と四方から代表のメンバーを選び交流試合を行うそうだ

 その様子は外部に公開され、発掘家や開拓者のプロパガンダとして利用されるみたいらしい

 で、俺が参加する部は新人戦と言われる部門で、3カ月以内に発掘家や開拓者なったものだけが参加できるらしい


 試合方式は毎回代わるらしいが、今回はトーナメント制での試合形式になるらしい

 なお、昨年はデスマッチ形式で試合場が全壊したらしい


 前回優勝の中央はシード枠になっており、新人戦に至っては決勝戦からスタートだそうだ、なんてインチキなトーナメントなんだろうか



「というか、なぜに俺なんですか?」

「俺以外にもっと強い人いるでしょ」

「たとえば、この二人とか」


「お前以外の新人は知らん」


「そ、そうですか...」


「で、お前なわけだ」

「でも、今のままだとお前は負けそうだから今日から2週間みっちりと訓練をだな...」


 それが嫌なんだよなぁ


「タダノ、特級の発掘家に鍛えてもらえるなんてチャンス滅多にないのよ!」

「やるべきよ!」


 そうは言うけどね、メリーさん

 あそこの筋肉モヒカンの人とか、いきなり顔面にパンチかましてくるんですよ

 さらにあそこのお姉さんはいきなり縦穴に人を放り込むし...

 この二人の特訓はちょいちょい生命の危機を感じる


「はぁ....」

「受けますよ、強くなれるんですよね?」


 何よりも強くなれ

 前に告げられた神託がどうも頭の中で引っかかる

 これを言ったのが馬鹿の神だったら聞き流しているんだがなぁ


 あと、折角のチャンスを無駄にするのももったいない気がするし


「あぁ、もちろんだとも」

「このベルティアとサデスの二人で保証してやろう」


 ああ、初めて訓練を始めた時の怖い笑みを2人は浮かべてる

 やっぱり早まったかもしれない




 ・

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 ・










「サデス様!ベルティア様!」

「それ以上やったらタダノが死んじゃいます!!!!」


「大丈夫だ、顔面が陥没したぐらいで人は死なんよ」


「普通の人は死にますよ!?」


「私がポーションを飲ましてやろう」


「ベ、ベルティア様!?」

「あぁ!?タダノの顔がポーションまみれに!?」


 ・

 ・

 ・


 修行中の事はいまいち覚えていない

 技術面の特訓は覚えているのだが、肉体面の特訓は記憶が曖昧だ

 心なしか、メリーさんが俺の顔を見るたびに怯えてる気がする


 まぁ、そんな特訓を繰り返していたら2週間が立った

 今日は交流試合の開催の日だ



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