第13話 異世界無職が爆誕してしまった。

「とまぁ、説教はこんなもんか」

「次はすんなよ」


「うっす...」


 二時間も正座で説教されました。

 足は痺れて動きそうにありませんよ

 説教の内容は大まかには命を大事にしろといった内容だった。


 あと、途中5回くらい虎が乱入してきたのだが、ベルティアさんがすべてワンパンした。


「よし、帰るか」

「んじゃこれ飲め」


 ゲロ不味い液体をこちらに投げられた。


「腕の怪我と足の痺れはそれで治る」

「吐くなよ?そのたびにもう一本追加だからな」


 無茶を言いなさる、というか吐いたらまた飲ませるとか無間地獄じゃん





 3回ほど吐いた後、最終的にはベルティアさんに無理矢理飲まされた。


 ・

 ・

 ・


「ただいま戻りました...」


「お帰りタダノ君」

「おかえりー、げっそりしてるねぇ」


 ギルドに戻るとサデスさんとミレイナさんが迎えてくれた。


 あの後帰り道に鹿7匹ほどに襲われたのだ

 流石に疲れが顔に出てしまう。


「ベティ、タダノ君どうだった?」

 ミレイナさんがニコニコとベルティアさんに問いかけている


「虎にぶつけてみたが、倒そうと奮起してたぞ」

「心折れる奴は何度も見たが、奮起するタイプ初めてだな」


「ほうほう、それは蛮勇だねぇ」

 関心を寄せるミレイナさんとは対照的に、結果を聞いたサデスさんの顔が若干青ざめていた。


「おい、ベルティア」

「タダノ君はまだ発掘家見習いだぞ!」

「相手にさせるにしても危険を考えたまえ!」


 この部屋にいる人は、見た目と常識の度合いが反比例しているようだ。

 筋肉の擬人化のような方が一番常識的でらっしゃる




「彼は、将来に大いなる筋肉を宿すかもしれないのだ!大切に育てるべきだぞ!」

 やっぱ訂正します。頭の筋肉でした。


「戦闘続行しようとするなんて思わんだろ、私は止めに入ったぞ」

「それに、説教もした。」

「だからこの話は終わりだ」


 それを聞くな否や、サデスさんは納得したようにソファーに腰かけた。


「ちなみに鹿はどれぐらい狩れたんだい?」


 ミレイナさんが声をかけてきた。

 最奥の道中に8匹で、帰り道に7匹ほど狩った

「15匹ぐらいでしたね」


「おお、それは....やりすぎだねぇ」

「んじゃ、講習卒業で」


「え?」

 唐突すぎない?


「いやー、だってさ」

「戦闘力は申し分ないぐらいはあるじゃん?」

「それに、私が君に差し入れた本、もう大体読み終わったでしょ?」

 実は発掘家ギルドに通い始めてすぐの頃に、大量の本を渡された

 内容としては、この世界の職業や制度、魔法などもろもろの情報が詳しく書いてある教科書のようなものだ。


「まぁ、全部読み終わってますね」

 この世界は娯楽がないので、どうしても本があると暇つぶしに読んでしまうのだ


「じゃあ、知識的にも教えることないわけだよ」

 あ、この人座学教えるの面倒くさくなって全部本に丸投げしたな


「でも、3カ月は面倒をみると最初に言ってませんでしたっけ?」

「まだ、1ヵ月程度しか経ってないですよ⁉」


「あと、本命の理由としてね」

「君を冒険者ギルドに通わせてたら、騎士団の方に伝わったみたいでね」

「報告したら、講習修了を言い渡されたんだよねぇ」


 最初に派遣されたとか言ってたもんなぁ

 この世界は人手不足だとも言ってた

 ある程度出来が良ければ、さっさと働き手にしてしまう。

 飛び級制度みたいなものなんだろう


「というわけで、卒業というか、もう教えてあげられなくなったっていう方が正しいかなぁ」

「私としては、もう少し仕込みたかったんだけどね」


「そういう理由なら、仕方ないとは思いますが...」


 まぁ、見習い卒業ということなら仕方無いよな

 ミレイナさんの権限ではどうしようもないわけだし













「あれ?俺って明日から無職なのでは?」


「うん、無職だね」


 異世界無職が爆誕してしまった。


「まぁ、あと5か月は格安で宿に泊まれるから...」

「そのあとはどうしようもなけど」


 ミレイナさんは無慈悲に宣告する


「まじっすかぁ....」

「まだやりたいことも決まってないのですけど...」


「「え?発掘家やるんじゃないのか!?」」


 サデスさんとベルティアさんが口をそろえて驚いていた

 内情としては確定していた感じだったのか...


「実は朝にお前の発掘ギルドの戸籍作ってしまったのだが...」

 ベルティアさんが申し訳なさそうにカードのようなものをこちらに差し出してきた。


 そこには

【四級発掘家 タダノ】

 と書かれていた。


 わぁ、知らないうちに正社員雇用されてた


「ベルティアさん、これミレイナさんと結託して外堀埋めただけじゃないですか?」











 サデスさん、ミレイナさん、ベルティアさんが無言で親指を立てていた。


 畜生嵌められた。


 ・

 ・

 ・



 なんやかんや発掘家になってしまった後、俺は鹿狩りの疲れから宿に帰ってさっさと眠りに付いた。







「ちっす!講習卒業おめでとう」


 はい、来ましたよ

 呪いのお時間です


 んで、今日は何んだよ


「特に用事はないけど...」

「あ、そうそう、気になってることが一つあったわ」

「あの虎と戦おうとしてわよね?」


 ああ、したな


「どうやって勝つつもりだったのよ」


 あー、結構賭けになるんだが大雑把に言うと

 炎で目くらましした後に、背後に回り込んで...


「背後に回り込んで?」









 ケツに刀ぶっ刺して中から炎で炙ってやろうかと


「怖!怖いわよ!」

「私が選んだ人間なんだからもっとスマートに戦ってちょうだい!」

「観客を引かせないで頂戴!」


 知らんがな

 てか、お前以外に見てるやついるのかよ?


「結構居るわよ?主神とかも見てるし」


 え、主神様も見てんの?


「呼んだ?シュヴィ?」


 見えない空間からひょこっと顔を出してきた神がいる


「呼んでないから帰りなさい」


「そっかぁ...」


 そうつぶやくと、神はそのまま頭を引っ込めていった。


 あの神はいったい...?


「主神よ!」


 え、主神様だったの!?

 もっと顔見とけばよかった


 てかフットワーク軽いな、おい


「別にレアキャラじゃないからそのうち会うわよ」


 えぇ...


「今回はこの辺かしらね」


 随分短いじゃん

 いつもはもっと煽ってくるし

 今日は大人しいな


「この私がわざわざ激励してあげるために来ただけだもの」

「それに、貴方の吐くシーンや無職になったシーンとか取れ高多かったからね」

「ぶっちゃけ今日は満足なのよ」


 やっぱ畜生だなコイツ


「じゃ、せいぜい発掘家がんばりなさいよ!」


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