第8話 

「おめでとうございます」

「おぉ!!E+!!あと1つあがればDランクじゃないですか!」

「そうですね、こちらお預かりしていたカードになります」

「ありがとうございます」

「ご確認を」

「はい!」


〇 登 録 者  タチバナ ダイスケ

〇 L    V  21

〇 ラ ン ク    E+

〇 最高達成LV   S

〇 達成回数    20

〇 未達成数    0

〇 保有金額    29,760ガル 


「………へ?」

「どうかなさいましたか?」

「こ、この金額まちがってませんか?」

「いえ?クエスト報酬と駆除したものの買取そしてクエスト達成回数20回のボーナスが振り込まれていると思います」

「エグイ金額が!も、もうすぐ300万じゃないですか!」

「円かんさんですとそうですね」

「これ…Dランクになるころにはどんだけ貯まってんだろ……」

「それは立花様の頑張り次第かと」

「そ、そうですよね……ふぉ~…数字で見るとなんかテンションがじわっとあがってくる……はっ!」

「どうなさいました?」

「アリスさん約束覚えてますよね?」

「不本意ながら覚えております」

「ふぐっ……あ、あのそれってどっちの店なんですか?」

「どちらでもかまいませんが」

「……………あ、あの」

「まずはDランクになってからだと思いますが、立花様がその手の店に疎いのは察しておりますのでご安心ください」

「がっは!……このペースでお金がたまれば結構いいお店で食事できるとおもうんで……Dランクになってアリスさんが都合がいい日にできれば」

「かしこまりました、こちらで予約をいたします……に」

「あの…ずっと忙しいからっていってなし崩しにするのだけは勘弁してくださいね?」

「ちっ!少々かしこくおなりになったようですね」

「ええ…」

「はぁ~……、約束は必ず守りますので、まずはDランクになってください」

「はい!」

「それでは本日のクエストがんばってください」

「はい!」


地下水道の清掃クエストを終えた翌日、ランクがあがって貯金も増えた!もうすぐ就職してから貯まっている貯蓄額をこえる!ブラックすぎて使う暇がない金じゃないのに!これは食事だけじゃなくてプレゼントまでアリスさんに渡せるんじゃないかと思いながら本日うけたクエストへとむかった。


「こ、ここか……」


地図が示す通り進んだ結果、小高い丘に建っているよく言えば趣のある……素直に言うとでそうな不気味なお屋敷があった。


「タチバナ様おまちしておりました」

「え?ナタリーさん?なぜこちらに?」

「今回の依頼は私からなので」

「そうなんですか!お待たせしてしまって申し訳ありませんでした!依頼内容をおしえてください!」

「はい、こちらの屋敷にいるの駆除と清掃をお願いしたいのですが」

「わかりました!それでいつまでに」

「1週間以内におねがいできますか?」

「はい、わかりました!」


門と屋敷の鍵を手渡し依頼内容をつたえるとナタリーさんは帰っていった。


「さて……やりますか!まずは害獣からかなぁ」


錆びて硬くなっている門を力任せにギィーっと開けクモの巣をおちていた枝でとりながら屋敷へと向かいドアを開けた。


「こ、これはこれは……と、とりあえずいったん戻って準備をするか……」


俺は急いで部屋に戻り紙とペン、そして小麦粉をもって帰ってきた。


「とりあえず間取りはメモしたし……今日は廊下の掃除をやるか」


 廊下のクモの巣や汚れなどを掃除していき綺麗になったところで小麦粉を床に厚めにまいた。


「これで足跡があればどんなのがどこから出てきてるのかわかるだろ」


その日はそれで作業を終え帰宅しシャワーを浴びて眠った。


「おぉ…やっぱネズミっぽいのがいるなぁ……ってなんだこの跡」


小動物の足跡の他、なにかを引きづったあとがありそれは途中で途切れていた。


「おばさん久しぶり」

「あら、この間はありがとうね!助かったわ!」

「またあの花の球根がほしいんだよね、あるかな?」

「ああ!あるよ!ちょっとまってておくれ!」


ネズミの駆除をしようとまた花屋にいくと元気のいいおばさんが毒百合が入った木箱を3つもってきてくれた。


「こんなに?いくら?」

「金なんていらないよ!仕入れ先に文句言っても必ず毎日何本か混じってきてこまってんのさ!」

「そうなんだ、んじゃお言葉に甘えてもらっていくよ」

「ああ、助かるよ!」


おばさんと別れて屋敷に戻り毒団子を作って足跡があった場所において回った。


「よし!」


3階建ての一番奥の部屋から掃除を始めた。


「今日はこんなもんかな、帰って虫の駆除の方法を調べてみるかぁ」


日付が変わる前に自宅に帰ってスマホで色々調べながら寝落ちした…。


「よぉーし!!!今日と土日で一気にがんばるぞぉ!」


金曜の仕事が終わりまっすぐ屋敷に来た…アリスさんいつもベストなタイミングでメールをくれるんだけど…怖くて聞けない。


「さてさてぇ…えぇ……」


玄関を開けた景色はネズミや蛇、そして1m以上あるムカデみたいな虫たち…そして30㎝くらいの蜂も死んで落ちていた。


「これは…残りの球根をバルサン方式のほうがいいのか?」


丘の上で隣近所もないので鍋をたくさん持ってきて球根を家のあちこちでいぶしてみた。


「けっこう煙が漏れちゃってるなぁ…お?あれは蝙蝠か?」


煙突からも煙が漏れ始めると耐えきれなかったのか蝙蝠みたいなのが何匹も空に飛びあがり少しするとパタパタあばれながら落ちていった…猛毒おそるべし。

毒が消えるまでもったいないので屋敷のまわりの草などを刈ることにした。


「えぇ…嘘だろぉ…」


玄関から時計回りに屋敷を中心に草を刈っていくと裏庭らしき場所にでてそこには3~4mはあるであろう蜂の巣と地面に落ちてる無数の蜂と蜂の子の死骸が広がっていた。


「巣に団子をもちかえったのか?…うわぁ~こわっ!」


完全に死んでいるか1匹づつ枝でつつきながら確かめ死骸を袋に詰めていくと今までの蜂の倍いじょう大きい蜂の死骸もあった…これ女王蜂だよねぇ…こんなのに刺されたらドクとか関係なく死ねるわ…。


 結局、大きなハチの巣が2つありどちらも全滅していたみたいだったから巣にロープをまき滑車を使って枝ごと切り落としリアカーに載せて玄関前に運んだ。


屋敷に恐る恐る入り目の前の広がる光景をみて…一度部屋にもどることにした。


「どうなさいましたか?」

「死骸を入れたいのでもっと袋をもらえますか?」

「かしこまりました」

「ありがとうございます、それと蜂の巣ってどうしたらいいですかね?」

「そのままほかの死骸と一緒にしておいていただければこちらで処分いたします」

「あ、そうなんですね、んじゃ宜しくお願いします!」

「かしこまりました」


疲れた時にみるアリスさんは最高だぜ…やる気がチャージされるようだ…はっ!そうだこれをアリスチャージと名付けよう!!


「おやめください」

「ひぃ!?ご、ごめんなさい!!」


心を読まれてるの!?なに怖い!


「はぁはぁはぁ…と、とりあえず…死骸の始末をしよう…」


廊下と階段、そして厨房、それからは3階にあがり窓をあけ換気しながら各部屋の死骸も掃除し残すのは1階だけとなり順調に死骸清掃を始めた。


「よぉーし!ラストはこの寝室ぅぅぅぅ!?えぇぇぇ!?」


寝室を覗き込むと小さな人型の死骸が3人倒れていてパニックをおこし急いでアリスさんにしらせることにした。


「アリスさん!アリスさん!」

「そうなさいました?いつにもまして暑苦しい」

「うぐっ!っていやいや!そんなことより俺やってしまいました!」

「なにをですか?」

「さ、殺人です!」

「は?」

「ですから!掃除中の屋敷に人がいたのをしらずにくじょしてしまったんですよ!」


俺の話を聞き珍しく驚いた顔をしたアリスさんとともに屋敷の寝室にむかった。


「ほ、ほら!3人も!!」

「………………」

「じ、自首しなきゃ!」

「おまちください…はぁ~…あれは罪には問われません」

「え!?異世界は殺人OKなのっ!?」

「いいえ?人ならば罪に問われてしまいます」

「じゃ、じゃぁ!」

「あれは人型の魔物でゴブリンといいます」

「ゴブリン!?魔物!?」

「ですので殺人ではなく討伐になるので罪にはなりません」

「え?そ、そうなんですか……よかったぁ~…」

「とりあえず他の死骸と一緒にまとめておいてください、これから始末の依頼をしてきます」

「あ、お願いします」


一礼し去っていったアリスさんに従って3匹?のゴブリンっていうのを庭に運んだ。


「よし!掃き掃除は終わった!明日晴れたらベッドマットを干して拭き掃除だな」


暗くなったので俺はそのまま自宅に戻りシャワーを浴びて寝ようとしたらテーブルの上に簡単な食事がありアリスさんに感謝しながら食べて幸せ気分で眠りについた。


「思った通りそれ以上の成果ね!」

「キラービーとゴブリンの討伐なんて本来はCランク以上の仕事よ?」

「怒らないでよ、やばいとおもったら逃げると思ったのよ」

「………………」

「ごめんってば!ちゃんと報酬の上乗せと達成評価も+にするから」

「そういう問題ではありません、今後二度とこのような依頼はしないで」

「わかったわよ」

「けど彼、これだけのキラービー、しかも女王まで2匹倒してゴブリンもでしょ?LVどれくらいあがったのかしらね」

「わかりません」

「それで?ポイントでどんなスキルをとってるの?」

「ポイントについてはまだ説明しておりません」

「え!?」

「ポイントでスキルを取った場合、あなたみたいな人が無理な依頼をしてくるとおもったので」

「それはルール違反でしょ!」

「Dランクになったらお教えするつもりでした」

「ああ、食事をしながら二人で選びたかったのね!」

「ちがいます」

「素直じゃないのねぇ…最初はあんなにいやいやだったくせに今は食事まで作ってあげてるくせに」

「!?な、なぜそれを!」

「彼が嬉しそうに食べてるのをみたことがあるから?」

「くっ!」

「まぁマスターもかってるし、期待してるんだから頑張ってよね」

「頑張るのはタチバナ様です」

「ご褒美にクリアするたび寝てあげればあっという間にBランクにはなるんじゃない?」

「ナタリーほどほどに…」

「え?あ、い、いや…ごめん……ほんとごめん……気を付けるわ」


冷たい目を光らせ黒いオーラをたぎらせたアリスをみてナタリーは顔を真っ青にしガタガタ震えながら謝罪しなんとか場をおさめた。




 


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