第11話 どうだ、クソまずいだろ?

 俺は一週間ほど発掘家ギルドに通っていた。

 基本的には剣技や体術、魔力の操作の仕方を教わっている


 ミレイナさんとの授業は簡単に言うと、俺がタコ殴りにされるだけだった。

 木剣を用いて組み手をするのだが、ひたすら切りかかられてた。

 ミレイナさん曰く「攻撃を食らい続ければ、いなし方も防ぎ方もうまくなるだろう?」とのことだった。


 一見ひどく聞こえるが、現代の柔道などの武道でもまず最初に習うことは攻撃の受け方の方が多いのだ。

 そう考えると、怪我する前に怪我しないように対処法を教えて効率よく教えると合理的な考え方であるのだが...


「タダノ君!早くガードしたまえ!」

「剣でガードするも魔力で耐久を高めるでもいいからね」

「出ないと死ぬほど痛いよ!」

 笑顔で木剣を振ってくるミレイナさんの記憶が脳裏によみがえった...


 思い出す限りだと、ミレイナさんは多分ドSなので趣味なのかもしれない


 それに対してサデスさんとベルティアさんの教え方は本当に技術の伝授に徹しているという感じだった。


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「タダノ君、筋肉ッッッ!筋肉を感じるんだッッッ!」

「魔力での肉体強化とは、すなわち魔力と筋肉の融合なのだッッッッ!」

「ただ、魔力を纏うのでは非効率ッッッッ!」

「魔力を纏うのではなく、筋肉の形を意識、体に流し込むのだッッッ!」


 うーん、この筋肉言語

 ただ、言ってることはなんとなくわかった。


 普段では体の周りをフワフワと纏っている魔力なのだが、今は体の芯に閉じ込める。

 そこから、体の全体に魔力を通す。

 纏うのではなく、肉体に満たすようなイメージを...

 体という器に、魔力という液体が溢れないように慎重に注ぐ


「良い、実に良いぞ、タダノ君ッッッ!」

「ではこれを避けてみたまえ」






 殴られそうになった。

 だから、後方に軽くバックステップするつもりだった。


 飛びすぎて壁に背中を強打した。

「ぐへぇ」

 力の加減が全く効かない

 これがサデスさんの言う魔力と筋肉の融合になるのだろうか...


 倒れてる俺に対してベルティアさんが顔を覗き込んできた


「良い感じだな」

「サデス、あと50セット頼んだ」


「任されたッッッ!」


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 とまぁ、こんな感じで毎日やってたわけだが

 今日は装備を持って来いと言われた。

 何をするのやら...


 発掘家ギルドの入口に入るとベルティアさん入り口前で待っていた。


「よ!今日は遺跡に潜るぞ」

「ということで、一時的な遺跡探索承認をくれ」


 受付の人が相変わらず引きつった顔をしている

 この人苦労してそうだな...


 というか遺跡初体験か

 まだ発掘家になるとすら言ってないだがなぁ



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 なんやかんやあって遺跡に到着した。


「ここが遺跡の入口...」

「なんというか、穴ですね」


 そこには直径10メートルほどの大穴が開いていた。

 穴の淵には階段のようなものが見える。

 深さは20メートルほどあるようでなかなかに深い。


「この穴の中に遺跡がある、行くぞ」

 なぜかベルティアさんにガッツリと腰を掴まれた。


 次の瞬間には穴の中にダイブした。


「ベルティアさぁぁぁぁぁん!?」


「タダノ、全身に魔力を満たせ、その上からさらに魔力を纏って着地しろ」

「じゃないと死ぬぞ」


「ノォォォォォォォォ......」












 はぁ...はぁ...

 何とか着地に成功した、ギリギリセーフだった。


 しかし、足腰への負担がまるでない

 始めて、本当に肉体が強化されているのだと実感した

 常人なら普通に死ぬか骨を粉砕骨折するほどの衝撃が掛かったであろう状態だった。


「ほう、無事だったか」

「足の骨ぐらい折れると思ったんだがな」


「下手すりゃ死ぬとこでしたよ、マジで」

「というか本当に折れてたらどうするつもりだったんですか...?」


「このポーションを飲ませるつもりだった」

「どちらにせよ、飲んでおけ。魔力が回復するからな」

 そういうと、ベルティアさんは濃い緑色の液体が入った小瓶を取り出し、こちらに投げてきた

 やっぱあるんだなポーション


「味が良くなくてな...」

「戦闘中にいきなり渡しても飲めないかもしれないだろ?」

「だから今のうちに飲んで、舌を馴らしておけ」


 そういわれるとなんか怖いな

 とりあえず、瓶のふたを開けて匂いを嗅いでみる

 匂いとしてはハーブのようなツーンとした爽やかな香りだ。


 嫌な感じはしないが、怖いから一気飲みしてみた。




















「おええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」


 最初はハーブの香りでわからなかったが、喉に差し掛かろうとしたときに、味を理解した。


 強い酸味、雑草や土をかじったような酷いえぐみ

 最後には不快になる甘みが舌にまとわりつくように出てきた

 鼻腔にはハーブの香りと土の香りがむせ返るように貫いた


 結果の嘔吐である。



「どうだ、クソまずいだろ?」


 クソまずいよ!!!!!!!


「発掘家も開拓者も一度は通る地獄だ、我慢しろ」

「そして、日常的に飲まざる負えなくなるものだ...」


 ベルティアさんはどこか遠い場所を見つめていた...



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 遺跡の中に入ってみた。

 なぜか俺を先頭として、ベルティアさんが後ろを歩いている。


「遺跡の中って思ったより明るいんですね、照明がきっちり整備されてるし」


「それはこの遺跡がだからな」

「中もある程度整備されている」


 まぁ、人が一回入ってしまえばそんなもんだよなぁ

 前世でも、鍾乳洞を洞窟探索気分でわくわくしてはいると、舗装された道を歩くだけとかあるしな


「全く整備のされてない遺跡に入りたいなら最低でも二級の発掘家になることだな」

「それ未満の発掘家は基本的に未整備のエリアには入れないからな」


「なんで二級より下の発掘家は未整備エリアに入れないんですか?」


「危険度も構造も不明な場所に捨て石として人材を送るほど人手は余ってない」

「基本的に実績ある人間が踏破するのが先なんだ」

「ある程度地形や危険度が把握できて、初めて三級以下の発掘家は遺跡に入れる」


 この世界は人命第一だ、倫理観はやっぱり現代寄りなんだな

 中世っぽいだけで炭鉱奴隷なんかがいるもんかと思ってたが、いないのだろうか?


「今回は戦闘訓練としてきたからな、特に発掘に関して教えるつもりはない」

「ほらタダノ、さっさと前を歩け」


 こうして俺は遺跡の奥へ進んでいくのだった

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