第21話 今日は依頼やるわよ!

「質問と言っても、嘘をつかずに答えてくれればいいさ」

「僕は頑張る人を応援したいだけだからね」


 カーストさんはニコニコしている

 今言ったことが本当ならいい人なんだろうけども...


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 それから他愛もない質疑応答が続いた

 職業はなんだとか、今の生活はどうだとか、気になる女性がいるかとか、本当にただカーストさんが聞きたいことをそのまま聞いてくるだけのような内容だ。


「いやー、君について色々わかったよ」

「そういえば、君は何故に発掘家をしているんだい?」

「発掘家は危険だし、仕事としては不安定だ」

「それでも続ける理由を知りたいなぁ」


 何故に発掘家をしているのか

 俺自身もあんまり考えてないんだよなぁ

 まぁ、嘘つくなって言われてるし、思ったことそのまま答えればいいか


「成り行きです」

「この世界に来て、いろんな人と会いましたが、会う人会う人に嵌められて今に至るって感じですかね」


 ここは本当に嘘偽りない


「ただ、そこに不満はないです」

「その人たちに世話してもらった恩や、その人たちから受けた期待を裏切りたくないとも思ってますからね」


 カーストさんはヘラヘラとしていた顔から少し真面目な顔になりながら聞いていた

「じゃあ、君は義務や責任感から発掘家をやっているのかい?」


 確かにそういう部分はあると思う...


「最初の半分ぐらいはそうでしたね」

「でも、今は違います」

「今は仲間が居て、その人たちと遺跡を巡ったり、戦ったりするのが楽しいとすら感じてます」

「それに、この世界に来て自分にできなかったことが次々出来るようになったんですよ」

「魔法も、戦いも、全部が全部この世界に来て、会った人達に巻き込まれたおかげんなんですよね」

「発掘家やっているとそんな人と会ったり、自分の成長を実感できるんです」

「楽しいと思ってますよ、今後も続けたいですね」


 感想を語り、それを聞き終わったカーストさんは、またニコッと笑い口を開いた

「そうか、そうか、悪い気はしてないのだね」

「うん、まぁ君なら僕の作ったものを悪いようにはしなそうだね」

「しかし君も正直ものだね」


 最初に嘘つくなって言われてたから、割と正直に答えたつもりだ


「おかげで折角用意した嘘探知機が無駄に....」


 カーストさんは左手に小さなパトランプのような何かを持っていた

 この人も多少ろくでもない側の人間なんだろう


「まあ、これは置いておいて」

「どんな商品をお求めだい?」

「やりたいことや目的に応じてオーダーメイドだってできるよ!」

「将来への投資と思って君にウチの店に通う権利を与えよう!」


 ふむ、認めてくれたって認識でいいのかな?

 オーダーメイド品がいくらかかるかわからないが、やりたいことはある

 ちょっと相談してみよう...


「実はですね...」


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 5連休が終わってしまった...

 ゴールデンウィークが終わったような憂鬱な感覚に....



 なるわけもなく、むしろ久しぶりの仕事だとウキウキしているぐらいだ

 連休中も、半分ぐらいは魔道具の試運転で何度も虎狩りをしていた


 道具のおかげと、新たな魔力の込め方を習得したことで苦戦せずに戦えるようになっていた

 怪我もなく、1日3匹程度は虎狩りをできるようになったのだ。



「おーす、タダノ待ったー?」


 メリーさんとグルドさんが来た

 発掘家ギルドの1階ロビーで待ち合わせをしていた


「三級になったことだし...」







「今日は依頼やるわよ!」

「もうよさげなの見繕ってきたから見て頂戴!」


 メリーさんは自信満々に、テーブルに依頼書を叩きつけた

 グルドさんと俺は覗き込むように依頼書に目を合わせた



 ・依頼書

 内容:石切り作業員の護衛

 場所:採石用遺跡

 拘束時間:3時間

 報酬:一人につき600金


 上記のような依頼が書かれていた。


「正直報酬まずくないですか?」

「これならトカゲ狩した方が倍は稼げそうですけど」


「そうだね...」

「虎の魔石とか1個で500金はあるしなぁ」

「時間で見れば虎買った方が簡単に稼げそうだね」


 俺とグルドさんは依頼書の金額に思はず本音を零してしまう


「チッチッチ!甘いわね、あんた達」


 指を一本立てて左右に振るメリーさんがそこにはいた


「そう、三級に上がれる発掘家ならば、依頼よりも狩りのが圧倒的に稼げるのは当然なのよ」

「でもね、三級発掘家が二級発掘家に上がるのに依頼の達成は必要なのよ!」

「というのも、二級発掘家に必要なものは"ギルドからの信頼"なの」

「だから、稼ぎが少なくても、依頼を次々とこなさないといけないのよ」

「依頼をこなすことで、遺跡の調査でちゃんと出来るから二級にも上がらせて問題ないという信頼を得る必要があるの!」


「なるほどなぁ」


 グルドさんが感嘆している


 確かに、順序で考えれば妥当だ

 現代の社会でも、新人に重要な仕事なんて任せない

 ある程度の失敗の許容や訓練的な意味合いを合わせた仕事をする


 発掘家にとっての三、四級っていうのはそういった期間になるんだろう

 四級では実力の計測

 三級では依頼遂行能力の計測

 そういう意味で考えれば、安い賃金でも依頼を優先してこなすべきなんだな...


 ・

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 というわけで依頼を受注し、依頼場所に来たのだが...

 目の前に広がっていた光景は....





 やつれた顔、うつろな顔、生気のないような顔

 ドス暗いような憂鬱な空気が流れているように感じた


 作業員の統括である責任者に挨拶しに行った

 責任者の人は、とても寡黙そうな人だったが、作業員たちのような憂鬱な感じは一切しなかった。


 護衛するために作業員の横を通り過ぎた時だった

 作業員が俺の胸をチラリと見てきた。

 この世界での戸籍ともなるネックレスだ

 淡い光を纏ったそれを見た時、小さな舌打ちが聞こえてきたのだ


 なんというか、この世界の闇を感じた瞬間だった


 そういえばミレイナさんと話したときにこんな事を聞いた記憶がある...



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「ミレイナさん、質問あるんですけど」


「おや?なんだい?」


「最初に魔力教えてもらったじゃないですか」

「で、単純な疑問として、魔力を操れなかった人や今やってる教育から逃げた人ってどうなるんですか?」


「逃げる気かい?」


 にやにやとしながらミレイナさんがこちらを見てくる


「んなわけないじゃないですか...」

「単純にそういった人もいるんじゃないかなって思ったんですよ」


「ああいるとも」

「あんまり明るい話じゃないけど話をしようか」

「この世界の底辺とその末路の話を・・・」

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