第33話

「具合、どう?」



 三日目の朝、ぎこちない動きでチョコが現れた。

昨日はバニラがやってきていた。

チョコは花瓶の花を変えたり、なんとなくよそよそしく動いた。



「チョコ……」



 やっと声が出せることに自分でも気がつく。

チョコは驚き駆け寄った。ジャンボはその様子さえも申し訳なくて、目を伏せた。



「ごめん……全部……俺が……悪かった……」



 切れ切れの掠れた声で告げた。

チョコは複雑な顔になり、ジャンボから視線をそらす。



「俺もちゃんと話を聞くべきだったと後悔してる。でも……俺はやっぱり裏切られてたと思ったよ」



 チョコは少し冷たい顔をした。

ジャンボはつい問いかける。



「どうして……助けた……」

「ジャンボが親だったから」



 チョコは少し泣きそうな声で言った。



「でも、分からないよ。どうして話してくれなかったのか、なにをしたのか、なんであんなものとっておいたのか……。

俺はジャンボのこと何も知らないんだ……!」



 チョコは背を向けた。おそらく泣いていた。

ジャンボは精一杯声を出す。



「全部……話す……あと少し……待ってくれ……」



 ジャンボは喋り疲れて、そのまま眠りに落ちた。

またいつもの悪夢を見る。

死体の山に真っ赤な手。いくら逃げても紅い腕章の集団が背後をずっと追い続けていた。



「ジャンボ」



 頭を抱えて泣いていたジャンボに、幼い手が二つ、さしだされた。

ジャンボはその手を握った。

とても温かくて大切で、守らなければいけないと感じた。

なんだ拾ったんじゃなくて、拾われたのか、なんて夢の中の自分はのんきに笑っていた。

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