第12章 集結

 楠木は、町中を走り回っていた。町の中に闇創造が作り出した人型の黒いモヤが集団で行動を開始したからだ。避難命令をこの町を中心に2.5キロの範囲に出していた。この町以外は、自衛部の組織全体が動いてくれているらしい。なので、楠木やアーツなどの闇創造討伐組は今、この町の防衛に回っている。闇創造よりも上位の優先事項だった。「その名は、炎訳は火精霊サラマンダー闇を断ずる剣となれ炎剣!その名は、炎訳は火精霊サラマンダー闇を撃ち抜く弾丸となれ炎球フレイムボール!」と走りながら言霊を使って術式を組み立てていく。楠木の行く道には、多くの人型の黒いモヤが立ち塞がる。しかし、攻撃を与えることで一時的に闇創造の所に戻っていくためそれほど苦戦する相手ではない。一体ずつ相手する場合であればの話だ。この時、楠木は2千体もの大軍を1人で相手していた。術式には、使用の制限がある。例えば、炎剣は1回目の術式を組み立て、実際に使用する回数が30回を超えると術式が不安定な状態になる。その為、その術式を白紙に戻してから再度組み立てなくてはならないので、その分精神力の消費が激しくなる。これは、炎剣の場合であり、炎球の場合は4回射出すると終わってしまうのだ。この状況は、少しでも油断を見せたら生命の危機に直結してしまう。楠木は、そう思いながら攻撃を繰り出していた。しかし、空から黒いモヤのかかった大きな蜂の軍隊が楠木に向かってきていた。自分の周りを爆発させて逃れしようとするが周りには、まだ人型のやつが1500体もいる。そう思った時、空に黄色い閃光が蜂の集団目掛けて撃ち抜いた。スポーツ用に調整されたヨーヨーを振り回しながら「ったく、こっちは課題に追われていて息抜きついでにレストランでも行こうかと考えていたのに、おかげで課題もう終わらないや。楠木!あんた手伝いなさいよ。」

「そんなこと言っても仕方ないだろうよ電糸沙羅!もういいや、なんでもしてやるから手伝え!」と言いながら楠木は、手短の黒い人影に炎剣を突き刺す。沙羅は、楠木のいる近くまで降りるとヨーヨーを投げて勢いよく体から回っていく、ヨーヨーの玉の部分もそうだが、手とヨーヨーの玉の間にある糸が高圧電流を流して黒いモヤの人型を横に割いていく。そんなこんなで、沙羅と一緒に楠木は黒いモヤ達を蹴散らしたのであった。一方でその頃、アーツは両手に2つの別々の銃を携えていた。1つ目は、楠木からプレゼントされた、デルタワーストだ。文字通りの攻撃特攻型の武器である。もう1つは、空気砲を利用した空気銃エアロガントレットである。アーツは、ビルの上から弾丸の雨を繰り出していた。「切りがないですがやるしかないですからね珠里さん、狼牙さんA地点での住民の避難状況は···」

「こちら狼牙とりあえず大丈夫だ。だが、敵性の排除に苦戦中!」

「了解!流星そっちは?」

「問題ない、周辺の敵性も排除済み!狼牙と珠里はすまないがしばらく耐えていてくれ!すぐに行く!」

この時、2人は圧倒的不利な状況にいた。主力が狼牙、サポートに珠里というような構図で戦況を耐え忍んでいたが敵が多いせいか戦況不利になっていた。

「このままじゃ、倒されるのも時間の問題か!」と思った時、「雷撃!」と言いながら二人で手を合わせている人物がいた。楠木と沙羅である。この時、楠木の雷術式の制約を沙羅の電気の糸で打ち消していた。制約というのは、楠木は生体電気程度の電気しか出せないのだ。その為、沙羅と同時に放つことで巨大な電気を生み出す。敵の人数が今の攻撃で3割程度にまで減少した。珠里は、みんなに補助音術サポート・ミュージックを発動させてあとは、目の前の敵をひたすらに蹴り飛ばした。「こちら、楠木。狼牙と珠里と合流した!」

「了解!やはり、核を潰しに行くしか方法がないような気がします。」とアーツは提案をする。異論を言う者は、いなかった。しばらく、作戦を練った。楠木は温存をする。アーツは、楠木の周りに近づく闇創造以外の敵性の排除を行う作戦が立案された。しかし、今は狼牙の所の道場も軍部も、珠里の所の鈴鬼も居ない。足りないものは補うこと。それこそが、勝利の道筋を表しているような気がした。ここに、仲間が集結したのだった。一つ一つは、小さな欠片でもたくさん集まれば1つの大きな原石になる。その時に、彼らのやってきた道が正し勝ったのかが示されるのだ。

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