第3章 楠木の優しさ

 楠木が戦っている時にアーツや店長、その他店にいたお客さんを安全な所に避難していた。中から何度か爆発音がしたのが、遂に耐えられなくなったのかアーツは、再び店に入った。1階を素通りして、ゆっくりと2階に進んでいくと楠木が戦っていた。幸い、楠木のお陰でアーツに誰も気づいていない様子だった。アーツは、先程見ていたデルタシリーズの方に駆け寄り、デルタフォースと銃弾を持ち一度、1階へ戻った。何故か、異能力の発動方法を思い出した。その手順で行い銃弾と異能力を銃に装填することが出来た。それから、再び2階の階段の壁に隠れながらタイミングを見計らっている。一方その頃、重装備になかなか強い異能力を持っている男4人衆に決定打となる攻撃が入らずに苦戦していた。楠木の異能力、七星プレアデスは7つの根源を用いるが、精神力が尽きて気を失ってしまう欠点がある。その為、この異能力は、一日に30分となっている。楠木は、この異能力を使いはじめてから20分、経過していた。男が死角から攻撃してきたが何とか、身をひるがえして避けた。しかし、このままでは精神力が10分持たないことは明白だった。最後の賭けとして、赤色の玉つまり炎の精霊を用いる異能力を使おうとしていたが、炎と空気の集まりを普段は、精神力によりコントロールしているが尽きかけの精神力では、上手くコントロールすることが難しい。しかし、無理矢理コントロールしようとしている。もう、楠木は周りの攻撃を避けるような力は残ってない。楠木の四方から銃弾の雨が楠木を襲うその時、誰も気づかなかったアーツが異能力を発動させた。「装填術式、装填爆炎バレットフレアを発動します」と人知れずに冷酷な言葉を言ったあと、銃口から銃弾と一緒に爆炎が飛び出てきた。今頃になって、男たちはアーツの存在に気付いた。アーツが、放った銃弾は楠木の手の方へ一直線に向かっていき、楠木の尽きかけの精神力の補助代わりになった。アーツのお陰で、何とか異能力を発動させた。「···プレアデス、人を導く勇敢なる炎、その名は炎剣フレイムソード訳は、炎精霊サラマンダー覚悟しろよ、炎剣FFS!」と楠木は叫ぶ。すると両手の平から刃と刃先の形状の炎が出てきた。男たちは、一度距離を置く。炎の刀身が、決して長い訳ではない。楠木は、動かなかった。それなのに、炎の剣はしっかりと1人の男の肩を貫いた。男は、バランスを崩しその場に伏し気を失わせた。男たちは、混乱状態になっている中、楠木が他の男目掛けて炎の剣を薙いた。信じられないことに、炎の剣の残像がそのまま男の方に目掛けて飛んできた。男たちは、避けろだの、弾けだの言っていたが、目的の男の肩を切り裂きその場で気を失った。決して、敵が強い訳では無く重装備をしていたことで苦戦していた。しかし、今やもうその重装備もこの炎の剣の前では、紙や木に等しく全て、燃やし尽くしてしまう。さらに、人が生きたまま燃やされるのと同等の痛みが襲いすぐに気を失ってしまうのだった。残り3人だけなのだが、即興の対炎の術式と対斬撃の組み合わせなどを色々と発動させた。男たちは、異能力を発動して楠木目掛けて攻撃してくる。微電気ミクロエレクトロ物体移動トランステレポート空気砲エアロシューターを発動させて楠木に攻撃仕掛けてくるのだが、全て炎の剣で薙ぎ払う。氷獣の爪を空気中で、十字に切り裂くと楠木の周りに鋭い氷塊が姿を表した。手の平を男達に向ける。その後、横に一閃した瞬間に鋭い氷塊が、男たちに向けて飛んできた。急所にも、男たち以外にも当てないように最後の精神力でコントロールした。狙い通りに、命中して3人とも気を失い地面に伏した。同じ頃、楠木もまた地面に伏していた。アーツは、現場の様子を見て何も変わっていないことに大変安堵したのだった。この後、すぐに自衛部が駆けつけてことの素性を話した。目が覚めるなり、楠木は自衛部の面々に長々とお説教に預かることになる。その後、楠木の学校の教師の面々がやって来て、‪また長々とお説教されたらしい。

一応、楠木は大事を取って一週間入院することになった。そんな感じで1日目と2日目は、お説教の嵐だった。3日目は、武器屋の店長さんがお礼も兼ねてお見舞いに来てくれた。店長は、頼んでいた物を渡して帰って行った。4日目になると誰も来ずに終わった。一方、アーツはというと一応の精密検査を受けたらしい。いよいよ退院の日、自衛部がそのまま病院逆戻りをさせたくなかったのか、それとも別の大きなモノがあるのか分からないが家まで送ってくれた。家に着き、そのまま夕方までゆっくりと過ごすことが出来た。この後、連日学校の宿題をやる羽目になることは、まだ楠木には考えられなかった。夕方になり、夕飯を作り一緒に食べた後、アーツの部屋へ行った。アーツは、どこで買ってきたかも分からない全身まるで兎のような感じの服を着ていた。アーツに店長さんからもらった、デルタワーストを渡した。デルタワーストは、雷と風力を使いマッハ3までスピードを高めた、本来の機関銃の最大のデメリットをメリットに変えた物になっている。しかし、それ故に火力が出ないのは機関銃と言えないような気もする。アーツは、目を輝かせていた。「楠木さん····」「はい!」と楠木は、応答する。「私、楠木さんのことを···流星と呼んでもいいですか?」「···改めて言われると本当に恥ずかしいけどじゃあさ、俺もアーツのことを···」「うん、アツで良いよ」とアーツは、強く求めた。ゆっくりとアーツの部屋から出た楠木は「今回は···俺だったか」と疲れながらも言った。

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