第19話 君の筋肉に幸あれ...


「はい、確かに試験内容の魔石5つを確認できました」

「おめでとうございます、貴方たちは今日から三級冒険者となります!」


 そう言って受付さんからカードを渡された


【三級発掘家 タダノ】


 昇進しました

 と言っても、アルバイトからバイトリーダーぐらいの変化だ

 まだ正社員ではない


 というのも、ある程度の実績や実力やギルドへの貢献があれば、すぐに三級へ上がることはできるのだ。

 むしろ、人によっては推薦されることで四級を飛び越していきなり三級になる人もいるとか...


 ちなみに待遇的には、


 四級:遺跡へ侵入許可(極少)、依頼の斡旋(簡易かつ低報酬)

 三級:遺跡へ侵入許可(普通)、依頼の斡旋(遺跡の整備や小規模調査)


 って感じに分かれるらしい


 ちなみにそれ以上のだと、


 二級:全遺跡侵入可能、依頼の斡旋(遺跡の調査、遺跡の発掘)

 一級:全遺跡侵入可能、依頼の斡旋(特異生物の討伐、最深部の発掘)、一部免税

 特級:全遺跡侵入可能、依頼の斡旋(国より時価の依頼)、大部分の免税


 てな感じに破格の待遇になっている。

 なので一人前の発掘家は二級かららしい



 メリーさん達も、新しいカードを受け取ってきた様子でこちらに歩いてきた


「よっしゃー!」

「飲むわよ!タダノ!グルド!」

「祝勝会よ!」


 メリーさんが滅茶苦茶はしゃいでおられる

 ちなみにこの人は酒豪だ


「あー、虎の件を手伝ってくれたので、今日は奢りますよ」


 実際感謝してるし、無理言ってやらせてもらったからな

 あと、実質この二人のおかげで試験突破できたわけだし...

 あんな虎をソロで5匹はマジで無理だと思う


「お、言ったね」

「じゃあ、僕も満腹になるまで食べよう」


 グルドさんはお酒は飲まないが、食事量が半端じゃない

 フードファイター並みだ



 この二人に奢るといったのは、ちょっと早まったかもしれない...



 ・

 ・

 ・



 うっぷ....

 飲み食いしすぎて気持ち悪い...


 飲み会解散後、5日間の休みをもらった

 これは全員の総意であり、改めて装備などを整えなおす期間とのことだった


 なので、明日は買い物に行ってみたいと思う

 考えてみれば、この世界に来て鍛錬or実践or勉強って感じだった。

 世界や街を見回るってことを一度もしてなかったのだ。


 なので、明日は思いっきり歩き回ろうというわけだ




 とは言ったものの、鍛錬もしなければならない...

 虎狩りの時の最後の一撃

 あれを常に発揮できるような状態にしたい


 しかも、武器にだけであの威力となると、肉体強化で使ったらどうなることやら


 どちらにせよ、やることは筋トレからになるだろう

 筋肉の形を意識するとサデスさんが言ってた

 つまるところ"マッスルコントロール"的なのが必要になる

 芸人が胸筋をピクピクさせているアレだ


 あのレベルで、筋肉を意識しなければならないのだろう

 普段無意識で使っているものを、意識して使うというのはかなりの難易度をようするのだ...


 そんなことを考えていたら、ついに眠気のピークに達してしまった


 ・

 ・

 ・




 気が付くと俺は、いつもの神託される空間に立っていた。




「やっぽー!」


 ああ、ひさしぶりの神託だな

 そのまえに一発殴らせろ


「危な!いきなり神に殴りかかってくるな、アホ!!!!」

「久しぶりなのに酷くない?」


 いや、だって不意打ちなら食らうかなって


「だってじゃないわよ!食らわないわよ」

「アンタもなかなか畜生になったわね...」


 この神に畜生呼ばわりされるのは心外だ

 で、今回は何だよ


「やっとチュートリアル終わった感じだから?」


 二カ月とか随分長いチュートリアルだよ

 内容的に、人によっては一生終わらないじゃねーか

 虎はちょっとレベル高すぎだ


「実際アンタ、成長早いらしいわよ」

「一緒に見てたほかの神が羨ましがってたわ!」

「流石私ね、いい目持ってたわ!」


 なんで、こいつが誇らしそうなんだ...


「って言っても、普通は祝福とか使ってるから、もっと楽なんだけどねー」


 祝福渡さなかったのお前じゃん

 そのせいでこっちはかなり苦戦強いられてるんだが?


「一応渡してるって」

「普通の異世界ライフするのに役にたたないってだけで」


 それは、実質何も渡してないのと一緒だろ...

 なんかさー、もっとまともな何かくれよー


「そう言うと思って、アンタのためにサポート要員呼んであるのよ」


 なんと


「こちら、ゲストの筋肉の神でーす」


 黒光りしたムキムキの男が何もない空間から突然出てきた

 布の服を着ているようだが、その上からでも解る重厚な胸板、腕は丸太の様に太い

 まさしく、『筋肉の神』に相応しいであろう姿をしていた。




















「フンッッッッッッッッッッッッッッッッ!」


 筋肉の神の服が弾け飛んで、頭に服の破片が乗っかった...


「君の筋肉に幸あれ...」


 そういうと、筋肉の神はまた何もない空間に帰っていった










「よかったじゃない、気に入られたみたいよ」


 何が!!!!?!?

 終始意味不明すぎだろ!


 ん?



 頭の中に『筋肉の効率の良い育て方』と『筋肉を育てる食べ物』という知識が沸いてきた。

 どうしたら、いい筋トレが出来るのか、何を食べれば筋肉に良いのかわかる...!



「筋肉の神はね、祝福は渡さないのよ」

「曰く、『楽して手に入れる筋肉など贅肉だ』とのことよ」

「だから、知識を与えて己で頑張れるようにするんだって」


 流石、筋肉の神だ

 筋肉のためになることしか考えてねぇ






 というかさ、お前なんかわざと色物の神呼んでない?

 ちくわとかはんぺんとか筋肉とかさ


「だって、いい神呼んだらいい祝福渡されちゃうじゃない」

「貴方にそういうの求めてないのよ」


 いや、俺はそういうのも求めてるんだよ


「駄目ですぅー」

「よしんば、貴方に祝福与えようとした神がいても、その祝福は取り上げますぅー」


 やっぱ、コイツはナチュラルに邪神だよな


 ・

 ・

 ・


朝目が覚めたので、とりあえず筋トレを始めてみた

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る