第17話 タダノさんに苦情が来ております


「「「カンパーイ!!!」」」



 俺は酒場で祝勝会をしていた。


 ベビーレッドリザードを狩った後、さらに狩を続けた。

 最終的には

 トカゲの魔石が115個

 ベビーレッドリザードの魔石が3個となった。


 俺が倒した後もベビーレッドリザードが出てきたが、パーティーで役割分担をして狩る分には全く苦戦をしない敵だった。


 報酬としては合計で2,660金にもなった。

 3人で山分けしても900金近い額になった。

 日本円にして9万円近い日当だ


 ただし、発掘家は定住する場所はなく宿屋暮らし、食事も基本的に外食だ

 また、装備の整備や消耗品の購入など、現代寄りもよっぽど金がかかるとのことだ

 なので、生活するだけでもとても金が掛かる


「くぅ~、仕事上がりの一杯は格別だわぁ」

「いやぁ、儲かったわね!」


 メリーちゃんって15歳ってことに違和感あるよな

 いや、見た目は年齢通りなんだが、性格とか言動が年不相応に感じる


「タダノ君、今日は本当にありがとう」

「また、共に狩りいかないかい?」


「是非にお願いします!」

「勉強させてもらえることが沢山あったので、僕も願ったりかなったりですよ」


 この二人の開拓者時代の経験まで合わせると本当に多くの事を学べる気がする

 知識もそうだが、戦闘や連携など俺には出来ない事をたくさん知っている。

 こんなチャンスを逃すわけにはいかない


「明日はもっと効率のいいところに行きたいわねー」

「って言っても、タダノが居るなら安全取ってしばらくはトカゲ狩りねぇ」


「というと?」


「別に、貴方なら問題ないとは思うけど」

「この世界来てからそんなに経ってないんでしょ?」

「なら"強さ"をじっくり上げた方が良いわ」

「これはばっかりは経験を積んであげるしかないもの」


 "強さ"

 レベル的な概念で、正確には魂の大きさと言うらしい

 ベルティアさんとか見てると最終的には片手で虎ぐらいなら倒せるようになるみたいだが...


「僕も1週間ぐらいはトカゲ狩りが安定だと思う」

「まぁ、"強さ"をあげるのは第一だからね」

「体力も変わってくるから、長時間行動するならどちらにせよ必須だからね」


 グルドさんもメリーさんもトカゲ狩りを進めてくれるようだ

 とても助かる。


「まぁ、明日の話は明日しましょう!」

「今日は飲むわよー!」


 ・

 ・

 ・





 それから、1カ月ほど経った。


 メリーさん達とは、1週間のうち4日狩り・3日休みとしていた。

 狩リ自体も一日6時間ほどしか行わない

 前世と比べるとかなりホワイトに感じる。


 といっても、命がけの仕事ではあるし、精神と肉体の疲労を考えると適切な量らしい。


 ちなみに、普通の発掘家はそこまで狩りを行わずに暮らしている

 その日暮らしの日銭を稼ぐ分には一週間に2日ほど狩りに出ればいいとのことだ



 しかし、俺自身としては、自分の"強さ"不足でメリーさん達の足を引っ張っていることや、狩りに慣れたいという考えから休みの日も一人で遺跡で狩りを行ったりしていた。


 魔法は一切使わず、魔力の操作での肉体強化のみで狩りをしている

 やっぱり、魔力の操作っていうのは慣れが肝心だった。

 自動車の運転と似たようなもので、最初は意識して一つの動作を細々と行っていたのだが、繰り返し戦ううちに、喋りながら、意識を別の事に傾けながらも自然と魔力を操作できるようになっていたのだ。


 その結果として、最初はパーティーで行っていた20匹のトカゲ狩りも、今や一人でこなせる様になっていた。

 噛まれても、体当たりされても痛くないし、正直魔力使わなくても、首切りぐらいならできるようになっていた。

 "強さ"が上がった恩恵はとてもすさまじいものがあると改めて実感していた。



 ・

 ・

 ・



 今日はメリーさん達と狩りに行く予定で、一階ロビーで2人を待っていた。


「おっす、タダノいつも早いわね」


「待たせたねタダノ」


 メリーさんとグルドさんが来た。

 慣れ始めてからか、グルドさんも名を呼び捨てするようになっていた。


 2人の後ろにもう一人影が見えた。

 受付さんがそこにはいたのである


「おはようございます、タダノさん」

「本日は、皆様に昇級試験を受けていただきたく、案内しに来ました。」


「あ、おはようございます」

「あの、メリーさんやグルドさんはともかく、俺は昇級早くないですか?」


 メリーさんやグルドさんは昇級に2か月かかっている。

 実力的には下になる俺はまだ上がれないと思うのだが...


「タダノさん、貴方は今月の魔石の納品数が一位になっておりまして」

「また、ほかの冒険者の方から、タダノさんが一人でモンスターを狩りすぎて、こちらが狩る分のモンスターが居なくなってしまっていると苦情が来ております」

「タダノさんに苦情が来ております」


 受付さん、なぜに2回言ったのですか?


「あー、アンタ休みの日もソロで行ってたものね...」

「完全に嫌がらせの苦情が入ってない、それ?」


 メリーさんが受付さんに悪意無い顔で聞いている。



「それは、わかりかねますが、一定数の方から毎日の様に私宛に苦情がきておりまして...」

「出来れ...いえ、昇級試験を早く受けていただきたく、お声がけさせていただきました」


 出来ればって言いかけたのに言い直したよ

 もう、苦情聞きたくないって顔してるよ、受付さん


「なんか迷惑かけたようですんません...」

「メリーさん、これって受けた方が良いんですかね?」


「そりゃ受けた方が行ける遺跡も美味しい依頼も増えるから当然よ」

「アンタ自覚無いけど、最初に比べるとかなり"強さ"上がってるみたいだし?」

「あと受付さんの苦労を考えてあげなさい」


「はい、受けてください」


 メリーさんすら受付さんの気を使うほどに...

 受付さんはもはやさっさとして欲しい感を隠さなくなってきてる


「はい、受けます...」

 俺にはこれ以外に言える言葉は無かったと思う...


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