第8章 オルトとロストと精霊

 楠木はオルトだけをしか見ていないために、横に入られたロストの右フックを受けそうになった。が、なんとか防御の姿勢を取った。「流石に、2対1は厳しいことが分かっているだろ」

「舐めんなよ、かつてお前らと同じ所に並んでいた。この俺の力を」と楠木は言う。「よせ!敵は、2人だけじゃないんだよ」と未来は、言う。「なら、手っ取り早くこいつらを潰す!」と言い楠木は、ポケットから色のついたカードをだすと、赤いカードを4つ遠くに置いた。中央には、白いカードを置いた。「訳は、炎、空間の分割と白の訳である守護、この2つは互いに相乗効果を起こし、赤いカードで区切った空間を神殿と化す。後は、術式の作成で終わる。その訳は、炎の精霊サラマンダーその名は金鏡、顕現せよ!まさに、厄災や悪魔とは、比べられない邪強にして天罰の炎、サラマンダーの召喚と同時に炎の神殿の完成せし!」と楠木は言う。それがただ、踏み台のような感じを取る事も出来た。「あとは、異能力の七星プレアデス、火の加護の爆星!」と説明をするように話し、両手に炎が現れた。下には、砂利と砂が入り交じった地面だ。その地面に手を払うように空気を撫でた瞬間、楠木の周りから数メートル爆発した。「なるほど、粉塵爆発かロストは下がれ!」「ダメだ、間に合わない!」と未来は考えた。案の定、オルトとロストは吹き飛ばされた。

 吹き飛んだオルトとロストを見ながら楠木は「そういえば、周りの奴らが変な言葉を紡いでいるのですが?」と恐る恐る楠木は未来に相談する。「当然、お前を倒す手立ては、俺達の魔力だけじゃ不釣り合いだ!オルトロス、お前も聞いたことがあるだろう?」

「合成術式を使用しているのか!」オルトロスは、伝説の2つの能力を持つ災害クラスの怪人の名で、合成術式は、伝説級の魔物から怪物まで対象の名があれば、顕現できる術式だ。「所詮、獣だなオルトロス」と楠木は言う。「···確か破壊と再生を繰り返す炎の神殿の破壊からもう10秒か」と言うと周りが真っ赤に染まった。「合成術式の時に破壊しといて正解だったな炎の精霊よ神殿の名において顕現せし時、侵入者馬鹿の二つ頭を喰らえ!」と言うと炎の精霊サラマンダーが姿を現した。「PFRCOBDDTW《力を振るいしこの強者闇に飲まれしこの弱者》死ねよもうお前、人化オルトロス!」と言うとみるみる縮み人型の獣へとオルトロスは姿を変えた。

「こちらも全力の七星プレアデスでないとな!その名は空壁くうへき、訳は土精霊ノーム我が思うままに重力を操作せよ!下方の圧力ローベクトルその名は、テンペスト訳は、風精霊シルフィー我が攻撃に主の加護を行使せよ!空弾砲ウィンドラッシュ!」と言うとすぐにオルトロスの足元から重力が急に重くなり、楠木の周りには、緑色の弾丸が現れて一気に重力によって地面に押し付けられそうになっているオルトロスの元へ降り注ぐ。続けて、「···プレアデス、この名は、爆炎ボマー訳は火精霊サラマンダー我が四肢に広がりて、移動を助けよ!爆速フレイムスペル!この名は、氷結アイス訳は、水精霊ウンディーネ顕現せよ!氷結の聖剣アイスゾセイバー!」と言うと足が炎を纏った。虚空から氷の刃が作られて剣になった。対してオルトロスは、何も喋らずに恐らく、味方が持っていたであろう地面に刺さっている両刃剣を片手で軽々と抜き取った。重力操作によって体が地面にめり込みかけているのに軽々と動いていく。そのまま、重力に任せて振り落とすと、楠木が組み立てた術式が、折角組み上げた神殿が全て吹き飛ばされた。それを見て口端を歪めるなり、オルトロスはたった一歩だけで両刃剣の間合いに楠木を捉えた。横一閃に切り裂くはずだった。「ダッメー!」と声を出しながらオルトロスと楠木の間に壁を作るように弾丸の雨をひとしきり降らせる。周囲数メートルが砂ぼこりに包まれた。楠木は、もう一度異能力の七星プレアデスを発動する。「豪炎!からの打撃!」と言うと楠木は、無造作に空間自体を殴っていく、異能力の影響を受けた楠木の拳は文字通り火を噴いた。その時になり、ようやく弾丸の雨が止み、オルトロスの視界が開けたのだが、その時にはオルトロスの厚い胸板を殴りつける寸前だった。勿論、避ける事が出来るわけもなく気づいたらオルトロスは、地面に倒れていた。起き上がって、両刃剣を持ち直したかと思うと、直ぐに横一閃に剣を切り裂く。しかし、楠木は地面に一回、バク転を補助するように二回、手の中の炎を爆発させた。オルトロスは、重力に任せて振り落とすが楠木が地面に足を置く前にもう一度爆発させて地面から浮き、自分を回転させるようにあえて横向きの爆風を起こした。爆発の勢いのまま、右足を相手の首に刺さるような形で蹴り払った。要は回し蹴りだ。打撃があまり効かないので全然ダメージになっていない。「ちっ、硬いなこの馬鹿は」と考える。

「···全然ダメだな流星よ!」という声が聞こえてくる。しかし、未来やアーツ、雪花などの声と違い威厳と沈黙を混ざりあった声がした。牡牛トーラスかと楠木は、心の中で思い言葉を急いで紡ぐ。「契約者の名のもとに言う我を契約先の者と顔を合わせる機会を今一度与えたまえ!精神世界、精霊のアバターロード!」と言うと体からは、魂が抜けたように目を閉じたがオルトロスの攻撃を避け続けている。自動防御と言った方が早いのだろうか。「···さてと、どこから話そうか」

「とは、言ってもそんなに多くは、時間取れないぞ持って3分といった所かな」

「なら、早速本題を話そうか···前にも言ったと思うけど全体を見すぎではないか?」

「とは言っても、防御とる時間を削ることで攻撃に集中できる戦い方だからな」

「確かに、一理あるがそのせいで火力が落ちていることに気付こうな!」

「···はぁ?」「···ってことは、気づいてなかったんだな!」

「あぁーマジで完璧な戦いファイトスタイルだと思っていたのに〜」

「じゃあやることは、分かるな!」

「うん、この際だから一点集中型でやってみるわ!」言っていること分かってないな、とトーラスは思いながらも流した。

「あとオルトロスにこういっておけ!契約に乗っ取りトーラスが来たと」

「分かった!時空を歪めし時、今一度精神を元ある所に帰らせ給え!」と言った。瞬間、現実世界に戻されたのだ。上を見るとすぐに両刃剣を振り下ろしている所だった。真横に避けて、体を空中で反転させて、オルトロスの背中に緑色のカードをくっつける。「遠隔術式、暴風ヴォルの名を持つ、訳である風精霊シルフィーの攻撃として敵を平行移動せよ!」と言葉を紡いでいる間に緑色のカードには、変な文字が浮かび上がった。WPと書かれていた。風の術式を組み上げる時に用いられる言霊だ。浮いて出てきた瞬間カードを原点とした竜巻が現れた。オルトロスは、軽々とおよそ3メートルぐらい吹き飛ばされたのだった。その時、楠木は言った。

「決着をつけてやるよ、この馬鹿が!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る