第14話 ニューヨークにて

「怖がらなくてもいいよ。何もしない」

 そう言ってグレンが近づく。いつものイケメンスマイルを浮かべるが怯えている‥‥‥。


(気持ち悪い! この人も同じだ。どうして同じ髪の色、同じ瞳の色をしているの‥‥‥気持ち悪い!)


 ああ……そういう事ね。わかるよ、僕も同じ様に思ったさ。これはグレンに慣れてもらはないと、僕はグレンに


「グレンに対して、と言うかその容姿に違和感を感じているみたいだ。僕も初めに思ったよ。何故皆同じなのかって」


 グレンが落ち込んでいるのが分かる。自信満々の笑顔を否定され、怯えさせてしまっているのだから、


かと言って、話して理解出来るとは思えないし……そうだ!女の子が好きそうな話にすれば! よし!


「あのね、オリビア。この世界の人は昔に悪い魔法使いに同じ姿にされてしまったんだよ」


「そうなんだ。だから一緒なのね。あなたはいい魔法使いなの?」


「そうなるかな」


 おっと、関心を持ってくれた! よし! このままこれでいこう。


「他の魔法も見せて!」


 困ったそれを言われるか。そうだ、あつしがやっていた。出来るかも。


「僕も、オリビアもミア達と同じ髪、瞳の色に出来るよ。そうすれば他の人から怖い思いをされる事はない」


 こういうのはイメージが大切なんだって言っていた。あつしを思い出す……オリビアの頭にそっと手と当てた。


イメージ、イメージ……ふわっと視界が明るくなる。僕とオリビアの髪が金髪になる。出来た!


「ほんとだ!」


「これは魔法だから、時間になると消えてしまうからね」


「これは、違う世界から来た僕達みたいな人にしかかけられない魔法だから、この世界の人にはかけらないんだ。内緒だよ」


「うん! わかった」


 少しの罪悪感はあるけどこの笑顔が手に入ったのだ。良しとしよう。


 夜は一緒に食事をした。時折笑顔を見せてくれるが、グレンには慣れないようだ。食事が終わるとミアの後ろに隠れてしまう。彼女が寝るまでグレンは一言も話せないままだった。どうしたらいいのか見ているこちらも辛くなってしまう。


 朝はいつもの様にご飯を食べる。食べ終わると、椅子に座り外を眺める。ここに来て変わらない毎日だ。


 『家に帰るには、条件、お約束があってね。その一つがこの世界の人を好きになってくれないと魔法はかけられない』と言う事にした。あの花が咲かないと帰せないから、時間稼ぎにはなるかも知れない。そんな事を考えていたら椅子がガタっと動く音がした。


 オリビア? 何かを見つけたのかな? その目線の先を見る。ターナーさんが倒れている。


「急に倒れたの!」


 僕は髪の色を変え、外に出た。


「ターナーさん! どうしたんですか? 大丈夫ですか?」


「君は、ようじか? 髪の色が……」


「そんな事より、何処か痛む所はないですか?」


「ちょっと腰を打ったようだ。それにしてもよくわかったね、私が倒れた事に」


「彼女が教えてくれたんです。カーテンに隠れてしまってここからでは、今は姿は見えませんが」


 カーテンの隙間から覗いているのがわかる。


「来訪者かね?」


「はい。十歳の少女です。こちらに来て怖い思いをしたようで、この髪の色とか抵抗があるようです」


「そうか、無理もない。妻も初めは驚いていたからね。それにしても、ようじも髪の色を変える事が出来るのだね」


「長くはもちませんが肩を貸しますね。立てますか?」


 そのまま家へと入り、ベッドに寝かせた。


「ドクターを呼びますか?」


「大丈夫だよ。少し横になれば落ち着く」


 腰を摩りながら言う。最近散歩している姿を見ていないから心配はしていた。


「足を痛めてしまってね。散歩も控えていたのだが、毎日の習慣で散歩をしないと逆に落ち着かなくてつい出てしまった」


「何かお困りですか?」


「実は太陽光システムの調子が悪くて確認したいのだけれど……」


「それなら、僕達が何とかしますよ」


 僕は家に帰り、グレンに話した。そこで、ミアが


「お困りですよね。では、これを持っていってあげて。それとこれも」


 薬箱と、ミアが焼いたクッキーを持たせてくれた。グレンは直ぐにターナーさんの家にかけつけて行った。


「オリビア。一緒に来てくれないか? そのクッキーの方を持って来て」


 オリビアの髪の色を変え、ターナーさんの所に行く。


「おや、可愛いレディーと一緒なのね。どう? お茶でもしていかない?」


 僕の顔を見る。


「お邪魔させてもらおうか? ミアの作ったクッキーがある」


 婦人が迎えてくれた。システムの調整も終わりグレンも一緒に家の中に入ってくる。オリビアは僕の後ろに隠れる。


「まあ、嫌われいるのかしら?」


 グレンがしょげているのが分かってくすっと笑う。


「大丈夫よ。グレンはいい人よ。私のような違う世界から来た人にも、とても良くしてくれるのよ」


「おばさまも? こことは違う所から来たの!?」

 食べていたクッキーを落としそうになりながら聞く。


「おばさまは寂しくはないの?」

 首をかしげて聞く。


「私には夫がいてくれるから寂しくないわ。生まれた場所なんて関係ない、今が幸せなら過去はどうでもいいの私にとって今が一番だから、これからもよ」


 ターナーさんと見つめ合う。話をしていたら、髪の色が戻ってしまった慌てるオリビア。


「そう、それがあなたの本当の色なのね。キレイだわ」


 オリビアが少し照れている! 心が……見える……家族と楽しそうに笑っている。オリビアの家族か。


「また、この家に来てくれるかい? オリビア」


 ターナー夫妻に言われて嬉しそうにしている。


「はい!」


 髪の色を変えグレン達と帰る。その頃のはオリビアのグレンに対しての感情は‥‥‥変わっていた。


 次の日からオリビアは毎日ターナー夫妻の家に通うようになった。この世界線の人間にも心を開く様になった。グレンにも慣れたようで本人はほっとしている。


 可哀そうね。早く魔法が解けるようにお願いしておくわね。と頭を撫でられている。元気になった。


 

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