第12話
「おい、アリス」
「なんでしょうかガルドさん」
「そろそろ
「…………」
「アリス私もおすすめするけど?」
「わかりました本人に確認してみます」
あまり薦めたくはないけどタチバナ様には報告し意思確認をしなければなりません。
「本日はお疲れ様でした」
「アリスさんお疲れ様でした」
「クエスト達成の処理は無事に終わりました」
「そうですか、ありがとうございます」
「いえ、それと1つお伺いしたいことがあります」
「なんでしょうか」
「例えばですが、タチバナ様は同じように異世界でクエストをこなしている方や異世界でクエストをこなしている方が作るグループがある場合、加入したいと思いますか?」
「え?急に言われてもなぁ……そうだよな、そもそもよく考えたら俺以外もやってる人がいるんだよなぁ……でもなぁ~……んー…」
「強制というわけでもございませんしただの質問ですので思ったことをおっしゃっていただいて構いません」
「そうなんですね、じゃあ言いますが、正直1人でいいなら1人のままのほうがいいですね」
「そうなんですか?」
「グループだと効率は良くなると思いますし、きっとやれるクエストだって増えるとは思うんですが、時間を合わせたりするのも大変だと思いますし俺は自分のペースでやれる範囲でやらせてもらえてるから続けていけてると思うんですよね」
「なるほど、ご自身のコミュニケーション能力のなさをうまく誤魔化しになられましたね」
「うぐっ!」
「冗談です、わかりました、ではタチバナ様は今のスタンスのままが良いということでございますね?」
「はい、すみませんがそうですね」
「いえ、先ほども申した通りただの質問ですのでお気になさらずに、それでは私はこれで」
「はい、お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
なぜか俺の答えを満足げに聞きアリスさんが去っていった。とりあえず明日は金曜日だし明日の夜から土日でクエストをがっつりこなせるといいな。
「あの、やめてください」
「ちょっと朝からしつこいって!」
「いいじゃん!たまにはハメはずして学校なんてサボって俺らと遊ぼうぜ!」
「ハメははずすけどハメはするみたいな!?」
「ぎゃっはっはは!お前朝から冴えてんね!」
朝のクエスト、牛のように大きかったヤギを放牧地に連れていく手伝いを終え通勤の為、駅につくと改札口の少し手前で朝からガラの悪そうな若い男3人に制服姿の女の子二人が強引に誘われているが周りはみんなチラッとみて無視をしているのに気づいた。……男との間に入ってかばってくれている女の子の後ろで顔を蒼くして今にも泣きそうな女の子と目があってしまった…………。
「はぁ~……しかたない…痛いことされなきゃいいなぁ………なぁ君たち」
「あ゛ぁ?んだよおっさん!今俺たち盛り上がってんだから邪魔すんじゃねぇよ」
「盛り上がってるのも盛ってるのも君たちだけだろ?その子達嫌がってるじゃないか」
「てめぇ!うめぇこと言ったとか調子こいてっとぶっ飛ばすぞ!」
「ワイシャツが痛む放せ」
「い゛っ!?いでぇぇぇ!!!!!」
「てめぇ!なにしてんだよ!離しやがっ……がぁっ!!!」
胸倉をつかまれたので手首を思いっきり握ってやるとあっさり離してくれ痛そうにしながら崩れ去る男の子をみてパンチをしてこうとしたもう一人の男の子にアイアンクロ―をすると両手で俺の手首をもって引き離そうとしてきたのでさらに力を入れるとだらんとしたのでそのまま頭を持ち上げる形で支えてあげた。
「どうする?やめるか?」
「ぎぃぃぃい!やめるっ!やめますっ!すんませんでしたっ!」
「今度この駅でこんなことをしてるのをみたら……わかるな?」
「ひぃ!わ、わかりました!!」
「なら、こいつをつれてさっさと行け」
「「は、はいっ!」」
どうやら気絶してしまっていた男の子に二人は肩を貸してやりそそくさと駅の出口にむかっていくのを確認した。一応女の子の安否を確認しなきゃな。
「あの、大丈夫ですか?」
「え?は、はい!助かりました!ありがとうございました!」
「…………」
「ちょっと!翔子!お礼くらいいいなって!」
「え!?あっ!すみません!助けていただきありがとうございました!」
「いえ、二人とも怪我なんかしてない?」
「大丈夫です!」
「はい」
「そう、よかった。じゃあ俺はこれで、学校に遅れなきゃいいけど気を付けてね」
「大丈夫です!ありがとうございました!」
「あ、あの!助けたお礼をしたいのでお名前を教えていただけますか?」
「え?ああ、そんなお礼なんかいらないから気にしないで!」
「せめてお名前だけでも!」
「え?いやほんと気にしないで」
「私もお礼したいので教えてください!」
「え?えぇ…あっ!じゃ、じゃあこれ、俺の名刺です、けどお礼なんてほんといらないからね!じゃあ急いでるからこれで!」
俺は名刺を二人に差し出し急いで改札を通り電車に飛び乗った。結局、朝からあわただしくなってしまった…。
「あっ、大輔おはよ」
「田中さんおはようございます」
「のりこでいいって、まぁいいけど」
「緊張して呼べませんって」
「なにそれ、ふふふふ」
「大輔さんおはようございます」
「鈴木さんおはようございます」
二人を助けた日から名前で呼ばれるようになったことには慣れたけど名前で呼べって言われるといまだに緊張するし恥ずかしくて呼べてない小心者の俺は笑って誤魔化しながらデスクについた。
「立花くん!」
「はい」
「ちょっと一緒に来てくれ」
「え?は、はい!」
あと1時間ほどで定時だという時間ちょうど今日の業務の区切りがいいところまであと少しというときに係長と部長が課長とともにやってきて俺は3人の後ろについていった……なんかしたんだろうか俺………異世界での副業がばれたのか?
「失礼いたします!」
課長がノックしたドアには社長室と書かれていて中からの声にドアをあけ課長たち3人が中に入っていったので後に続いた。
「システム課の立花大輔をお連れいたしました」
「そうか、ありがとう、3人は下がってくれていい」
「え?は、はい!失礼します!」
課長が俺を紹介し驚きながらも頭をさげ部長と係長とともに退室していった……置き去りにしないで!!!
「忙しいところすまんね」
「い、いえ!」
「失礼いたします」
「お?きたか、はいってくれ」
何をやらかしたかわからないが社長とサシで俺がビビっていると誰かが社長室にはいってきた。
「立花君はすでにきている」
「そうか、お待たせして申し訳ない!」
「立花さん!」
「え!?あれ?君たちは今朝の」
「はい!そうです!」
「朝はありがとうございました!」
「翔子、恵美ちゃんもおちつきなさい、立花君さわがしくてすまないね」
「い、いえ」
「まずは紹介しよう彼はうちの取引先の会社の社長で長門雄一郎というんだ」
「長門さんですか…って!え?ま、まさかナガトグループですか!?」
「ああ、そうだ。今朝は私の娘を助けてくれたそうでありがとう」
「娘さん!?」
「はい!私は長門恵美っていいます!」
「た、立花大輔です…」
「名刺に書いてあるからしってますよ!」
「あ、ああ、そうですよね」
「ふふふ」
「それとこっちにいるのは私の娘で翔子だ」
「えぇ!?しゃ、社長のお嬢様だったんですかっ!?」
「はい、徳永翔子です。今朝は助けてくださりありがとうございました」
「いえいえ!お礼を言われるようなことなんてしてないですから!」
「そんなことありません!不良3人をあっという間に制圧して追い払ってくださったじゃないですか!」
「そうそう!殴ったりしないで大人な感じで追い払ってくれましたよ!」
「制圧!?」
「あっはっは!わが社に君のように謙虚で勇敢な社員がいて私も鼻が高い!」
「君はシステム課だそうだね?」
「は、はい」
「今よりも優遇するがどうかね?一つわが社にこないか?」
「え!?ええぇぇ!」
「こらこら、社長の目の前で堂々とヘッドハンティングをするんじゃない」
「あっはっは!優秀な人材をみるとついな!すまんすまん!」
まさか今朝助けた二人が社長と取引先の社長令嬢だったなんて……。
「学校帰りにどうしても直接お礼をいいたいと聞かなくてね」
「そ、そんな、本当にお礼を言われるようなことではないので」
「いや、聞けば周りにいた人たちは全員見て見ぬふりをする中、君は勇敢に二人を助けてくれたと聞いたぞ」
「そう!駅の前からずっとしつこく言い寄られてたんですよ!」
「まわりに助けを求めても誰も助けてくれなくて……本当に助かったんです」
「そんな前から付きまとわれてたんですね…怪我とかなくてよかったですね」
「「はい!」」
あの男の子たちならそんなにしつこくしなくても女の子にモテそうなのに…。
「仕返しが怖いからしばらくは車で送ってもらうことになりました」
「ああ、そうですよね」
「立花さんも気を付けてくださいね」
「ありがとうございます」
その後も色々話をきいて結局、今度食事の約束をさせられて開放された。
「ふぅ~…仕事やるか…………」
結局定時をすぎてから解放されたのでキリのいいところまで急いでやろうと取り掛かった。
「大輔さんお疲れ様です」
「え?鈴木さんまだいたんですか?」
「はい、今帰るところでした」
「そうですか、お疲れ様でした」
「はい、お疲れ様でした。あの、何の要件だったんですか?」
「ああ…………」
必死にPCを見ながら今日会ったことを鈴木さんにおしえた。
「そうだったんですね、でもほんとに立花さんも気を付けてくださいね」
「はい、ありがとうございます」
「じゃ、じゃあ私はこれで」
「はい、お疲れ様でした。また」
「はい!」
笑顔で手を振ると鈴木さんも笑顔で手を振ってくれた、これはもう同僚ではなく友人と言っても差し支えないんじゃないか!?
「ふぅ~おわった!」
【ブー、ブー、ブー】
「お!きたきた!よぉーし!週末はがんばるぞぉ!」
仕事がおわるとクエストをしらせるメールが届き、俺はタイムカードを押し異世界へむかった。
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