第3話 自分の身体と周りの確認

 さて、持ち物とステータスの確認は済んだから自分の身体を確認してみよう。目が覚めた時に自分の身体が少し小さく感じたけど、どうなんだろう?鏡もないし顔もどうなってるかわからないわ。


 少なくとも胸は……地球の頃より小さくなってる??でも目線も低くなってるから中高生くらいの年齢になってる??手を見てもツルツルだし、ほっぺもぷにぷにしてる♪

 張りが少し失われつつあったから嬉しいかも。ステータスに年齢が出ないのは痛いかもしれない、もし聞かれたら何歳って答えよう??


 髪は黒髪だね、眼の色はわからない……肌の色は地球の頃より薄いかな?これもわからないわね、装備が一応ナイフだけど武器は持ってるでも野営の道具がないから、歩ける範囲の村から街に移動してるって感じかしら?


 この世界の常識が分からないから辛いところね、誰かに教えてもらわないと……でもいきなり常識を聞くのは変な娘だと思われるかな?


『イルヴァーシルの村人レベルの一般常識をインストールします。』


ビクッ!「またなに?なにが始まるの??ぎゃ…………」

機械的な音声が流れたと思ったら、酷い頭痛がして視界が暗転した。


『イルヴァーシルの一般常識のインストールが完了しました。』


「いたたたた…………、頭が割れそう」


 頭を直接搔き混ぜられた気分だわ、「インストール」とか聞こえたけど何かやられたのかしら?誰にやられたんだろう?神様?なんだかよくわからないわね。


 でも今の「インストール」でこの場所のことが少しわかった。ここは「モルストリアル王国」の「ネルソン辺境伯」が治める領地で「大森林」と呼ばれる未開の土地の近くなのね。近くに領都「ザーレンハイン」がある。


 ここから見えるあの森が「大森林」なのかな?そんなに危険には見えないけど、魔物や魔獣もいるみたいだし、今は近寄るべきではないわね。なら草原の方に行けば領都かほかの村に行けるのかしら?草原を観察しながら考えてみた。


 私は何のためにここに送られたのだろう?「イルヴァーシル」ってなに?「地球」みたいな惑星の名前かしら?わからないことが多すぎるわね。とりあえずまだ明るいし夜になると魔獣も怖いから移動して、街か村に行かないと……


 ガサッ、ガサッ


!!!!何かいる!

 ナイフを抜いて音のした方向を見た。ウサギ?みたいな白い動物がいる。魔獣かしら?それとも普通の動物?見た目は耳の短いウサギだけど口から小さな牙が生えてる!普通のウサギじゃない!牙ウサギはこちらに向かって体当たりをしてきた。私はさっとかわして牙ウサギの首にナイフを突き立てた。


 血が噴き出し、牙ウサギはすぐに動かなくなった。あれ?なんで私はこんなにすんなり戦闘が出来たんだろう。もしかしてこれがこの国での常識の範囲内なの?それはそれで怖いわね、このくらい出来ないとすぐに暮らしていけなくなる世界なのかな?それとも私の身体が特殊なのかしら?牙ウサギを持ち上げて鞄にしまう。「牙ウサギ×1」鞄のリストが増えた。


「便利ね」


 とりあえず道に出るまで歩くことにしよう。身体が動くのは確認できた、小さな魔獣?動物?程度であれば普通に倒せることもわかった。あとあのウサギが「牙ウサギ」って名前だってことも。鞄に入れたら名前が出るから便利よね、それとも私が「牙ウサギ」って認識してるからこの名前なのかしら?


 まだまだ検証が必要ね、スキルもだし鞄もだし、この世界のことだって調べなきゃね、とりあえず街にでて情報収集をしないといけないわね。こっちでいいのかしら……不安になりながらもなだらかな丘の上から下っていく。幸い草原の草は長くて膝くらいまでなので、特に不自由なく歩くことができる。


 しばらく歩いていると道にぶつかった。踏み固められており、少し乗り物のだと思われる轍が見える。どちらに行けば街があるのかわからないので、しばらく馬車などが通らないか待ってみることにした。


 鞄から水筒と携帯食料を取り出し、道のそばにある丸太に腰掛けて携帯食料をかじり始める。


「まっずっ!」


 携帯食料はパサパサで味がない、小麦粉を固めて焼いただけの腹に貯めることが目的だけの食糧であることがわかる。口の中の水分が全て持っていかれた。慌てて水筒の水を口に含む。携帯食料はやめて干し肉をかじってみた。


「しょっぱっ!」


 今度はしょっぱ過ぎる。これも水分が欲しくなる。また慌てて水筒の水を口に含む。だめだどうやって食べれば良いんだろう?少し考えていたら頭の中に食べ方が浮かんできた、なるほど携帯食料と干し肉を少量口に含んで水を飲むのね、それで咀嚼すると。一気に食べたからダメだったのか。携帯食料と干し肉を少量づつ口に含んで食べた。


 少しお腹が膨れたので安心した。太陽は真上にあるからお昼くらいなのかな?この領地は四季があるみたいね、おぼろげな記憶が頭に浮かぶ。村人の認識なんてそんなものか、暖かくなれば種子をまき、育てて寒くなる前に収穫する。そんな一年の繰り返しがこのあたりの村人のサイクルみたいだ。早く街か村に行かないと。


「誰か通らないかな??」

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