第7話 メタンフェタミン、その2
それから、一週間がすぎて、大麻の売り上げが落ちた。
といっても、心配したほどではなく、10が9になったぐらいで、先生の心配は杞憂だったということだ。
たしかに、市場にメタンフェタミンが流れてたけど、ほとんどの人は大麻から乗り換えたりはしなかったのだ。つまり、最初に始めたやつが強いというわけだ。動画配信でも、初期のころからやってる人が人気で、後から始めた人は違うジャンルで勝負しないと勝ち目はない。
僕と先生は、一気にこの流れに乗って、ライバル商品をやっつけようと計画をねった。大麻のビッグセール。「なんと半額!!」50パーオフだ。
半額の大麻は飛ぶように売れた。やったぜ。
メタンフェタミンは市場から消え去り、僕たちはドラッグから生徒を守ったのだ。
だけど、それは危険な行動でもあった。
校内に大麻があふれ、敵を追いつめすぎたのだ。
化学の授業中、富樫先生はあきらかに不機嫌だった
彼は、チョークを黒板に叩きつけるようにして字をかいて、何本も折っては壁に投げつけていた。彼の剛腕により、チョークは反対側の壁に当たって粉々になる。まるで、銃弾だった。
僕たち生徒は、スキンヘッドで顔面凶器の富樫先生に怯え、頭を低くしてチョークの雨をかわしていた。
予習をしてこなかった生徒は、教壇の前に立たされた。僕だ。
「昼飯はなにをくったんだ?」
僕は震えながら「弁当です」と答える。
「じゃあママに謝らないとな」
といって、容赦なく鉄拳制裁。
富樫のボディブローをくらった僕は、昼ごはんの弁当を床にぶちまけた。綾瀬さんが、背中をさすってくれた。僕の弁当はコンビニ弁当で、ママが作った弁当じゃないのに、と思った。
最近は、暴力教師に厳しい風潮だというのに、富樫はクビになることをまったく恐れていないようだった。彼はすでに壊れたサイボーグと化していた。なにかをやりかねない、というオーラをまとっていた。
僕がいつもどおり、生物実験室にむかうと、中で富樫と朝倉先生がなにやら物騒な雰囲気ではなしこんでいた。
僕は富樫にみつからないように、トビラの影に隠れて中をうかがった。
富樫は先生の胸倉をつかんでいた。それから、「後悔することになるぞ」といって、部屋から出て行こうとしたので、隠れてやり過ごした。あとで先生にきくと、「マリファナとメタンフェタミンの縄張りについて」の会談だったそうだ。富樫の要求は「三年は俺の縄張りだから、大麻を売るな」「おまえは二年にだけ売っていろ」というものだった。先生はこう、言い返したそうだ。
「この学校の生徒は、皆、わたしと、わたしのマリファナを愛している。わたしの生徒が”毒リンゴ”を買わされるのを、わたしが黙ってみていると思ったのか、このウスノロめ。その薄汚いドラッグを、二度と校内で売るんじゃない。うせろ」ヒュー。
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