第6話 領都の大商会

詰所を出たら少し先にアルベルトさんの馬車が止まっていた。


「おまたせしました。待って頂いてありがとうございます。」


「その様子だと問題なかったみたいだね」


「はい、でも早めに作り直した方が良いって言われました。」


「ははは、とりあえず店まで行くから乗りなさい、再発行とかは後でも問題ないだろうから」


 馬車に乗ってアルベルトさんの店に向かった。馬車からの景色はヨーロッパを彷彿させるような街並みだ。人もたくさん歩いてる。


「ふふふ、アスカさん口があきっぱなしだよ」


「こんな街並み見たの初めてで…」


 二階建ての石造り商店や武器屋などが大通り沿いに並んでいる。看板の文字も全部読める。たくさんの人がいて喧騒が聞こえてくる。


『【共通言語】スキルで読み書きが可能です。』


頭の中に声が響いた。なんだかんだ教えてくれるので【ナビ】さんと呼ぼう。


『固有スキル【ナビ】を解放しました。』


固有スキルになった!あのわからなかった固有スキルはこれだったのか


『別の名前を希望します。』


うわ、なんか別の名前を要求してきた!うーん、【ナビ子】さんで


『…………(ネーミングセンス……)』


気に食わないらしい……【イリス】さんでどうかな?


『固有スキル【ナビ】を【イリス】に変更しました。』


 良いらしい。そんなやり取りをしていると馬車が大きな3階建ての商店前に止まった。ここがアルベルトさんの店かな?他の店に比べて大きいなぁ


「着いたよ、さあ降りて」


 私達を下ろすとこっちに執事みたいな人がやってきた。渋くてカッコいい!セバスチャンかな?


「おかえりなさいませ、若旦那様」


「ただいま、馬車を裏につけて荷物を頼む」


「かしこまりました。中で若奥様がお待ちです。」


「わかった。ありがとう。」


 おお、商会主って感じだ。てことはこの大きな店はアルベルトさんの店なのか[モーリス商会]という看板がかかっている。


「おまたせ、ここは父の店だよ、もう引退間際だけどね」


「まだ引退せんわい!」


「あ、父さん居たのかい?」


「いつも商会長と呼べと言っとるだろうが!全くいつまでたっても……まあ良い、それよりそこの二人を紹介してくれ、新しい従業員なんだろ?」


「わかった、わかった、ちゃんと紹介するからとりあえず中に入ろう」


二人のやり取り圧倒されて、モニカさんと顔を見合わせた。


「さっ、中に入って詳しい話は中でしようか」


 ここでお別れするのも言い出しにくいのでとりあえずアルベルトさんについて店の中に入った。


店の中は色々な物が置いてある。見回していると簡単に説明してくれた。


「ここは冒険者用のフロアだよ、二階が一般用になってるんだ。とりあえず3階の部屋に案内するから」


 アルベルトさんについていくと3階の部屋に通された。通された部屋は応接室のようだ、座り心地の良さそうなソファーセットが置いてり、壁に掛けられてる絵画も高級そうな雰囲気が漂っている。


モニカさんと二人して恐縮していると


「二人共座って、これからどうするか決めよう」


モニカさんと二人並んでソファーに腰掛けた。


「さて、モニカさんはここで働くで良いんだよね?」


「はい!店員もできますし、仕入れも大丈夫です。」


「わかった。細かい契約は後にしよう。それでアスカさんはどうするんだい?仕事を探してるんでしょ?うちで働くかい?」


「えーと、今日知り合ったばかりなのに良いんですか?」


「そうだね、でも言葉遣いとか行動を見てると問題無いかなって思ったからね」


「そうですか……せっかくのお誘いは有り難いのですが自分でなんとかしてみたいです。」


「うんうん、それでも良いと思うよ、今日はここに泊まって行きなさい。今からだと宿も取るのが大変だからね」


「わかりました。ありがとうございます。」


アルベルトさんが良い人すぎる。感動で涙が出そうだ。


コンコンコン

「商会長と若奥様をお連れしました。」


「入ってくれ」


 ドアが開けられると先程の執事さんと商会長、それに美人な女性が入ってきた。それぞれソファーに座り、執事さんはアルベルトさんの後ろに立った。


「さっきも会ったけど、商会長で私の父であるモーリス、それから私の妻のサーシャ、執事のサントス」

「こちらの赤い髪の娘がモニカさんで、もともと行商をやってたんだけど、隣街で情報交換してたら働きたいって事になったので雇う事にした。」

「こちらがアスカさん、村から出てきて迷ってたところを領都に行くってことなので乗せてきたんだ」


商会長は頷きながらこちらを見ている。


「モーリスだよろしく、二人共これからよろしく」


「あ、こちらのアスカさんは雇わない事になったんだ。」


「ん?そうなのか?」


「アスカさんは自分で仕事を見つけるんだってさ、今晩だけは何かの縁だし泊まってもらうけど」


サーシャさんがニッコリしながら


「そうなのね、こんばんはサーシャよ」


「「よろしくお願いします」」


「詳しい話は夕食のときにでもしよう」


急にお邪魔した私は皆さんに迷惑になってるのではと心配してしまう。


「サントス、部屋の準備を頼む」


「承知しました。既に手配してあります。」


執事さんすごい、出来る執事さんはすごいなぁ


『出来るナビゲーターもすごいです。』


 出来るナビゲータと思えるほどではないが…いろいろ教えてくれるのは便利なんだけど……

 執事さんに連れられて客室に案内された。モニカさんとは別々の部屋のようだ。なんか至れり尽くせりで少し怖い……


「少ししたら夕食になります。本日はモニカ様、アスカ様の分まで用意しておりますので、後ほど部屋に伺います。」

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