第7章 ふざけた普通

 あれから、数日がすぎたアーツは未だに元気がないままだった。どうにかアーツの元気を取り戻したいと思い。雪花と未来と一緒に温泉に来ている。何か、追加情報があるらしいがとりあえず銭湯に入ることにした。ここは、カペラの中でも特に温泉が有名なモスロだ。楠木の自宅からは、そう遠くない所にあるため、こうしてたまに来るのだ。楠木と未来は、アーツと雪花と別れて温泉の中に入る。どうやら、温泉に入りながら本題に入るらしい。

「どうやら奴らが嗅ぎつけているらしいぞ!」

「奴らとは?」

「決まってんだろうよ!カペラ政府の表の暗部組織と言われる」

「···軍部か、オルトとロストだな」と呆れている。「奴らも今回は、介入するらしいが元同じ所に立っていた君の私見ではどう見る?」と未来は、問いかけた。楠木は、自分の過去など気にはしていないのか、問いかけに答える。「そうだな、まずオルトだが組み立てる状況次第だなそもそも、緊急には事を構えないのが奴らのやり方だからそのリーダーならそうなるだろうさ」「なるほど、対策を建てれば闇創造と戦えるか」と未来は、顎に手を当てている。「それは、俺達のような人間であればの話だがな!次にロストだが、あいつは、能力の無効化や弱体化を扱う奴だな。だからアイツは、後方支援に今回も回るだろうよ」と経験から楠木は、考える。戦いが始まる前に奴らと戦うようなフラグを充分立たせるような内容だと考えながら銭湯の湯に浸かる。「今回の軍部の目的は、借りをカペラ政府に作り力を持つことだろうと思うよ」と未来も私見を混じえて話す。これに、激しく同意をする楠木だった。一方、アーツは、雪花に色々と質問をしていた。「まずは、私がクローンならクローンになる個体は何処にいるんだ?」「そうだな、もしかしたらありふれた異常日常を過ごしているかもしれないしそうじゃないかもしれない。それに気づいているかもしれないし、いないかもしれないよ」と優しい声で雪花は、言う。「私の異能力と使う異能力には、若干の誤差があるんだけどそれは何?」と証拠にもなくまた質問をする。「君の頭にはある1つの術式が使えるような脳回路が組んである。そしてそれは、力を物体に加える能力だ。主戦力となる異能力の方は、誘爆を起こすものだろうと私は考えるよ。どちらにしても、単体だけだとごく小規模な威力だが、戦闘におけるこの2つは、互いに相乗効果ってやつでざっと見積もっても、単体の威力の100倍以上だな。相乗効果を起こす事を初めから根底に入れて、能力を発動させるから若干の誤差が生じるんだと思うよ」元々、一つだと思っていたものが、ある2つの物で互いに肩を持つような形で役割を担っていると思えばわかりやすいかもしれない。時間は、ゆっくりと流れていた。そんな中、楠木達がいる銭湯を見下ろす総数5万の人影が見えた。先頭には、2人の人影が何かを慎重に指示をしている。一方その頃、楠木達はみんなで牛乳を飲んでいた。さっき、未来に話されたことを再度話す。

「···と奴らが事を実行するなら、条件が2つはあるだろうな。」楠木は、一度戦った敵の個人や団体の強さから情報収集をする。軍部とは、一戦交えたことはあるらしい。

「安心しろよ!奴らが接触することは、確実だが犠牲は出さない。」と楠木は話す。「条件というのは、目的の情報の横取りと妨害になりそうな奴の排除だろうよ」

「つまりは、条件1が目的の情報だとしたら僕と雪花さんは、当てはまりますね」

「そして、条件2は恐らく、アーツと俺の2人だろうさ」と楠木は、臨戦態勢を取る。一方向の壁が崩れると同時に大人数がまるで土砂のように流れ込んできた。

「待ってくださいあちらの方も、少しは、情報を掴んでいると思います。私たちの中で一番重要度の低い案件は恐らく、私達の複製のことでしょう」

「ってことは、生かすかもしれないな。あとは、自分達で考えた方が良さそうだけど···そうも悠長なことは、言ってられないようだぞ」と楠木は、何かを察したように後ろの壁から一定の距離をとる。それに、ならうようにアーツ達は壁から離れた瞬間、壁の真上にギロチンがくい込み、そのまま重力に沿って落ちた。壁は、見事に3分割されたまま、まるで支柱を失った家のように、一気に崩れた。「はぁ〜、いつもの大規模奇襲作戦ですか?その手には、もう飽きたって前に言わなかったけか?」

「貴様との雑談を楽しむ時間は、もはや存在しない!諦めて、我らの軍門に下れ!そうすれば、無駄な血を見る事も流すこともせずに、全てを丸く治めることができる」

「ふん!つまらないな、だいたい俺がお前らの軍門に下った所で俺は従うわけじゃなぞ!」と楠木は言い返すが内心、包囲されて勝算はほぼ無いことに感ずいていた。たとえ、負け戦だとしても真実に辿り着かないといけない。そして、複製少女アーツに一言、言わないといけない。たとえ、不利な状況であっても必ず諦めないと楠木は、もう一度あの日に誓ったことを心の中で再確認するようにそっと固く手を握ると叫んだ。

「俺は楠木流星!幾つもの、不条理を打ち破ってきたものだ」そうあの頃のようにと思い。さらに、手を固く握った。その瞬間、両手から、凄い熱量の炎が燃えはじめた。いつの間にか炎の色は、赤ではなく青白い光に変わっていた。軍部の人間達は、何が起こっているのか把握する前に空気中に投げ出され、地面に伏した。あっという間に、総数5万もいた物が一瞬で3割を吹き飛ばしたのだ。この時になり、ようやくこの部隊の主のオルトとロストがこちらに総力を向けてやって来ていた。

「異能力のプレアデスの発動条件は、感情だ!起源となる炎それは魂。心のある物には、熱が宿るそれは自分以外が鎮火させることの出来ない炎だ」と言ったのは楠木だ。魔力や異能力などの全ての力は、共通の源がある。それは、精神力だ。その精神力を原油として考える。異能力の場合は、生まれながらに持っている能力なので原油をそのまま燃焼させることが出来る。それが異能力だ。「嘘だろ、お前は異能力の顕現はできない、そのはずだろ!」とオルトは、驚きと作戦の根底が崩れて、作戦の失敗を意味していたのだった。「なわけないだろ!第一、この戦術はまだ異能力を主軸として使っていた時に考案したのだからな」

「ありえない!そんな事!」と叫ぶとオルトは、楠木に向かって走り出していた。それを見ていた部下達は、一気に楠木を叩くために楠木の周りをオルトが来る前に囲み始めた。しかし、楠木はその陣形を見るなり手近の人々を真上に放った爆発で先程のように、吹き飛ばしたのだ。楠木とオルトとロストの間には、数メートルの距離ができた。楠木が音も立てずに今度は、真下に爆発を起こし上空へ浮き上がった。その後、手のひらから出続けていた青白い炎が手を握った瞬間、四肢全体にまとっていた。そのまま、自分の足と体を一気に近ずけて重力に、沿って地面にそのまま着地する。周りから見れば、隕石の落下のような現象が起きていた。着地した瞬間に、自分のいる場所を中心として半径2メートルの円状にまるで、地雷が爆ぜたように爆発した。オルトは、この時引き止めに行ったロストが突き飛ばして無効化した最中だった。敵の総数が5万いたのに今は、オルトとロスト以外が地面に伏して伸びている状態にいた。「ったく、負け戦はどちらなのか作戦立案した上は、馬鹿なのか無能なのか、それとも両方か」とオルトは呆れながら言った。ふぅ、と言うと勢いよく楠木は拳を真下の地面に目掛けて突きつけた。その後すぐに、オルトと楠木の延長線上を結ぶ線のように爆発した。オルトは、一歩後ろに下がり代わりにロストが一歩進んで右足で無力化させた。「なるほどね、確かに楠木流星、君の能力は強い。しかし、俺には効かないね」と言うとスムーズにまるで、敵を狙う獲物のように姿勢を低くした。その瞬間、ロストの右肩を踏み台にしてオルトは、宙を楠木目掛けて駆けていた。凸列ターンレーン、オルトの力だ。自分の触れた物体は、自分の思う通りに動く。しかし、動くのは、必ず放物線に従わなくてはならない制約がある。それでも、オルトの力は確かに楠木を防戦一方にさせることが出来ていた。「どしたのだ?それでは、私たちを倒す前にお前の精神力が尽きてしまうぞ」「大丈夫、それは問題ない」と楠木は、上空に向けて2発、爆発を起こした。「確かに精神力ならもう尽きるだろうな、この異能力をずっと行使していたのならな」と左の口端を歪めた。「まさか···出して続けていないだと!そんな事出来る訳ないだろう!」ともう一度叫んだ。「···異能力、七星プレアデスもとい、炎術式の炎剣FSだ。」と楠木は叫ぶ。さらに、叫ぶ。「訳は···名は···プレアデス」と楠木は、叫びと同時に周辺の瓦礫を吹き飛ばし、オルトの顔面を一撃で歪めさせたのだ。「ここからは、お前のふざけた普通を今ここで終わらせるためだけの時間だ!」

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