第4話
入学まであれよと言う間に過ぎて行った。
「お父様、お母様行ってきます」
「とうとう入学式か。気をつけて行っておいで」
「ファル兄様行きましょう?」
ファルセットお兄様と馬車に乗り込む。何故かしら。今生の別れのようにお父様もお母様も泣いているわ。
「あぁ。俺は心配だよ。こんなに可愛いリアが人目に晒されるなんて」
「お兄様、大袈裟ですわ。学院も2回目なのですから大丈夫です」
「・・・そうだな。帰りはキチンと図書室で待っているんだぞ?」
お兄様にホールまで送ってもらい、お兄様は教室へ帰って行く。私はSクラスの席を探して着席した。
入学試験によりクラスが違うのだけれど、2回目の入学試験ともなると楽にSクラスに合格出来た。あ、一応前回もSクラスだったのよ?少しズルしている気分になるわ。式が始まり、学院長の挨拶。前回の入学式は緊張して余裕は無かったけれど、2回目ともなると、余裕ね。
もしかして学院長は毎年同じ事を言っているのかしら。昔と同じ内容よ。ふふっと笑いが込み上げてきたが、そこは淑女。しっかり真面目な顔をして我慢。
次は生徒会長の挨拶。今年の生徒会長は第三王子のライアン様。お兄様は同じクラスで側近としていつも側にいるみたい。ライアン様の婚約者はまだ決まっていなかったような・・・?
確か、婚約者候補は何人かいたわよね。熾烈な候補者の戦いを繰り広げていると噂には聞いている。私は光属性持ちだけれど、王子を賭けた女の戦いに入っていける気がしない。ひっそり、こっそりと過ごしたい。
ライアン様の挨拶が終わると、1年生の宣誓がある。生徒代表は、マリーナ・ラストール嬢。ラストール、ラストール。頭の中をぐるぐると駆け巡るわ。アイツそっくりじゃない。マリーナ嬢は首席なのね。頭はアイツに似たのか…?アイラは万年最下位を争っていたもの。
これからの3年間ほぼ同じメンバーなのだと思うと胃が痛いわ。ライアン様とは学年が違うから避ける事は出来るけれど、同じクラスとなると無理ね。まぁ、マリーナさんが悪い訳では無いし、悪い子とも決まっていない。
大丈夫よね、きっと。
今日は式後にクラス内で魔法鑑定が行われる。これにより魔法を教える先生が変わってくるのだとか。因みに前回の学生の時は教会から光属性の方が直々に教えて下さったので光魔法の殆どは習得済みなの。出来れば水魔法の授業を優先して取りたいなぁ。
「リア・ノーツ。君の番だよ」
先生に言われ、前に出る。
教壇には鑑定球が置かれている。鑑定球に魔力を流すと色と光の強さで鑑定される。私は鑑定球に手を乗せ魔力を流すと水色と白色が浮かび上がり、眩しい位に光を放ってしまったわ。周りが響めく。
「リアさん!凄いわ!」
誰かが大声で叫ぶ。
先生は魔力の量に注目している様子だったけれど、何も言わなかったわ。何だか怖い。後で呼ばれてしまうのかしら。
鑑定も終わり、明日からの授業に備えて下校となったのは良いのだけれど、先生にしっかりと呼び止められたわ。
「リアさん。こちらへ」
担任のマーク先生は緊張した面持ちで私を呼んだ。
「リアさん、貴女は光属性の持ち主でしたね。今日は一人で帰るのですか?」
「いえ、3年に兄がおります。兄の授業が終わるのを待って一緒に帰るため図書室で待ち合わせをしていますわ」
「では、向かいましょう」
マーク先生は話しながら図書室へ向かっているみたい。
「いいですか、リアさん。これからは一人の行動は謹んで下さい。ここは学院であるし、現在は王族も通っているために厳重な警備が敷かれているので安全ではありますが、移動中にもしもの事が起こり得ないとも限りません。明日からは従者を付けて貰いなさい」
「先生、そんなに注意しなくてはいけないのですか?」
前回ではそんな事は無かったわ。
「昔はそうでも無かったのですが、14年程前でしょうか。光属性の少女が亡くなって以降、光属性の子供は生まれていないのです。国中から婚姻目当てや治療目当てで攫われる可能性もあり、限られた人数の光属性の者の安全を確保するためなのですよ」
あ、私の事ですね。私が自殺した事で何らかの抑制させる物が発生したのかしら。
「ファルお兄様!」
図書室には一足先にファルセットお兄様が居ました。どうやら授業を切り上げて迎えに来てくれたよう。マーク先生はファルセットお兄様に話をして保護者の方に渡して下さいと手紙を渡していましたわ。きっと今日の鑑定結果。
「お兄様、帰りましょう?」
「あぁ、そうだね。明日からはメイジーを供に付けるからね」
お兄様はもう既に先生の話しぶりやお兄様の元まで送ってくれた事から察知したのね。家に帰ると待ちかねていたようにお父様とお母様に呼ばれた。
「お帰りなさい。さぁ、執務室よ」
お母様の声で着替える事なく執務室へ入る。
「リア、学校はどうだったかしら?」
「まず、父上これを」
お兄様がマーク先生から渡された手紙にお父様が目を通している。
「お母様、Sクラスになりましたわ。鑑定球にも触れたのですが、水と光の属性が出ましたわ。魔力量はお兄様と同じ位かそれより少し多い位だと思われます」
「そうなの?リア凄いわね。我が家も鼻が高いわ」
「マーク先生からは移動の際に一人では歩かないように注意を受けました。学院内とはいえ一人では行動しないようにと。今は昔に比べて光属性は格段に減ったのですね」
「そうだね。年頃の娘となるとリアだけだからね」
ファルお兄様はそっと頭を撫でてくれます。
「明日からはメイジーか護衛のロイドを連れて行きなさい」
お父様は腕を組み考えながらそう言うとニカッと笑った。
「はい。お父様。あと、私。水魔法の練習がしたいです。過去に光魔法は習得を終えているのですが、水魔法はまだなので。きっと、学園では水魔法を練習せずに光魔法を練習する事になると思うのです。後、護身術も習いたいです」
「そうだね。狙われる可能性があるのなら習っておいた方がいいな。王家に嫁ぐなら守ってくれるだろうが、それも考えてもいいんじゃないか?」
「嫌ですわ。お兄様も目になさっているでしょう?ライアン殿下を囲う女の闘い。それに王家は側妃も娶るのですよ?私には無理ですわ。誰かと夫を共有したいと思いませんわ。お父様はお母様を誰かと共有したいと思いますか?私が結婚するのは昔からお兄様と決まっているのですぅ」
私は態とらしくお兄様の腕にしがみつくとお兄様は満更では無さそうにニコニコと笑っている。
「リア、そこはお父様って言ってくれないのかい?」
「お父様にはお母様がいますもの。それに王家に嫁がせよう、嫁がせようとしているではありませんか。私は爵位は無くとも我が家のような家族愛に溢れた家庭を築きたいのです。前世からの願いですわ」
前世の事は言ってはいけないとは思うけれど、やはり王族と婚姻する位ならギリギリまで抵抗したい。お兄様の腕にこれでもかという位抱きついてみる。お兄様は上機嫌だが、お父様もお母様も複雑そうだわ。
「まぁ、確かにお茶会や学院での王子妃候補者達の争いは俺から見てもエゲツないと思うよ。あんな中にリアを投げ入れるのは反対ですね」
お兄様の口添えもあってお父様達はそれ以上何もは言わなかった。心配しているのだとは思う。王家の庇護に入れば安心して暮らせるのは分かってはいるの。
でも、今世こそは最愛と呼べる人1人に愛し愛されたいと思ってしまう。
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